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紙の本
苅谷君の迷走
2008/12/28 12:46
11人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:塩津計 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は安部政権化で力を得た「教育再生会議」の議事録をもとに、その区々たるどうでもよいポイントについて「教育学者」の苅谷君が、あーだこーだとコメントを連ねたものである。ベースは筑摩書房のWeb誌への連載だから、議論が細切れで単発ものばかりである点は、まあ仕方ないとして、一応学者を名乗る苅谷君の議論が、どうしてこう迷走するのか、正直読みおわって暗い気分になった。
まず苅谷君は文部科学省が全国一律に実施した学力テストに言いがかりをつけている。「学力調査なら全国一律に実施する必要はない。60億円もかける必要がない」という。それはそうかもしれないと文部科学省の知人にこの点をぶつけると、「あの全国一斉テストはそもそも学力を調査することが目的なのではありません。業者テストが義務教育の場から追放されてしまい、小中学生の学力の到達度合いを測る手段がなくなった中で、それを補う目的で実施したものです。テストの目的は全国の学力調査ではなく、テストの結果を踏まえ、ここの生徒に応じたきめの細かいオーダーメードの育成プログラムを作ることが目的。そんなこと、苅谷先生だってご存じのはず」との回答。苅谷は本書で、文部科学省のテストはPISAテストを踏まえ、全国的な日本人の学力を科学的に再調査することが目的であるかのように前提して延々と議論を重ねているが、文部科学省の知人いわく、この前提自体が間違っており、このテストはそもそもの目的が違うのだという。こういうことを知っていながら、もし苅谷がわざと議論をミスリードしているのであれば、その目的は何なのか、不思議な印象を受けた。
それにしても、どうして日本では教育論議が迷走するのか。それは教育が「あれも、これも」と欲張りすぎるのも原因だが、もっと肝心なポイントがある。どうして苅谷君は日教組問題から逃げ回るのか、不思議だ。教育行政は、もっと自由度を広げ、地方自治体に権限を大幅に移し、多様な教育サービス提供をそれぞれの自治体が行えるようにするべきだ。しかしそれが出来ないのは、日教組があるからで、気がついたらオウム真理教じゃないが、ある地方自治体が完全に日教組に乗っ取られ、そこでもはおよそ教育とはかけ離れた反日政治運動に学校全体が巻き込まれる。こういうことが起きかねないのである。だからこそ文部科学省は闘っているのだが、こうした文部科学省の悩みについて、本書はもっと触れてもよかったんじゃないか。
それにしても昨今、「教育の機会均等」を異常に拡大解釈して、まるで「結果の平等」がない限り。憲法の保障する機会均等は守られないなどとするバカな議論が一部で勢力を持っている。日本で保障されているのは「人種、信条、性別、社会的身分又は門地」によって差別されないことであって、高い授業料が必要な私立学校や進学塾にまで皆さんが平等に通える権利までは保障なんかしていない。そんなことはいまどき小学生でも知っている。私の東京大学卒の知人は高校時代に父親が病に倒れ、生活保護を受けながらも東大に進学し無事卒業し、一流企業に勤務している。彼曰く彼自身は大変貧しかったがそのことで差別されたことは一切なかった。勉強なんかやろうと思えばみかん箱に新聞紙をはった机でも十分できるし、参考書や問題集は難関校向け含め廉価でいまどきいくらでも売っている。日本という社会は教育については本当に平等で良くできた社会だと思う。なにより僕自身の存在がそれを証明している」と言っていた。もって瞑すべしであろう。
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