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「総中流社会」だった日本は終わり、すでに「格差社会」になっている。
果たしてこれで良いのだろうか?
読後感を簡単に言えば無力感が一番近い。
半年近く教育のことを考えてきたが、
恥ずかしながら「貧困」ということにきちんと向き合っていなかったと思う。
国の定める制度の問題に結局は行き着くのだが、
こんな大きな問題にも個人で出来ることはないのかと悩んでしまった。
視野が狭くなっていた自分にとって転機となる本だと思う。
2009.10.09メモ
「貧困」=「許容できないもの」(そのことを社会として許すべきではないという基準)
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2008/12
多くのデータを用いて、現代日本では子どもの貧困という問題があることを示している。児童手当やひとり親支援関連の制度などを細かく検証している。ただ、データの量を詰め込みすぎているきらいはある。
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日本の社会がこどもの必須だと考えるものが、
他国に比べ低いというデータは面白かったが、
議論自体はお粗末な感じ。
結局低所得者の子どもは他国に比べてデータ的に
貧困な状況に置かれているから、
子どもに対する所得支援(手当、税額控除etc)の拡充と
サービスの拡充をしろという結論になっている。
大きな財政赤字を抱えてる日本でこの議論をするには、
じゃあその費用をどこから持ってくるのかという視点がいるだろうし、
もっと現在の教育制度の検証もいるはず。
あと海外比較をするなら単純に数値を引っ張ってくるだけでなく、
もっと社会的条件の違いも踏まえて、
どうしてそういう数字が出てくるのかという分析も欲しいところ。
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本書の良さは、数多くのデータに基づいて考察が行われている事である。
よって、非常に客観的であるが故に、納得させられ、危機感を実感できる。
内容は、こどもの貧困に焦点を当てたもので、大人の格差はしょうがないと
としても、子供の格差はなくすべき!というのが著者の主張だ。子供の格差を
是正しないと将来私達自身にとっても良い結果を生まない。負の連鎖は
なるべく早くに断ち切るべきだ。との事。
本書で驚いた内容が、日本は世界的にみてもこどもの貧困率が高い事である。
貧困と言っても、著者が言うように絶対的貧困と相対的貧困(周りの環境によって
左右される)のように定義付けの違いがあったり、貧困とは何か?に答えるのは
難しいが、それは本書を読めばかなり考えられての上記の結果である事が分かるので、
やはり日本のこどもの貧困率は高いのであろう。
そして、自分も考えさせられるのが、子供に対してあまり豊かにさせようという
気持が日本人は少ないとの結果も本書では報告させられている。例えば、こどもの
おもちゃは必需品か?という問いに対して、はっきりとイギリスと日本では差が出ている。
私も言われてみれば、必要ないかなと考えてしまう。
また、このような現状に対しての政府の対応が先進国の中でも遅れている事、
行われている施策が、十分に効力をはっきしていない事などひどいありさまである。
確かに、著者が言うようにこどもの貧困は、負の連鎖を断ち切るためにも必要である。
そのために、国民全体で負担をしなければならない事は理解できる。では、その財源を
どうやって確保するのか。なかなか難しい。しかし、富める者からより多く負担させる事は
明らかである。しかし、富める者が政治を行っているからなかなか後始末が悪い。
私は思うが、税の名称をはっきりさせ、消費税というようなあやふやな名前ではなく
そのはっきりした名称で、給料から天引きしたり、物を買ったときに引いたりすれば
みんなも納得するのではないか?と思う。単に消費税・所得税と記載されるよりも
こども保護税1%・環境税1%・・・といったように。そうすれば、消費税が高いとは
言えず、こども保護税が高いとはなかなか心が綺麗な日本人は言えないだろう。
それでも、この問題を改善させるには、やはり首相レベルでのプロパガンダが
必要なのかもしれないな。
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あらためて、貧困が子どもに与える影響が認識できた。
なぜ日本では苦労話が大手を振ってるんだろう。
「ムカシは貧乏学生が一生懸命勉強して、会社の社長にまでなったものだ」というような成功譚をどれだけ聞かされ、また、現在もなお、子どもの貧困にたいしては、この程度の談話で片付けているようだ。
著者は答えているだろうか。
なぜ、日本にこの成功譚が根強く残っているのか・・・までは答えていない。
国家の政策として子どもの貧困を撲滅することは必要だ。その意味で、正面から取り上げられたことはいいことだ。
しかし、政策の足を大きく引っ張っているものが何か・・を問われなければならない。
