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先頭打者は表題作「魚舟・獣舟」。 ロボットと人を描くSFは多くあるが、人の遺伝子を持つ人型ではない生物と、人の遺伝子を持たない人型ロボットの組み合わせの物語は面白い。そしてラストの「進化」のひねりが最高のしまりを見せる。いい作品だなぁ。
続く「饗応」はイマイチ印象に残らないものの、「くさびらの道」 はウルトラQのマタンゴ(?)をイメージさせる強烈な作品。眉唾ながらも科学的考察でSF色をくっつけているところが涙ぐましい。
イメージが変わって、科学的味付けを排した妖怪物語「真朱の街」は可もなく不可もなく・・・というか、「蚊も泣く」ちょっとレベルダウンの話かな。
そして最後の「小鳥の墓」は全体の半分を占める長編タイプ。教育実験エリアなるところから外へ脱出しながら成長を続ける少年を追う。しかし、「外」は実は・・・。なかなか面白い。これは作者のほかの作品のサイドストーリーっぽいらしいので、そっちも読みたいと思っている。
要するに全体的には驚くほ新鮮なSF作品集だ。この作者気に入ったから、ほかも読んでみようと思う。満足。
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表題作はじめ、SFらしいSFはとても面白いアイデアで好きだった。でも最後の『小鳥の墓』もノワールな感じがして、SF的なアイデアだけの作家さんじゃないのがとても伝わってきた。ゼウスの檻が高くて厳しいので文庫化希望...
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図書館の予約待ちで、順番が回ってきた。カバー見返しで「ショコラティエの勲章」の人と知って「げっ!しまった!」と思ったが、とりあえず読んでみたら……この本の方が全然いい。SF短編集。文章は読み易い。ただ、円城塔パワーで、意味が通じるだけで読み易いと思ってしまっただけかもしれない。巻末にある、各遍に対する解説が嬉しい。ライトノベルを読むことが多いからか、解説がある本は久しぶりだ。
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どれもクオリティが高いSF短編集。文明が海に沈んだ世界や妖怪とSFの共存などどれも面白い設定だったが、それだけではなくストーリー自体もとても面白く飽きさせない。特に「小鳥の墓」は素晴らしかった。
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短編にしてしまうには勿体ないほどの世界観の連続。
特に表題作とくさびらの道は本当に面白い。
小鳥の墓は唯一の中編だったけれど、丁度いい文章量に丁度よい情報量だと思う。とてもいい作品だった。
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久し振りのSFだった。短編集であり、どの作品も楽しめた。茸が恐ろしくなった。本著者は初だったが、中編だった小鳥の墓にリンクする話もあるようで他の作品も読んでみたい。
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第一印象としては「短すぎる」と思った。どれも膨大なイメージ、アイデアに溢れてはいるが、「高密度」と呼ばれる作品と違い、感情に寄り添った良質ストーリーを楽しみたかったということでもある。
あと、「外伝」って好きじゃないんですよね。ということで力作の「小鳥の墓」がただの「不良の言い訳」小説に読めてしまった。残念。
「ブルーグラス」と「真朱の街」が良かったです。
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前から気になっていた上田早夕里を初めて読みました。
帯や背表紙では,SFが強く打ち出されていましたが,中身はかなりホラー・ファンタジー寄りの短編集ですね。バイオ系の道具立てが多いのが特徴的。
なかなか好みの話が多いです。
「ブルーグラス」と「小鳥の墓」は雰囲気と読後感がツボ。
「真珠の街」はテクノロジーと妖怪が自然に溶け合った世界観が非常に面白く,続編がよみたくなりました。
完成度が高いのは、「くさびらの道」でしょうか。バイオ系ホラーですね。
ただ,評判が高く期待していた表題作「魚舟・獣舟」だけは,後半の獣舟の進化の話が安っぽく感じてしまい,興醒めしてしまいました。設定も世界観も面白いし,話にも引き込まれていただけに残念。
他の作品も読んでみたいですね。
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どれも魅力のある短篇集。
「小鳥の墓」が、凄く好きだな。理想的。
「火星ダーク・バラード」読み返したくなったけど、文庫で置いてる本屋さんが見つからない。…旅に出るか。
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魚舟・獣舟/くさびらの道/饗応/真朱の街/ブルーグラス/小鳥の墓
ややホラー気味のSFかな。ありそうで怖いせいか、受け入れることを拒否する自分がいる。のめり込めずに手の先にある本の文字を追い、容器の中の世界を眺めて終わってしまった。残念
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普段あまりSFを読まないし、装丁も好みじゃない。
だけど、なかなか面白かった。「くさびらの道」は
夢にでてきそうで怖い。
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圧倒的な世界観と各短編に深いテーマが感じられるSF短編集。
表題作の『魚舟・獣舟』は海に住む海上民と、陸に住む陸上民とに分かれた近未来を舞台にした話。
ページ数的には多くない作品ながらそれなのになぜこれだけの世界観を過不足なく書ききることができるのか?そんなことを本気で考えさせられてしまう、とにかく力のある短編です。
この世界で新たに生まれた魚舟と獣舟という生き物たちと人間たちの関わりや、生物とは?人とは?などいろいろな問題を考えさせられます。
『くさびらの道』は茸によって引き起こされる奇病が蔓延した近未来が舞台。
単に怖いというだけでなく、読み終えた後に静かな余韻の残る作品でした。SFとしての読みごたえもばっちりです!
