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バラ作りは癖になる。美しさだけではない。
著者は、バルコニーで60鉢のバラを育てているという。庭植えと違って鉢植えはなにかと手がかかる。
そのあれやこれが楽しくて仕方がない。60鉢とはうらやましい限りである。
もっとうらやましく感じる旅に著者は出かけた。バラは人名を冠した名を持つものが多い。著者のバルコニーでも咲き誇っているバラに名を残す7人をヨーロッパに訪ねている。その足跡を美しくまとめたのが本書である。
ジョゼフィーヌ、ルドゥーテ、ピエール・ド・ロンサール、シェイクスピア、モリス、コレット、マリー・アントワネット。
ナポレオンから与えられたマルメゾン城で多くの植物を育てたジョゼフィーヌは、特に薔薇園を愛した。
ジョゼフィーヌのバラたちを描き図譜を作ったのがルドゥーテである。この二人の縁の場所はバラ愛好家にとっては聖地にほかならない。
ピエール・ド・ロンサールはつるバラで人気の高いバラだ。著者は3鉢あると記してあるので、よほど広いバルコニーのある住まいなのだろう。
壁に這わせたり、アーチやオベリスクやトレリスに仕立てたりし、外が白で内側が淡いピンクの花を多く咲かせる。
ピエール・ド・ロンサールご本人も美しい容姿の宮廷詩人であり僧であったという。
ストラトフォード・アポン・エイボンにも訪れ、シェイクスピアゆかりの場所を複数回っている。
シェイクスピアは本人を冠した名のバラだけでなく、オフィーリアやジュリエットなどのバラもある。
日本でもイングリッシュローズは人気でその香りと美しさに愛好者が多い。イギリスではラベンダーとともにバラが風に揺れている。
ベルサイユ宮殿の奥にあるマリー・アントワネットのプチ・トリアンをラストとし、この旅が締めくくられる。
著者の松本路子さんは写真家で、バラを愛する気持ちが溢れている多くの写真とともにこの本は楽しむことができる。
この7品種のほかに人名を冠しているバラの紹介もされていてバラ図鑑的にも楽しむことができる。