日本には宗教が根付かない・・・と遠藤周作氏が言われていた。
この西洋的なものが根付かないもどかしさ・・・・、そういうものと同じ気がしてならない。
日本人は「子ども貧困」については、真剣に考えない種族のようだ。
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最近堅い文調の本読んでなかったから読みごたえが中公新書並みにあった。やはりというか母子世帯に生まれる子どもの強いられる環境は困難を極めていると思った。給食はもちろんのこと、身だしなみや修学旅行と必要な経費はたくさんかかる。母子世帯がそれを上手くやっていくにはきついだろうと思った。ただ、当事者である子ども達が何を思っているかは不明瞭な部分が多いと思う。アンケートも親目線のものがほとんどであった。社会保障負担が低所得層ほど強いられる現状は改善されなければならないとも思った。余談だが相対的剥奪の質が他国とは違うetc大学の授業に通ずる部分も多かった。
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子供の貧困を断ち切ることで大人の貧困も断ち切れる。その為には少子化という近景ではなく、子供対策という遠景からのアプローチが必要としている。埋蔵金含めて日本の限られた予算をいかに分配していくかを考えて欲しいと思った一冊。内容としては貧困世帯で育つことによる貧困の連鎖を取り上げた上で、日本の子供の貧困状態に関して、あらゆるデータから、定量的、定性的に示す。?日本の相対的貧困率がOECD諸国の中でアメリカについで第2位?日本の子供の貧困率が徐々に上昇傾向。2000年には14%。OECD諸国平均と比較し、高い?母子世帯の貧困率が突出して高い。特に母親が働いている母子世帯の貧困率が高い。強烈だったのは、日本は唯一、社会保障制度や税制度によって、再分配後所得の貧困率のほうが、再分配前所得の貧困率より高くなる(=日本の子供の貧困率は悪化しているケース)があるということ。おまけに、2002年の母子政策改革により5年間の期限付き、かつ逓減していく形での自助努力が促されているが、支援は弱められているということ。少子化対策を、子供対策という視点で捉え直し、日本の世代間不公平を是正する必要があると思った。
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予測していた内容だったので☆4つ。
本書の主張は以下の二点と書かれていたので、主張が簡潔で理解しやすかった。第一に、子どもの基本的な成長にかかわる医療、基本的衣食住、少なくとも義務教育、そしてほぼ普遍的になった高校教育(生活)のアクセスを、すべての子どもが享受するべき。第二に、たとえ「完全な平等」を達成することが不可能だとしても、それを「いたしかたがない」と許容するのではなく、少しでも、そうでなくなる方向に向う努力するのが社会の姿勢として必要。
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●未読
「週刊ダイヤモンド」2009.03.21号 「あなたの知らない貧困」p.40〜41「貧困本」×16冊 1-3
人生のスタート時点での「不利」の、理不尽な現実。そもそも「貧困世帯に育つ」とはどういうことなのか。豊富なデータをもとに「不利」の実態に迫り、貧困の世代間連鎖を断ち切るための「子ども対策」を提唱する。
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(2009/4/7読了)P188の『日本の一般市民は、子どもが最低限これだけは享受すべきであるという生活の期待値が低いのである。このような考え方が大多数を占める国で、子どもに対する社会支出が先進諸国の中で最低レベルであるのは、当然といえば当然のことである』に、問題の根源が凝縮されているように思う。
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「実際には、子ども期の生活の充足と、学力、健康、成長、生活の質、そして将来のさまざまな達成(学歴、就労、所得、結婚など)には、密接な関係がある。その関係について、日本人の多くは、鈍感なのではないだろうか。」
ほんっっっとうに、その通りなんだと、この本を読んで改めて思わされあったのであります。
貧困って、子どものもそうだけれど、日本人の貧困って普通の生活を送っている人たちにとっては本当に他人事なんだなぁとつくづく感じた。
でも、それって国というか政治ががそうだから国民もそうなってしまうんだろうと、本を読んでいてわかった。
あまりにもお粗末すぎる、日本の政策。筆者の言わんとすることは最もだ。
特にこの本では経済面の施策について言っているのだけれど、もちろんそれだけじゃダメだ。
フィジカルな部分とメンタルな部分、両方のケアが急速に必要。
と言っても、憂えるこの現状。
まずは、一人でも多くの人が日本でも子どもがこんなにも貧困状態にいるということを知らなくてはならないと切に思う。
【4/22読了・初読・大学図書館】
