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いやぁ、不思議な本だ(笑)。経済学の解説本かと思ったら、いや、それは嘘ではないものの、何やら生き方・精神論を説いてはるゎ(笑)。オススメの文学書なるコラムまでところどころある。
哲学論については、誰向け?っていうくらいゆる~ぃレベルの話ですが。
読み物としてあっという間に読めつつ、意外と多くの用語が卑近な例でもって解説されてて分かりやすい。経済学の「意味」の解説に主眼が置かれており、数式の細かいところなどはすっ飛ばされているところがありがたい。
と言ってたら、途中からめっちゃ教科書になりました(笑)。数式もバンバン。むしろ、あ、やっぱり経済学は数式とは切り離せないのね、と再認識できる良い機会に。ただ、数式が多く出てこようとも、相変わらず、数式の解説自体が目的なのではなく、意味を理解することに重点を置いて日本語解説に努めてくださっている姿はありがたいです。これから経済学を極めようなどという津守がある訳ではない身にとっては。
解説されている用語
動学的意思決定(dynamic decision)現在の意思決定が将来にも影響を及ぼす状態 矢印左右 静学的意思決定
功利主義の幸福の基礎条件にあるのは「互恵性(reciprocity)」で、人は自らの利益を増進するために社会を形成すると考える。自由(liberty)と放埒(dissipation)は違う。
「進化論的に安定的な集合(Evolutionary Stable Set:ESS)」例えば、嘘つきに罰があること(incentive mechanism)で、経済利益の観点から段々正直者ばかりになっていき、安定すること。
「合成の誤謬(fallacy of composition)」一個人の行動が社会に無視できるほどの影響しか与えないことによって発生する誤り・社会の病歴(e.g.嘘つきの蔓延)。(p.29)
近代経済学は、選択(choice)と交換(exchange)で成り立っていると考えられている。
解説の経済学者
ベッカー(アメリカ)
人間行動へのミクロ経済理論の応用。徹底した人間の合理性を前提とする。労働市場における差別さえも本質的な問題ではなく、経済的事由による合理的行動であると主張。この考え方で家族の形成をも説明しようとした。きわめて新古典派的。(p. 39)
相対価格矢印左右絶対価格
この相対価格の中の特殊例が実質賃金(real wage). 絶対的な賃金額を、モノの値段で割ったということ。
実質賃金が上がったときに消費を増やしたりすることを、代替効果(substitution effect)と呼ぶ。
万が一に備えた貯蓄を「予備的貯蓄(precautionary saving)」という。
シトフスキー。ハンガリーの経済学者。売り手と買い手の非対称性(上がった価格を元に戻しても販売量の減少は回復しない)を主張(単純な経済学の分析では無視されがち。)。
経済学における効率性は「Pareto Efficiency」と呼ばれ、ある個人が有利になるためには、少なくとも他の一人が不利になってしまう状態として定義される。パレート効率でない状態は、逆に、ある個人が有利になるために、他の誰も不利にならない状態。p. 71
これだけ余力があれば、誰にとっても以前より望ましい状態(パレート優位な状態Pareto Superior Allocation)にする方向に向かい得る。が、このパレート効率的資源配分をするには、政策や市場競争状態の変化により均衡が移動した際、不利になる経済主体が現れないように所得再分配政策を実行すべき(補償原理)。p. 72
つまり、効率的か否かの判断は、すべての個人の経済厚生が同じか改善する場合にしかできないのであって、(価格)競争は、再分配政策があって初めて機能する。 p. 74
価格による寡占企業競争の均衡を「ベルトラン均衡」と呼ぶ。うち、「ワルラス均衡(完全競争均衡)」は、価格体系が一企業・一個人には動かすことのできないという仮定(プライス・テイカー仮定)を前提とし、不特定多数の相手との激しい競争状態を想定する。ここで出てくるのがinvisible hand(厚生経済学の第一基本定理the first fundamental theorem of welfare economics)で、ワルラス均衡はすべてパレート効率であるということ。
ワルラス法則とは2(n)つの市場があるときに一(n-1)つの市場が均衡していれば、必ず他の一つも均衡しているという経済理論の一般的性質である。p. 80 つまり、すべての財の超過需要額(需要が供給を上回る金額)を足し合わせたものは必ず0になる。p. 91
なお、神の見えざる手が働くのは、経済が寡占とは対極の完全競争状態にあるときに限られる(寡占oligopoly状態ではダメ)。
てか、この辺から急に教科書っぽくなってきた(笑)。
効用に対する価値観は、人によって違うけれども、一般に、他の財やサービスの消費量を一定としたとき、ある特定の財・サービスの消費だけが上昇すると、どんな個人の効用も上昇すると考えられている。 p.78
「一般均衡分析(general equilibrium analysis)」経済全体すなわち複数の市場の相互作用を漏らさず分析する手法。矢印左右「部分均衡分析(partial...)」
