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主人公の宮永知世子は高校2年生。本当の名前はチョコリエッタ(うそ)。進路指導調査に「犬になりたい」と書いて呼び出しをくらいます。チョコリエッタが幼稚園の時の夏休みに家族で山に遊びに行く途中に事故に遭い、お母さんが亡くなり、チョコリエッタもしばらく入院し、小学校は2ヶ月遅れで入学します。事故のあった時にお父さんの妹の霧湖ちゃんが飼い犬のジュリエッタのお世話で留守番をしていたのですが、そのままジュリエッタとチョコリエッタのお世話をしています。そんなチョコリエッタの日常と夏休みのお話です。
全体的によくわからないのかわかるのか、わからないお話ですが、イタリア映画の情景を思いながら、緩やかにチョコリエッタの心に入り込んでいきました。
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すごくおおざっぱに言ってしまえば,不機嫌な10代のお話かな.
母親の死を引きずっている知世子は,母親とのつながりの思い出をいっぱい残していた(かつ,一緒に育ってきた)愛犬のジュリエッタを亡くし,自分だけが取り残されていくような喪失感を感じている.
そんな彼女が,人を殺したい衝動を持っていた正岡先輩と再会し,彼が撮影するビデオカメラの前に立つようになる.
10代の頃のいらだちとそれからを鮮やかに切り取って描いた秀作.
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大事な家族を突然亡くした経験は私にはないから、彼女の気持ちがわかるとは言わない。それにしたって不機嫌な時間が長すぎるでしょと思ってしまうくらい、彼女はずっと不機嫌。思春期を迎え、それまで母親代わりだったまだ若い叔母のことも疎ましく思い、唯一心を通い合わせていると感じていた飼い犬も喪って悶々。前向きに生きることに努める様子もなかった彼女だけど、無意識のうちに気持ちの整理をつけてゆく。
記憶は選べない。でも、いつか思い出す瞬間って、最高でなくともささやかな幸せを感じた瞬間じゃないだろうかと思うのです。よかった。
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いっきに読んだ。未就学児で母を失い、若い叔母とあまり接触のない父親と暮らす女子高生というだけで、計り知れない心の屈折があるだろう。掬い切れているのだろうか?
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西加奈子『円卓』のこっこからの、チョコリエッタ。
個性的というか、偏屈で凶暴な何かを心に住まわせている少女の小説を、偶然にも立て続きに読むことになった。
幼時、家族旅行での車で事故を起こし、母を失った知世子。
それから父親との関係もうまくいかない。
事故以来母親代わりを務めてくれた従妹の霧湖とも、愛犬のジュリエッタが死んで以来、うまくいかない。
霧湖は自分のために就職もできなかった。
今、霧湖は結婚を考え始めている。
知世子は成長につれ霧湖からも心が離れつつあるが、いなくなるのも受け入れられない。
知世子の高2の夏、映画研究会の先輩、正岡正宗のバイクで連れまわされ、あちこちで映像を撮ることになる。
二人とも、感受性は鋭いけれど、表現がたどたどしい。
勿論、この二人が恋愛関係になることもない。
文体は明晰。
河原で行きずりの子どもたちとハーモニカを吹く場面や、親戚の淑子と過ごす秋の海辺など、映像的な美しさがある。
もうちょっと知世子に寄り添えたなら、楽しめたのかもしれない。
近日中に、大島さんのトークライブを視聴する機会がありそうだ。
それまでに『渦』を読んでみたい。
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映画みたいな小説。
山に置いてきてしまった自分をチョコリエッタとして迎えに行ったのかな。
犬であるチョコリエッタは先輩がつくったフィルムの中で生きているから、知世子ちゃんはまた自分としてめげずに生きていけば良いよ。
「記憶ってさ、もしかして、選べないんじゃないかな?」
私は、記憶は全部脳みそに記録されていると思う。両親とジュリエッタとのあまい生活も、別れてからの生活も。でも取り出せる記憶は選べないような気がするな。
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面白かった! 正岡正宗が持っているハサミを「ドイツ製のな」と、聞いてもないのに自慢げに言ってて、こじらせ具合が良かった!
付箋を貼った箇所が、巻末の解説で野中さんも好きなシーンとしてあげられていて嬉しかった。