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統計学的な本でした。
日本の政策が、いかに「スタート時点での格差」を黙認しているか。
ただ社会正義を振りかざすのではなく、このような統計的手法で示すことは、とても重要であると思います。
ただ、統計というのは恣意的な客観だと思うので、★は3つ。
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(2009年7月6日読了)
・親の学力や職業によって子どもの学力に格差が生じている。P5
・アメリカは全ての国民を対象とする公的健康保険制度が存在しない独特な国だが、低所得層の子どもに関しては州政府が無料の医療保険を提供している。アメリカもカナダも少なくとも子どもの医療のアクセスは平等になるように政府が努力している。P10
・虐待を発生させてしまうような家庭の経済問題に目をつむってきたことにより、虐待を防止する本当に必要な手段が講じられてこなかった。P13
・家庭の貧困は、子どもが非行に関わってしまう確立をも高める。P14
・15歳時点での暮し向きは、その後の人生の人間関係の希薄さにも関係。「15歳時の貧困」→「限られた教育機会」→「恵まれない職」→「低所得」→「低い生活水準」P23
・子ども期の貧困は、子どもが成長した後にも継続して影響を及ぼしている。P24
・親の収入は多かれ少なかれ、子どもの成長に影響する。P33
・子どもの基本的な成長にかかわる医療、基本的衣食住、クスなくとも義務教育、そしてほぼ普遍的になった高校教育(生活)のアクセスを、全てのの子どもが受けるべき。P37
・今日においては、ある程度経済状況にゆとりがある世帯のみが2人目、3人目、4人目の子どもを持つ決断をすることができるかもしれない。P66
・どこの国でも就業者が1人の世帯に比べ、2人世帯の貧困率は大幅に低いが、日本は2人就業世帯でも貧困率は10.6%と1人就業世帯に比べ、1.7%の減少しかない。P69
・母子世帯に育つ子どもの生活レベルが低いのは他の先進諸国と同様だが、日本は「母親の就労率が非常に高いにも関わらず、経済状況が厳しく、政府や子どもの父親からの援助も少ない」P109
・母子世帯の所得が低い第一の理由は、そもそも母子世帯の母親を含めた全労働女性の就労条件が悪化していること。P113
・離婚母子家庭においては子どもの父親からのり送り(養育費)は子どもの養育には非常に重要だが、養育費の取り決めをしているのは全体の1/3であり、取り決めをしても仕送りが続くかどうかはまた別の問題。実際に19%の母子世帯しか受け取っていない。P117
・育児に手間のかかる6歳未満の子どもを育てながら働いている母子世帯は平日の平均仕事時間は431分、育児時間は46分しかない。共働きの母親は、113分。P120
・母子世帯の経済状況は、母子世帯になった当初に比べると、所得については横ばい、または微増になるが、その後は特に教育費など子どもに関わる経費の増加によって苦しくなっている。P139
・所得保証や就労支援に関しては、「母子世帯対策」を廃止し、代わりにその子どもが属する世帯のタイプに関係なく行われる「子ども対策」を立ち上げる必要がある。主目的は子どもの貧困の撲滅と適切なケアの確保。P141
・「学歴がモノをいい、やり直しが困難な社会では『学校』『学歴』『親』『友人』を欠いた彼らが、自立して安定した生活を送れるような職につくことは難しいのが実情」P150
・参考「階層化日本と教育危機」、「希望格差社会」P151
・「意欲」を示す指標として「落第しない程度の成績を取っていれば良いと思う」という質問の回��が近年上昇傾向にあり、97年には社会階層が下位とされた生徒の半数以上が「落第しなければよい」と考えており、上位生徒の3割を大きく上回っている。P155
・「与えられた方が望ましいが・・・」という消極的な意見も含めると高等専門学校、大学・短大まで含め高等教育の無償化は大多数の人が支持している。P172
・文化の違いはあるものの他の先進諸国と比べると日本の一般市民の子どもの必需品への支持率は大幅の低い。
・ある一定の所得以下になると、剥奪の度合いが急激に増える。所得には「閾値」がありそれを超えて所得が落ちると生活が坂道を転がっていくように困窮に陥る。P202
・母子世帯の母親の多くが、子どもに「みじめな思いをさせたくない」として、自分自身が「がまん」する傾向にある。P208
・子どもの基本的な物品的充足が満たされていなかったり、健康と安全が脅かされている中で、高い教育の達成は困難であろうし、よい教育がない中で、子ども自身が満足した生活を送る事もまた困難。P214
・人口が減少しつつある日本の重点戦略は、労働人口の増加と出生率の増加。育児中の女性・男性や高齢者を労働市場に参加させ、そして将来の労働力としての子どもを増やす。P218
・現在の戦略からは、何とか子どもを高校・大学に行かせようと2つ、3つの非正規雇用を掛け持ちして頑張っている母子世帯の母親が、せめて平日5時以降は帰宅し子どもと一緒に夕食を食べながらゆっくり過ごせるように支援しようだとか、貧困世帯の子どもが大学の費用の心配をすることなく勉強にいそしめるようにしようという配慮は見受けられない。P218
