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はじめて読む作家さん。「虐殺器官」の方はキツそうだなと思って、マイルドそうなこちらを手にとってみたがあんまりマイルドではなかったw 物語の構想や仕掛けはとてもすばらしくてうならされた。ただ人物が薄いというか…それを狙って書いているのかな?とも思うけれど、登場人物の記号っぽさがちょっと残念に思えた。
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なんにしても、度を超すのはやっぱりよくないんじゃないか。
感想を一言で言うと、こうかな。
健康も平和も友愛も、それが欠けてるからほしいのかな。手に入れたら
こわしたくなるのかな。
虐殺器官に似て、終盤の意識喪失云々のくだりがどうも具体的にイメージ
できないところが消化不良。意識のない人間ってロボットとか人造人間とか
と並ぶ存在になるってことか?
最近の臓器移植法案のニュースを見ていて、この作品中の「リソース」と言葉が
浮かぶ。「君の臓器で人が助かるというのに提供を拒否するなんて…」と
顰蹙を買うような世界は案外すぐちかくにあるような気がする。
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かつくらの紹介でこれは読まないと!と思い読んだ本。
思った以上によかった。
こう、ひいいいいと思う本にはなかなか巡り会えないので嬉しい。
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ついこないだ星雲賞を受賞してたね。
WatchMeというシステムが人類の健康を管理する世界。
病気の兆候が発見され次第、それに対応する薬品を即座に提供。
病気だけでなく、精神的な面までもカバーし、
いわゆる有害図書やPG指定がありそうな映像など
閲覧者の精神に影響しそうな情報を見る際に警告が表示される。
ようするに、過保護な親に見守られている世界ってことです。
この世界には子供がケガをするようなジャングルジムもなく、
死亡原因は主に老衰と自殺しかない。
すごいよねこれ。誰もが望んでいる世界じゃない?何か問題でも?
はい 問題ありです ってお話。
文中、タイトルのように謎のマークアップランゲージが多用されてまして、、、
これの意味、使われている理由は最後まで読めば分かるよ。
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最初、HTML っぽい記述に戸惑うが、読了後には納得。
正確には ETML(Emotion in Text Markup Language)と言うらしい。
深夜枠アニメ化決定、みたいな匂いはするが、
なかなかの才能の持ち主だと思う。
大変面白く読めた。
作者は既に今年 3 月に、34 歳という若さで亡くなられている。
この作品は、「ほとんど病院のベッドの上で書き上げたもの」、
とのご両親の談話。
第 40 回星雲賞日本長編部門受賞作品。
第 30 回日本 SF 大賞受賞作品。
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セカイ系的な部分とリアルな部分をうまいこと使ってると思った。
ユートピアとディストピアは紙一重というか一緒。
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21世紀の前半、人類は世界中に核弾頭が降り注いだ<大災禍>を経験。
核による放射能の影響は癌患者を急激に増やし、さらには突然変異と思われる未知のウィルスの蔓延で世界は未曾有の混乱に陥った。
それらの危機を前にして世界は、政府を単位とする資本主義的消費社会から構成員の健康管理を重要と見なす<生府>を単位とした高度な医療福祉社会の構築へと向かうことになった。
人類社会からは体内を常に監視するWatchMeとあらゆる薬を作り出すメディケアのおかげでほとんどの病気が駆逐されることとなり、さらに<大災禍>の経験は人々が互いが互いを支え合い思いやる「調和(ハーモニー)」を第一とする社会へと変革させるに至った。
時は経ち21世紀の後半、そんな理想的ともいえるが退屈な世界の中で、ある三人の少女は"餓死"という方法によって社会に抵抗することを選択する。
しかし、死んだのは少女ミァハただ一人。
13年後、生き残ってしまったトァンは"生命主義"が広く浸透する世界の中で生命権保全を旨とする螺旋監察官として日本を離れて働いていた。
だが、やがて日本に帰ったトァンを待ち受けていたのは同じく生き残ったキァンの自殺と、同時に世界中で自殺を試みた人たちの大量発生・・・そこにトァンは死んだはずのミァハの影を見出すことになるのだが・・・。
人類が危機に陥った結果、構成員の健康と長寿が何よりも大事で構成員を社会のリソースと見なすというのは極端ではあるが『虐殺器官』に続き社会の未来像の可能性というものを提示していて興味深く読んだ。個体の情報管理の徹底という点では似たところもある。
そこでは酒、たばこは人体を損傷するものとして当然排除され、太り過ぎも痩せ過ぎもいない均質化された人々が住まう社会でもあり、一つの理想社会を作り上げた反面不気味さも感じる。