『真朱の街』ではなんと妖怪まで登場してしまうのですが、それでもしっかりとしたSFで、この世界観を舞台にまた別の作品をぜひ書いてほしいです!
『小鳥の墓』はこの短編集の中で唯一の中編。徹底された管理社会で生きてきた連続殺人犯の回想です。
主人公と彼の悪友の生き方にはどことなく共感してしまうものもあり、きちんと人物が描けているところも読んでいてうれしいところですが、管理社会のアイディアがとにかくすごい!ちょっとした設定から明らかになる真実まで全てが自分好み!
どの作品の世界観も短編一話でまとめてしまうにほもったいない!と思わされる話ばかりでした!
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中短編6作。
映像が目に浮かぶほどの描写力、強烈な世界観、そして頁数が全く問題にならない完成されたストーリー。
びっくりするくらいドンピシャに好み。
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書店で見かけて、敬愛する方がお好きな作者ということを思い出し、読んでみた
前半は短編が並んでいる
巻頭の「魚舟・獣舟」
現代社会が崩壊し陸地の大半が水没した未来世界
下層階級の海の民と少数エリートたる陸の民
魚舟と獣船と呼ばれる生物と人類の関わり
幼なじみの男女の運命は・・・
とても短い物語なのに、壮大な世界観が繰り広げられる
的確な科学知識に裏打ちされたプロット
アクションも効果的だし心理の襞も生々しい
読後の余韻が深くて長い
思い返すと、この作品は作者のエッセンスが詰まっていた
SF作家ということで、未来や異世界が舞台となっている
その設定は元SF少年の心をくすぐる
しかし、僕は思った
その世界観を現代に置き換えれば、素晴らしい文学作品なのだ
逆にSF的設定が不要なのではないかと
いや、不要は言い過ぎだった
魅力的なSF要素があってこその人間ドラマなんだろう
真菌に支配される世界での愛の姿を描いた「くさびらの道」が一番好きだ
真菌症の特効薬がないことを踏まえているのだろうか
妖怪と人間が交錯する「真朱の街」もいい
一人の男の懺悔と妖怪女による救いがテーマだ
これって「罪と罰」ではないか
本の後半分を占めるのが「小鳥の墓」という中編だ
未来社会の高校生が主人公
理想的な教育を受けられるE地区の住人だ
隔離された無菌室のような環境に不満を持ち
不良の友人に誘われて、不法に「外」に行き来する
享楽と暴力に満ちた「外」での事件から、思わぬ展開に翻弄されていく
ここでも、舞台設定が重要なのではなく、少年の鬱屈した心情と親との軋轢、男女関係、社会と個人、などあらゆる人間関係が物語を動かしている。
中編だけに、伏線やどんでん返しもあって、いっそう作者の力量を感じ取れる
正直、凄い作家に出会った
何者なんだろう
ズシンと納得する感じではなく、何か今でもずっと裾を掴まれているような気分だ
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2012.2.18 推薦者:修造(http://ayatsumugi.blog52.fc2.com/blog-entry-87.html)