・現役世代の中でも、子どもを育てていたり、貧困率を下回る生活をしている世帯に対してはせめて、負担が給付を上回ることがないように、税制、公的年金、公的医療保険、介護保険、生活保護をむくめた全ての社会保障制度で考慮すべき。P222
・子どもに対する現金給付をどのような対象の子どもに与えるべきか、どのような方法を用いるべきか、という問題は別として、まずその額について今一度検討する必要がある。P223
・政策の対象を「世帯」から「子ども」に移し、子どものある世帯に対する政策を一本化した「子ども対策」を打ち出し、全ての子どものウェル・ビーイングを向上するという理念を訴えたい。P226
・国民年金・国民健康保険の未納問題も保育料や就学費の滞納と同じく、個人の責任論が主流。保険料の取立ての強化や資産の差し押さえといった政策ばかりが注目を浴びているが、多くの研究では、世帯所得の低さや、失業問題にあることが未納の主要因である事を報告している。P232
・先進諸国の税制による優遇措置では、貧困世帯や多子世帯など、よりターゲットを絞った制度が導入されている。中でも子どもの貧困に対して有効なのが、「給付つきの税額控除」。これは払うべき税金の額そのものを減額する制度。P235
・子どもの数を増やすだけでなく、幸せな子どもの数を増やすことを目標にする政策が必要。特に全ての子どもがうけるべき最低限の生活と教育を社会が保証するべき。P243、P244
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著者は私の大学時代の恩師と同じアメリカのタフツ大学フレッチャー法律外交大学院で博士号を取得された後に国連に進んだ女性で、現在は国立社会保障・人口問題研究所の国際関係部第2室長をつとめられている方です。
引用されているデータの豊富さはこれまで読んできた新書の中でもずばぬけて多いと感じます。そのデータから読み取れる数値的な表層部分と、そのデータの奥にひそむ実際的深層の両方をうまくえぐり出すことにこの本は成功していると思います。昨今の格差をめぐる議論は聞き及んでいたもののそれが子どもという年少の世代にどのような影響を与えているかを知る機会のなかった私にとっては、現代日本の暗部にようやく光が当たったと感じさえしました。
一億総中流をばっさりと否定し、その名残で日本人が目をつむってきた「あるはずない」と考える多くの人に厳然たる貧困の存在を突きつけられます。しかし問題の所在を認めない限りは、生活に苦しみ人々を思った行動を起こすことなど出来る筈もありません。その意味ではこの本は人の前を醒まさせる強い薬とも言えるかもしれません。だからこそ世界水準からみた経済力を理由に立ち直れるとも思いがちなところに、「そんなまさか!」と思われる相対的貧困状態の「世代間連鎖」という衝撃的な言葉にも現実感が伴っています。
子どもの17人に1人は母子家庭で育つ、という自分が今まで知りえなかった事実にも目を大きくします。私には母子家庭に対して、10代結婚した後に離婚した若い母親と子供というイメージがありましたし、実際そのような方が仕事場にもいたことがありました。しかし、実際母子家庭の母親の平均年齢は40歳であり、それには晩産化が影響していることも知ることができました。そこに現在の労働市場の流動化や正規・非正規間の不平等な取り扱いや賃金格差の視点を持ち込めば状況の深刻さも理解しやすくなります。
日本では成り立っていない養育費の徴収については、多くの先進諸国で制度化されており、税金の支払と同様の感覚で養育費が支払われている事例も紹介されており、日本人自身に社会制度を支え合う意識の欠如を問うている一面も垣間見えます。給食費未払いの問題も一部の親をモンスターペアレントとして描き報じるメディアへの一方的な情報依存をただし、相対的貧困層がその支払いに苦慮する社会状況まで深堀りできる視点の必要性を説いています。
今月末にある総選挙でも子育てや生活支援は大きな柱です。しかし、著者は社会保障制度や税制度によってOECD諸国の中で日本だけが受給後に貧困率が上昇しているという反作用的調査結果を持ち出しています(P.96)。システム全体の再構築が要求されていることは確かです。少子高齢化を嘆いていても改善しないので冷静に事実を認めて、より弱者救済を社会成立の根幹とできるために知っておくべき情報がこの本には詰まっています。
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日本の人生におけるスタートラインの不公平さについて考えさせられました。
スタートラインは違っても自分自身の努力で補えば、追い越せばそれでいいなどと考えていましたが、しかし、もし“未来すら望めない家庭環境”だったら?
「格差」や「機会の不平等」をいたしかたないものと放っておくのではなく、せめて努力である程度その差を縮められるようにしなければならないと思います
親のモラルと子供は関係がなく、子供に直接向けた政策が必要なのでしょう。