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紙の本
西澤の作品にはもともとSF的な要素もあるんですが、ミステリ的な解決を主眼に置いていないのが、この作品集に収められているそうです。それと古い作品。そのせいか、イマイチ切れがない・・・
2009/07/17 20:59
5人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
正直、これって既にハードカバーで出たものがノベルズになったんじゃないか、って思ってました。なんとなくタイトルが『ソフトタッチ・オペレーション』を思わせるんです。字面だって、言葉だってまったく違うんですが、神麻嗣子の超能力事件簿シリーズかな、なんて思うんです。でも、違うんです。初単行本化なんですって、驚き!
ちなみに、カバー画は西澤作品としては異色の純SFもの。担当は、初期グインサーガやSFマガジンの表紙を独占していた感のあった加藤直之の手になる新作。ちなみに、あとがきには、カバー画担当の加藤直之についての西澤の思いが詳しく書かれていて、このカバー画にはオリジナル作品があるそうです。カバーデザインは岩郷重力+WONDER WORKZ。、ブックデザインは熊谷博人・釜津典之。
ついでに、あとがきに触れてしまえば、カバー画だけではなく、小説各篇の由来がかなり詳細に書かれています。雑誌掲載こそされたものの、元原稿はもっと以前に書かれたもので、手直しに時間がかかり、殆ど書き替えとなってしまったもの、やっと探し出した古いものなどさまざまなものを集めたそうです。
ちなみに、西澤は超能力や時間を扱うのが特徴の作家なので、これが初のSF作品集と聞かされてもぴんときませんが、神麻嗣子の超能力事件簿シリーズは、超能力が使われていても、あくまで謎の解決に主眼が置かれているのでミステリ。今回の収録作品は、SF設定抜きに話が展開しないのと、必ずしも解決が主眼ではないのでSFらしいです。
カバー後の案内は
パートナーを機械で理想のタイプに変換し愛することのできる時代が到来した。
その技術に賛否が渦巻く中、思いも寄らぬ恐怖が開発者を襲う!
表題作『マリオネット・エンジン』をはじめ
恐怖に満ちた6作品を収録!
ロジックに定評ある
西澤保彦のすべてを凝縮した
SFホラー短編集誕生!!
で、カバー折り返しには
SFやホラーというジャンル
を特に意識して執筆した作品ば
かりで編んだ、わたしとしては
初の非ミステリ短篇集です。
読者諸氏に少しでも楽しんで
お読みいただけることを祈って
おります。
――西澤保彦
とあります。以下、各話の内容と初出を書いておきます。
・シュガー・エンドレス(小説現代増刊メフィスト2007年9月号):白砂糖は薬品である、とはよく言われるところ。それに取り付かれたおれが家族の食生活を変えようとした結果は・・・
・テイク(SFオンライン1999年):本来は催眠療法のために開発された遡行性自我解析装置。メリッサとテイクこと日本人のTAKEはその機械を使用するうちに過去が現在を侵食し・・・
・家の中(異形コレクション『時間階段』1999年):新築された我が家には、私にだけ見える敷きっぱなしの布団があって、そこには老婆がいて・・・兄に犯された私の地獄・・・
・虫とり(小説現代増刊メフィスト2009年1月号):パッケージに見つかったバグ。それが出なかった日は一日もない。実際に生産された5000体のバイオロイドの演技に影響が・・・
・青い奈落(異形コレクション『世紀末サーカス』2000年):空に落ちてゆく夢。崩落する家とたどり着く地面のない恐怖。七恵の愛撫の最中に起きた出来事は・・・
・マリオネット・エンジン(書き下ろし):パートナーを機械で理想のタイプに変換し愛することのできる時代が到来した。その技術に賛否が渦巻く中、思いも寄らぬ恐怖が・・・
あとがき
小説としてではなく、情報が面白かったのは「シュガー・エンドレス」、個人的に好きなのは「家の中」です。やはりSF色が強いものよりは、一般小説として楽しめる作品のほうが出来がいいのではないでしょうか。SFについては、あえて西澤でなくても書ける、そんな気がします。
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