分かりにくい物語というわけではないのだけどそれをどう咀嚼するかは人それぞれだと思うのでレビューもなかなか難しい、物語の核心部分の話になるが、人間の意識は進化の過程で脳が獲得した形質に過ぎないとする発想、技術が意識までもコントロールできるという状況、そしてそれに対する回答は強引かもしれないが唸らされた。
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21世紀後半、《大災禍》と呼ばれる世界的な混乱を経て、人類は医療経済へと移行し、誰もが健康であることを約束された。
人類がやっと辿りついた、ユートピアの実現。
しかしそこは、互いの個人情報を明らかにした上で、親密に関わり合うことを義務づけられた世界。
思春期の子どもたちは、社会のリソース、公共物としての身体(パブリック・ボディ)として大事にされた。
そんな優しさと倫理でじわじわとがらん締めにされることに抵抗しようと3人の少女は餓死することを選択する。
けれど死んだのはミァハひとりだった。
13年後、自殺を試みて生き残ったトァンは医療社会を襲った未曾有の危機に、かつて唯ひとり死んでいったミァハの影を感じ取る。
―わたしのことは気にしないで。
―わたしが無価値であることを証明させて。
かなり衝撃的な言葉だった。
わたしがいま生きている社会の中で《自分には意味がない》《価値がない》と嘆く人がいる。
それは、自分にしかない存在意義がほしいということ。
自分だけに見出される価値がほしいということ。
なのに、それをいらないという。
そんな世界が、想像の中でも書き表わせる作者の筆力がすごい。
作者の伊藤さんはすでに亡くなっているようで、この作品は病床で書きあげたそうです。
この作品の中では《意識》や《意志》というものの意味と定義を考えさせられた。
―意識や意志がなくともその生存にはまったく問題ないんだよ―
―人と人との完全な調和に、個々の意識は邪魔なだけだ―
意識が消滅するその瞬間、トァンは言った。
さよなら、わたし。
さよなら、たましい。
もう二度と、会うことはないでしょう。
どうして世界は、こんなにも残酷で優しいのだろうか。
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SF大賞を受賞したという記事を先日見かけ、思い起こしながら記録します。力業(not武力)で恒久平和実現のお話。喫煙や飲酒をするには紛争地帯に行かねばならぬ時代に入り、人間の行き着く先のお話。あまりSFを読まない私でも理解のでき、尚且つおもしろい。物語として結末の裁定が好き。そしてタイトルの「ハーモニー」とはどういうことだろうかと考えてしまう。意味深です。ハーモニーって美しい言葉だし美しいことだと感じる。ユートピアは万物が調和しているものだとして間違いないと思う。でも世界が1人の人間だったら、同じものであることはハーモニーになるのだろうか…それとも1つの意識だとしてもたくさんの人間の意識が織り合っているからハーモニーなのだろうか…とか。
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初めて「あぁ、これはSFだ」と思えた日本人によるSF作品と言えるかもしれない。構想からその世界観がしっかりしていて、よくあるつじつまの合わない違和感はなかった。
人が本当に良心的になるということの極限が意志を持たないこと、という発想が新鮮だったし、現実に起こりそうでぞくっと来た。
残念なのが作者が既にこの世にいないこと。もっと読みたかったな。
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私は完璧なハーモニクスにはなれそうにありません。
何故って怖いから。想像の埒外にあるから。まぁでも実際になってしまったらそんな事すら思わなくなるのだけれど。
こんな世界には住みたくない。もしかしたら、近付きつつあるのかもしれないけれど。そこにこの本の肝がある。
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『虐殺器官』の後日譚でもあるのかな。高福祉型のユートピア(≒ディストピア)での絶望感を通じて、『自由は進化する』や『誘惑される意思』を参照しながら前作同様「意識、意志とは何か?」を問うている。HTMLタグ風の文体の趣向も見事。大満足です。
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なんとグロテスクなハーモニーであることか。彼女たちは彼女たちが嫌悪した世界を作りだしたことに気づいていただろうか。新たな不幸を生み出したことを知っていただろうか。文章中に見える遊びに、内容とは別の部分の楽しみを覚えた。
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「2009年ベストSF第1位!」という帯に惹かれて手に取った一冊です。
そして大当たり。
先が気になってどんどん読んでしまいました。
医療を極め、福祉厚生社会を極めると、もしかしたらこんな事になってしまうのかもしれない。そんな気になります。
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虐殺器官後の世界。表現されたテーマ、表現方法ともにとても面白かった。エヴァンゲリオンをスマートに、リアルっぽい舞台で表現した感じ。