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新自由主義への断罪の書である。新自由主義を徹底して批判し、同時にその新自由主義経済政策によって生み出された「格差と貧困」を強く批判し、経済のグローバル化の下で起こった危機を時系列的に系統的に明らかにしている。はっきりと言い切った明確な主張は、おそらく「最左派」ではないか。おもわず本書は経済学の書なのか、それとも社会学の本なのかとの感想をもった。すごい本である。
本書では、現在も進行中の「100年に一度の経済危機」がどのようにしておこったのかを詳細に分析し、経済危機が新自由主義によって呼びおこされたと主張する。また、格差社会の問題も取り上げられている。増大する日本社会の「格差と貧困」は、経済のグローバル化と大企業の多国籍企業化のなかで、新自由主義レジームの経済政策によって必然的に生み出されたというのだ。その内容は専門的ではあるが強い説得力がある。
ここまで徹底した専門的な新自由主義への体系的な批判に対して、素人は言葉が出てこない。ただ息を飲んで見つめるだけだ。しかし現実社会においては、未だに世界経済は変調をきたしているし、本書は2009年2月の発行であるが、その内容と指摘は、2011年10月現在でもいささかも古さを感じさせないものである。とにかく、すごい本であると思う。