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アイゼンファウスト天保忍者伝 1 (KCDX) みんなのレビュー
- 山田 風太郎 (著), 長谷川 哲也 (著)
- 税込価格:618円(5pt)
- 出版社:講談社
- 発行年月:2009.4
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コミック
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紙の本
われ天保のGPU
2009/05/02 20:00
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:峰形 五介 - この投稿者のレビュー一覧を見る
山田風太郎の作品集をいくつも企画・編集してきた日下三蔵が『忍法創世記』の解説で、こんな言葉を用いたことがある。
「あまり出来のよろしくない(あくまで風太郎忍法帖のなかでは、ということだが)後期の数作」
この後に続く文章で日下が挙げた「あまり出来のよろしくない」作品は四本。『忍法剣士伝』(個人的には大好き)と『忍法双頭の鷲』(これはいまいち)と『秘戯書争奪』(Vシネ版は噴飯物)。
そして、『忍者黒白草紙』だ。
確かに『忍者黒白草紙』の完成度は高くない(日下が述べているように、あくまでも他の忍法帖と比較した場合だが)。しかし、逆に言えば、後人が手を加える余地があるということ。「完成度が低いのなら、俺が完成させてやる! 七十点の作品を百点にしてやる! いや、百二十点にしてやる!」ってなことを考えたのかどうかは知らないが、鬼才・長谷川哲也がコミカライズに挑んだ。
快作にして怪作である『ナポレオン -獅子の時代-』を生み出した長谷川のことだから、原作とは似ても似つかぬ作品を描くのかと思いきや、この『アイゼンファウスト』のストーリーの骨格は原作に忠実だ。ただし、あくまでも骨格だけ。長谷川はその骨格に大量の筋肉を貼り付け、熱い血を通わせ、肌色には程遠い派手な色を塗りたくっている。エロス&バイオレンスは原作の五割増し。ナンセンスは八割増し。主人公の天四郎と空也、それに影の主人公とでもいうべき鳥居耀蔵のみならず、脇役の服部万蔵や死之介までもが強烈なキャラになっている。
長谷川のブッ飛んだアレンジの一例を挙げよう。悪の剔抉者となることを選んだ天四郎、悪の擁護者となることを選んだ空也――両者が袂を分かつシーン。原作では空也が鎖分銅で天四郎を牽制し、その隙に逃げ去るのだが、『アイゼンファウスト』では二人が風呂場でバトルを繰り広げる。風呂場なので、どちらも裸。湯船で戦いを見守っている鳥居耀蔵も裸。その耀蔵の頭上にはダモクレスの剣さながらに抜き身の刀が何本も吊り下げられている。そして、耀蔵の娘のお兆が『荀子』を暗誦しながら、天四郎に……常軌を逸したシチュエーションだ。それでも原作を冒涜しているような印象は受けない。むしろ、原作者への敬意が作品のそこかしこから感じられる。
冒頭で触れた『忍法創世記』の解説によると、山田風太郎は石川賢の『柳生十兵衛死す』を一読して「うーん、こりゃ、原作よりすごいネ」と述べたという。
山風がまだ生きていたなら、この『アイゼンファウスト』にはどんな感想を抱いただろうか?
「これも原作よりすごいネ」と言うかもしれない。
だけど、その後で「でも、まだ原作に遠慮してるね。もっと弾けてもいいよ、長谷川クン」なんて付け加えたりして。
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