紙の本
資本論への入門パート3
2016/02/09 19:26
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投稿者:塩漬屋稼業 - この投稿者のレビュー一覧を見る
シリーズ最終巻。
この巻もまた冒頭より三分の一くらいまで意義のわからない荒っぽい数式が何度も出てきてついていけない。
つまるところ労働者が搾取されているというのが絶対的な大前提なのだ。
だから利潤はそこからしか生まれない。
その筈なのに、現実には流通や商取引で利潤が生まれるように見えてしまう。
それを批判するために、利潤率などというものが、もっともらしく出てくる。
しかしその恣意的なパーセンテージにいったい何の意義があるのか、さっぱりわからない。
利潤が労働力からしか生まれないのだとすれば、現在の資本主義における金融マネーの膨張というのがわからないのでは?
恐らく、だから本巻で重要なのは第五編“利子生み資本”の項だろう。
銀行、株、債権、そしてそれに伴う利子。それを生み出す信用。
人間労働が利潤を生み出すとして、たとえそれが苛酷な奴隷労働であっても、そこで生み出される利潤には、やはり人間的限界がある。
その限界を超えてマネーが膨張するためには、信用と利子がその駆動力になる筈なのだ。
だから利子生み資本と信用論が現代の金融資本主義の要となるのだろう。
しかしこの辺りはマルクスにとってはまだ草稿の段階なのですね、残念ながら。
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(2009.12.03読了)
柄谷行人さんは、「資本論」の第3巻が面白いと言っていました。いきなり第3巻というわけにはいかないので、第1巻、第2巻と読んで、第3巻にたどり着きました。
「資本論」第1巻は、マルクスが自分で書いた物を出版したのですが、第2巻は草案が残され、エンゲルスが編集して出版しました。
第3巻は、「きわめて欠落の多い最初の草案」が残された。足りない部分はエンゲルスが書いて補った。修正を加えたり、置き換えや削除を行って筋書きが付くようにした部分もある、とのことです。
●貨幣資本と地代(33頁)
資本を貸し付ける貨幣資本家の利子、土地を貸し付ける地主の地代なども出現し、これらも結局企業が搾取する利潤によって構成されるわけですが、一見しただけではそれは見えません。
(第3巻の主な論点は、この辺のようです。銀行の利子も地代も結局は、企業の利潤で支払われるというのは、もっともなことです。)
●現金が動かなければ価値がない?(38頁)
現金が何事もすべてで、現金支出、収入のないものは何の価値も生まないと考える。現代では募金を頼むと嫌がる人が、ボランティア労働だとすぐに出てくるようなものでしょうか。労働力の方がよっぽど高いはずなのですが、現金を払わないで済むことを選ぶ。
●節約とは(69頁)
節約とは、資本家的にいえば、建物の節約と言われる、狭い不健康な場所に労働者をいっぱいに詰めること、一つの場所に危険な機械装置を詰め込み、危険に対する保護を怠ること、本質的に有害な、鉱山のような危険を伴う生産過程において安全策を立てないことなどである。資本主義的生産は、一般的にはケチなくせに、人間材料については全く浪費的であるのだ。
●利潤のためなら(72頁)
重要なことは、殺人は利潤のためなら、殺人とはならないということだ。
●国際取引(190頁)
商人は外国を旅する場合、常に鋳造していない銀や金を持って行き、そこで当該地の鋳貨に変え、また帰りには未鋳造の金や銀に変えたといいます。
●利子禁止法(204頁)
貨幣が貨幣を生むということは昔からおかしなことと考えられていました。中世の利子禁止法はまさにそれで、貨幣が貨幣を生むことはない。貨幣すなわち利子を生みだすものは労働であると。誰も物を作らないで、金を貸し付けて利子をとることなどできない。誰も汗水を流さず利益を得ることはできない。
●企業は株主のためのもの(210頁)
資本主義世界の常套句とは、「企業は株主のためのものでる」ということですが、まさにここに資本主義社会の謎―利潤は労働者の搾取からではなく、貨幣資本家の貨幣によって生まれるのだ―という倒錯した世界があるわけです。
●恐慌時には信用主義から貨幣主義への転換が起こる(279頁)
貨幣需要が逼迫した時には、資本家はもはや利子生みのための貨幣を貸し付けることはなく、むしろ利子など無視して貨幣を握りしめ、外に出さなくなる
(2009年12月7日・記)
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マルクス=エンゲルスの『資本論』第3巻の解説書です。
やはり各章ごとに内容が簡潔に要約されているのですが、『資本論』第3巻はマルクス自身の構想が十分に展開されないままに残されたということもあり、章ごとの内容についての解説を読んだだけでは全体の見通しが立たないきらいがあります。このシリーズのほかの巻についても言えることなのですが、とくに本巻はその印象を強く感じました。この点に関しては、別の解説書で補う必要がありそうです。