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世界金融危機について、アメリカとヨーロッパ中心に各国の動向をまとめた本。金融がいまいちよく分からなくても、ゆっくり読めば分かると思います。インタビューなども多くジャーナリスティックな文章なので、少なくとも学術書よりは分かりやすいかと。
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現在の不況・経済危機は、100年に一度あるかないか、ということだそうである。この実体経済の不振は、アメリカのサブプライムローンの不良資産化に端を発している。実体経済の不振がどういうことなのか、ということは直感的に理解できる。例えば、ということであるが、自動車が売れなくなり、トヨタをはじめとするそうそうたる世界中の自動車メーカーの業績が落ち込みを見せる。自動車の素材・部品を構成している鉄鋼やプラスチックの売り上げも落ち、そういった企業の業績も振るわなくなる。企業業績が落ちると、社会問題にもなっているけれども派遣社員の契約を打ち切る等の策により企業はコスト削減を図ろうとするし、あるいは、ボーナスや給与が減ったり、中には雇用そのものに手をつける企業が出てくる。こういったことが続けば家計収入が減るだろうし、家計収入が減れば消費が減り、ますます自動車は売れなくなってしまう、というような悪循環が起こってしまう。実体経済の不振とは、まぁ、このようなことなのだろう、という理解は出来る。今回の世界同時不況はしかし、もともとは金融危機から起こっており、金融危機のきっかけはアメリカのサブプライムローン問題、という説明を読んだり聞いたりするが、こちらの方は分かったようでいて、実はよく分からない。分からないから、ということで買って読んでみた本がこの本なのであるが、読後、なるほどそういうことか、と一気に理解できたとは言いがたい。それは、「実録」という題名が示すとおり、この本が主として「何が起こったのか」を記録することに主眼を置いていて、「どうしてそうなったのか」を解説するようには出来ていないから、というのがひとつの理由。でも、それよりも、金融商品、いわゆるデリバティブと呼ばれているもの、その価値が下がってしまったことにより、それの保有者、例えば投資銀行等の資金繰りに致命的な打撃を与えてしまったもの、の内容が難しくてよく理解出来ないから、ということの方が主たる理由だ。それは、「多くの投資銀行が経営危機に陥った原因で共通するのが、証券化商品や企業などの信用リスクを売買するクレジット・デフォルト・スワップなど新しい金融商品の在庫を過重に抱えたことだ」という説明の意味を理解するだけの金融商品に関しての知識がない、ということだ。という訳で、読後、消化不良・欲求不満的な感じが残っている。とは言え、きちんと理解しようと思えば、ちゃんと知識を持つしかない、ということは分かった。
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2007年のサブプライムローン問題から、リーマン破綻を経て、2008年末の世界同時不況・ビッグ3救済までの金融危機の実情を叙述する。事実を追っかけるだけなら、本書で十分と思える充実の内容。特に、金融危機から実体経済の落ち込みまでのプロセス・アメリカの金融政策の決定過程は丁寧に書かれており、よくわかる。本書にあるように、資産・債権を証券化した場合のリスクの判別がほぼ不可能であること、格付け会社が、自らの営業・利益のために、格付けする証券・デリバティブを高評価する危険性があることは忘れてはならないだろう。