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紙の本
山への想い、ひしひしと。
2009/07/10 11:39
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:佐々木 なおこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
「山に登る人の表情がいいね。
みんな満ちたりた、幸せそうな顔をしているなぁ。
なんかキラキラ輝いているよ」
「そうかなぁ」
「すれちがう人がだれもかれも幸せそうな顔をしているのにオレはおどろいたな」
「山は自分の足で歩くしかないから、巡礼みたいなもんかもしれんなあ」
「そう、このごろ、人は歩くという原体験をほとんど忘れてしまっているからな。歩くことによって人類が真っ先に発見したのが、お前さん、宗教なんだよ。仏教もキリスト教も儒教も歩くことによって生まれたんだ」
「歩くことは、精神を浄化させる作用があるが、車社会の現在は安心して歩けるのは山道しかない」
「山の中に入り、歩くことによって、森や草や岩の神々の声を聞けるのです」
画と文の沢野ひとしさんが青森の友だちを誘って、八甲田山へ登ったときの二人の「歩くこと」についての会話だ。
八甲田山は日本海と太平洋を見渡せる山なんだそうだ。なんだかぴんと来ないが、スケールが大きいことだけは分かる。
その山を歩きながら、語り合う二人、なんだかしびれる会話だ。
私にとっては、沢野さんは「本の雑誌」の表紙のイラストをずっと描いている人で一方的にすっかりおなじみさん。ほのぼのゆるいタッチが、とても好きで、彼のイラストを見ていると、なんだか顔がにやけてくるほどだ。
その沢野さんに、こんな深い山の世界があったなんて!とおどろきながらもぐいぐい引き込まれるように読んだ。
登山の面白さを教えてくれたお兄さんのこと、
新婚旅行が八ヶ岳で、そのとき沢野さんが無人の小屋で作ったカレーライスを美味しそうに食べた奥さまのこと、
小さい頃から一緒に山登りをした息子さんのこと、
それからいろんな山の仲間たち…。
わくわくしたり、辛いだけだったり、時にしょんぼりしたり、その時々に、さまざまな人たちと登った山の話が次から次へと登場する。
「なぜ山を見ているだけでこんなにも気持ちが動き、あるいは穏やかになるのか。山には人を幸せにするパワーが潜んでいる。
山に入り、一歩踏み出すと、体に力がみなぎるのがたしかに分かる。きっと森や川や岩から自然界のエネルギーが放出しているのだ。」
あとがきで沢野さんは言う。
そうだろうなぁと思う。
沢野さんの山への想いがひしひしと伝わるこの文章を読んだだけでもなんだか力がみなぎってきそうだ。それは山のエネルギー、そしてそれを伝える沢野さんの文と画のエネルギーだ。
沢野さんの描く山の風景は、私が馴染みのほのぼのゆるいタッチとは違う。切り立った山のデッサンだったり、目を見張るような山と空の色合いだったり…、それがまたいいなぁ~と思う。
沢野さんは最近、山の極意は低山にありと悟られ、実行に移し始めているそうだ。ぜひまた低山の魅力をお聞きしたい。
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