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紙の本
おーい水島、日本へ帰ろう
2009/07/05 10:02
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kumataro - この投稿者のレビュー一覧を見る
ビルマの竪琴 竹山道雄 講談社
名作です。テレビで映画を途切れ途切れに見たことが何度かありますが、「水島、日本に帰ろう」の呼びかけと軍隊の合唱シーン、水島上等兵がラストに廃墟を巡り歩くシーンぐらいしか記憶に残っていません。
部隊による合唱の様子は、先日読んだアンジェラ・アキさんの「拝啓十五の君へ」を思い出しました。本作品の場合の歌は、文部省歌のたぐいになります。埴生(はにゅう)の宿とか、仰げば尊し、荒城の月などです。この本は、小学生高学年向けぐらいです。注釈がたくさん付いていて読みやすい。もしかしたら、いまどきの小学生は、当時の軍隊は、今の自衛隊と同じで、軍人は軍事の専門職だと勘違いをしているかもしれません。当時の軍人は、一般人です。農業や商売、工員さんなどの一般国民が国の命令で強制的に召集されて戦地へ行って戦い、命を落としていったのです。外国からは侵略戦争と非難されますが、組織の下層部にある兵隊たちは領土拡大という目的ではなく、家族を守るためにという義務感を負って出征したのでしょう。作品の趣旨は、平和の希求となっています。
イギリス軍との衝突回避の部分では、お互いを知らないからお互いを殺しあうことができる。英国民謡と日本の歌とにある共通の歌をとおして、お互いを知ることができたので、衝突を避けることができた。つまりお互いの命が失われることはなかった。相互理解の努力をすべきことが教訓となっています。
書中にある軍人らの行動で、化学製品の発達によって、日本人の知恵が不必要とされてきた様子がわかります。リサイクル(再生)、リユース(再利用)、リデュース(ごみの削減)の3Rの必要性についても理解できます。科学の発展によって日本人は、知恵を失い、無気力になりました。
水島上等兵はなぜこれほどまで、みんなに愛されているのか。部隊の隊員だけではなくて、現地人にも愛されています。部隊の隊員にとっては命の恩人であると同時に部隊の明るい雰囲気づくりをしてくれる人です。現地の人たちにとっては、亡くなった人たちを悼(いた)んでくれるお坊さんです。水島上等兵は人に優しい。人に優しく接すれば、逆にまわりの人たちも優しく接してくれることがわかります。
水島上等兵には、潔さ(いさぎよさ)があり、それは、江戸時代以前にいた侍(さむらい)が由来ではないかと思わせてくれます。戦死者を悼むためにビルマを巡る彼の行動は、「悼む人」の主人公坂築静人くんのようでもあります。
後半にある現地での人食い人種のお話は、嘘のような本当の話にも聞こえますし、本当のような嘘の話にも聞こえます。
最後にある日本人とビルマ人を比較した水島くんのお話しはむずかしい。そこにある日本人のきちきちの性格とか性質は、これからも変われないのでしょう。
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