投稿元:
レビューを見る
青草の土手にねころび
飛行機の
遠きひびきを大空から聞く
これは、後に触れる関川夏央・谷口ジロー『坊ちゃんの時代 第三部 【啄木日記】かの蒼空に 凛冽たり近代 なお生彩あり明治人』からの孫引きですが(出典は不明)、最初読んで、なーんだ啄木ってたいしたことないじゃん、みたいな感想が湧き上がってきそうですが、もう一度よーく読んでみると、ムムっ、何気なく平凡なようでいて、その視点の非凡さは流石というべきかもしれません。
『一握の砂』といえば、宮崎大四郎君と金田一京助君・両君に捧ぐ、と献辞を載せて、我が愛する歌、と題して・・・
東海の小島の磯の
白砂に
われ泣きぬれて蟹とたはむる
・・・の歌で始まる、あまりにも有名な啄木の第一歌集(1910年)ですが、この歌集ならすでに岩波文庫で出ていますが、本書の眼目は、何と言っても、プラス『時代閉塞の現状』が併載されているということです。
小林多喜二『蟹工船』路線を追求して、石川啄木まで及ぼそうという訳です。その企画や良しとしましょう。
26歳で夭折した石川啄木は、もっと読まれなければいけない人ですから。