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お金がない、綺麗じゃない、親がいない、人とうまく話をすることができない。
何かが欠落しているからこそ、その空白を埋めるために、アダルトビデオによって得られる沢山のお金や、人との接触の機会を求めるというのは、AV女優になる動機として、一つの十分な説明になる。
他方、抽象的で漠然とした満たされなさだけがあり、または、そもそも満たされなさすら感じていなくても、女の子は、アダルトビデオに出演することがある。
それは、夢へと近づくための一つの階段であり、くすんだ色の生活に彩りを添える職場であり、空白のままだったプライドを満たす環境でありうる。
AV女優という職業は賤業であり、世の中の不幸を背負った人間が行き着く墓場である、などと言えば、それは明らかに事実を誤っている。
それでも、その職業が、他にはない、何かしら特別な空気をまとっているように見えるのは、見るものの偏見に過ぎないのだろうか。
「斎藤つかさは体を切り売りすることに疑問を抱き苦しんでいたけれど、飛鳥みどりは何も考えていない。たぶん何百人と存在するAV女優の中では、飛鳥みどりのようにアッケラカンとしているコが大多数である。楽しいから、続ける。
ただそれだけのことなのだ。」(P.99)