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ブリューゲルの宴 みんなのレビュー
- 利倉 隆 (構成・文)
- 税込価格:2,090円(19pt)
- 出版社:二玄社
- 発行年月:2009.3
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紙の本
イメージの森へ、分け入っていった先に。
2009/08/07 11:29
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:wildflower - この投稿者のレビュー一覧を見る
フランドルの画家、ピーテル・ブリューゲル。
諷刺のぴりぴり効いた作風で有名、という印象がありました。
有名どころとしては、p44-45に載っている
1559年に描かれた「ネーデルランドの諺」という油彩があります。
いつか、どこかで……美術の教科書の図録だったかもしれません
出逢っているはずの、ブリューゲルさんの絵画なのですが
そのまま絵を前に立ち止まったのでは、魅力はちょっと分かりにくい。
そう、長いこと思ってきました。
この二玄社さんから発行されている「イメージの森へ」という絵画絵本の
シリーズは、同じ利倉隆さんによって構成され、文章が記されています。
とても、分かりやすいのですね。
16世紀の絵について、もはや分かるはずもない当時のこと。
例えば、このブリューゲルの絵画の場合ならば、その当時題材として
描かれていたフランドル地方の農民たちがおかれていた状況だとか
風習だとか……。
それらを「お勉強」してまできちんと理解して鑑賞しましょう、というのも
ひとつの方法なのではありますが
絵画の鑑賞はそうでなくても、いいんですよ。と
冒頭から語りかけてくれるのですね。
絵画に描かれた”イメージの森”へ遊びにきたのだから
予備知識や、準備をもたなくても、どうぞ見つめてみてください。
と、そういうコンセプトでつくられたシリーズの1冊です。
まるで名ガイドが寄り添って、絵画のことを優しく教えてくれるような
そんなさりげないやりかたで
気がつけばまったく新しい見かたができているのに気がつきます。
こどもでも分かりやすいかたちで
でも、おとなならばさらに、それを手がかりに
深く、深く”イメージの森”を探索してゆけるのです。
さて
ピーテル・ブリューゲルの絵画のなかには
細かく人物が書き込まれているものがたくさんあります。
1560年に描かれた「子供の遊戯」という油彩には80種もの
当時の遊びが描かれている、というのですが
どこを見つめてよいやら、なんだか目が泳いでしまいます。
そんなとき、どこを基準にみたらいいかも、さらっと教えてもらいました。
ひょっとしたらこれは、美術の基礎なのかもしれませんが
あることに留意したとたん
ばらばらとランダムに描かれているようにみえた1枚が
きちっと計算をされた構図になっていることが分かります。
そして
図録や美術図版のような書物にない特長がもう一つ。
実際に、絵を前に立っているような感じなのですね。
つまり
ガイドの説明(記された文章)に添って遠景~近景を
近づいてみたり、ちょっと距離を置いて見直してみたり
そういうのって展覧会でもよくやる動作だと思うのですが
そういう自然な流れで鑑賞できてしまうのですね。
本でそれをできるって、あまりないことではないかと思います。
中盤から後半にかけて
次第に諷刺色の強い作品へと移っていきます。
1567年「怠け者の天国」
1563年「バベルの塔」
そして圧巻なのが
1562年「叛逆天使の顛落」
1562年「悪女フリート」
1559年「ネーデルランドの諺」
……これらの絵に特徴的なのが
ひとの理想とは離れた姿をかなり露悪的に、真正面から描いていること。
美しいというよりは醜悪
立派というよりは、なんとも情けなくなるような
さまざまに描かれている人物たちを見ていくと
好む好まないというよりも
その生々しい魅力に、目が離せなくなってしまいます。
名ガイドのお陰で
わかったつもりでまったくわかっていなかった
ピーテル・ブリューゲルの作品の魅力が
だんだんと分かってきたような気がします。
50頁に満たない短さで、その基本的な見かたや、なるほど感が
得られるなんて、ただものじゃないと思ったのでした。
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