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紙の本

遅すぎる物語の進行が評価を分ける

2008/12/15 18:13

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:DSK - この投稿者のレビュー一覧を見る

はるばる北海道までやって来た第2巻。全三章立てだが、第一章の最後でようやく大蝦夷学園の門を潜り、第二章の大半は学園長と学内、そして寮の紹介。この章の最後にサブタイトルの「姫」がようやく現れる。その姫と果たし合いをするのが第三章だが、この流れは前巻の雪乃と同様であり、それ以前にこの果たし合い自体が決着していない。姫からの初動だけで終わってしまう。これはこれで愛香にとっては初めてのピンチらしく「どうなるの?」と思わせる引きにはなっているが、270頁の作品ならば前半でこの果たし合いは決着させて、次の事件か騒動の勃発くらいまでは読ませて欲しかった。舞阪作品を熟知する読者諸兄でも、さすがにこのペースは遅きに過ぎると思うのではなかろうか。清海と愛香のたわいも無い会話が続く流れは、実はこっちが本シリーズのメインなのだと割り切れば、これはこれでアリかな、と思えなくもないが、そうでないと「アンタ達、しなくてもいい会話をいつまで続けてるの」という、ある種の苛立ちを覚えるかもしれない。ここで評価が大きく分かれると思われる。それでも序盤では清海が毬藻と言葉を交わす場面が幾つかあり、照れたりしょげたりする可愛らしい毬藻を見ることができるし、江戸と違って人目を気にしなくていいからか、少々ふざけ気味だが自然に振る舞う雪乃も伸び伸びとしていて好ましいものである。清海の関心は雪乃より愛香に寄っているのだが、肝心の愛香の気持ちがまだ警護対象の域から出ていないため、この恋路はまだ始まってもいないと見るべきだろう。清海に絶体絶命のピンチでも訪れれば大きく変わるかもしれない。本巻の冒頭で現れた刺客(?)のこと、大蝦夷学園のこと、学園長のこと、生徒会のこと、そして姫のことなど、謎はいっぱい残っているので、それらが次巻でどのように明かされていくのかが楽しみではあるが、次巻で全て解決するとは到底思えないペースなのが気掛かりではある。

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