ゲームにおいてプレーヤーが互いに同じ戦略をとりあうことで利得が高まる性質を「戦略的補完性strategic complement」と呼ぶ。ゲームの結果を指定する決まりを均衡と呼び、ゲームの構造によりさまざまな均衡が考えられる。最もポピュラーなのはナッシュ均衡。=ある「戦略の組(ベクトル)」が与えられたとき、どのプレーヤーも一人だけでそこから逸脱する動機がないとき、その戦略の組をナッシュ均衡と呼ぶ。=結託がない限り変化なしp. 103
経済主体が互いに正の外部性を及ぼすとき、strategic complement戦略的補完性があるという。矢印左右cooperation failure
tragedy of commonsコモンズの悲劇 共有財産には市場システムは無力で、無制限な私的利用が発生しうるために荒廃すること p. 109
経済学的に見れば、営利企業に象徴される「組織」とは、外部性の存在による非効率を予防するために内部化を図ったのもの。になるらしい!面白い。 ただし、組織体の規模が大きくなるにつれてさまざまな観点から効率が低下する。=X非効率。p.111
外部性の分析には多くの場合、ゲーム理論が用いられる。
景気 のように製品の売れ行きを大きく左右する力でありながら、個別企業には外部的で抗すすべのない力を、一般的には「総需要外部性(aggregate-demand externality)」と呼ぶ。 p. 119 (景気や総需要は内生変数endogenous variableでもある)
Say's Law(セイの法則)
最も重要な仮定は、稼得された所得はすべて支出されるということ。そうであれば、実質有効需要を予想→企業が最適生産量を決定、それを集計→実質有効需要の実現値が決まる。つまり、企業家がその気になって供給を増やせば需要は必ず付いてくる、というもの。 p.128 ただしこれは、賃金の合計+利潤の合計=総需要としたとき(所得をすべて消費する場合)の話で、例えば貯蓄などの概念が入ると左辺の方が大きくなる(需要不足による不況の可能性がある)ので、売れ残りが発生して成り立たなくなる。p. 130()内p. 248
また、貨幣が非中立的で(例えば、貨幣数量が物価水準に比べて小さ過ぎるとき、経済は需要不足ゆえの不況に落ち込む)動学的な貨幣経済では、この法則は成り立たない。→有効需要の理論が必要となる。p. 249
ヒックス
イギリスの経済学者。ケインズ経済学を解釈する有力なモデルであるIS-LMモデル構築。
フリードマン
アメリカ人。狭く見れば、貨幣供給量を経済成長率に固定すること(kパーセントルール)を強く主張する、マネタリスト。景気の側面に応じて貨幣供給量を変えるべきと考えるケインジアンと鋭く対立したが、80年代の先進諸国でのスタグフレーションもあり、彼の学説はマクロ経済学の主流となった。 p. 163
厚生経済学の第二基本定理: 所得分配の公平性 という価値基準を伴う政策は、ワルラス均衡を達成できるほど市場競争が激しく、かつ政府が民間の事情をよほど熟知している場合にのみ有効。そうでなければ、政府がパレート効率性を追求する政策だけを採った場合と、それに所得分配の公平性を目指す政策を同時に付加した場合では、個人や企業の行動が異なってしまい、所期の目的を達成できないことが多い。(=ルーカスの批判 Lucas' Critique、動学的不整合性 Dynamic Inconsistency) p.176
繰り返される労使交渉のような、将来利益が双方のプレーヤーに規律を与え協調的行動が実現される性質を「フォーク定理folk teorem」と呼ぶ。 p. 182
アメリカのサミュエルソン。貿易取引される財の価格が両国で近づくにつれて生産要素(財・サービスを生産するのに必要な労働、資本、土地などの要素)の相対価格もやがて一致するという国際経済学の理論を立てる。また、財政政策と国民所得の決定理論も立てた。p. 223
「グレシャムの法則」悪貨が良貨を駆逐する。→貨幣にはできるだけそれだけではまったく無価値な素材が選ばれるべき。p. 226 ←ジンメルが挙げた法則 ①貨幣は交換されてはじめて実体的価値をもつ、②貨幣は実用に供しないものほど望ましい、③貨幣は携帯が容易で、同品質のものが大量に作れることが必要 とした。 p. 225
貨幣の非中立性 貨幣数量が産出量や雇用量などの経済の実体面に影響を与える現象。矢印左右中立性 p. 241
名目留保賃金 働いてもよいと思う最低賃金 p.242 失業者がいる場合(通常の社会)、賃金は名目留保賃金とみなせる。
賃金が変わっても(下がっても)雇用量は変わらない(なぜなら企業利潤が変わらない)というロジックが、結局よく分からなかったなー。 利潤が増えても、人を増やせば生産量も増えるが需要が変化しない以上は売れる量が増えないので余計な損になるから雇用を嫌がる、というのはまぁ分かるけど、それだとすると、最後の証明の意味がなくなっちゃうもんなぁ。主観的だし。
→あぁ、つまり、最後の式を雇用量について解き直せば、雇用=「(利潤/1-θ)-売上」/名目留保賃金 となるからか! いやいや、いく��定数とはいえ、つまり1-θ(θは労使の労働者側交渉力) が変われば雇用量変わるよなぁ
金融政策≠財政政策(道路や港湾建設などの公共投資など)