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単純な脳、複雑な「私」 または、自分を使い回しながら進化した脳をめぐる4つの講義 みんなのレビュー

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みんなのレビュー193件

みんなの評価4.5

評価内訳

187 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

ほんとうに面白い本でした

2009/07/05 11:19

7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:hamushi - この投稿者のレビュー一覧を見る

私はこの本を、地元の中学校の空き教室で、二日がかりで読みました。
そこは、普段学校に出てこられない生徒が、期末テストを受けるための会場になっていました。心身にいろいろな事情を抱えて、他の子どもたちと同じように授業を受けることはできなくても、なんとか自分で勉強をしてテストだけは受けておく…そんなイレギュラーな「学校生活」を送る中学生もいるのです。

そんな場所での読書でしたから、子どもたちにとって学校って何なのだろう、学校教育ってどんな意義があるのだろうと、つくづく考えながら、この「講義録」を読むことになりました。

とても残念なことですが、なんらかの理由で規格外の個性を帯びてしまった子供たちは、どうしても「学校」という制度からはみ出してしまい、居場所を見出しにくくなります。

そうした子どもたちにも、「学校」は、分け隔てなく「義務」や「目標」、場合によっては「夢」や「希望」をも提示して、そこに自分を合わせるようにと促してきます。もちろんそこにあるのは、政治的・機械的な強要ばかりではなく、関わってくださっている先生方の個人的かつ人間的な思いも含まれています。生徒たちを思い、その将来を憂いながら何とかして守り育てようとする気持ちは、たしかにあるのだと思います。

けれどもそこにはとても危うい状況が存在することも事実です。

子どもたち、生徒たちが、「自分は何者であり、どんなふうに生きたいのか」ということを自発的に考えるための余地を、そして言葉を発する機会を、「学校」という制度は与えそびれることが多いのです。大人の憂いや、一方的に提示される目標や夢のなかで、自分というものを見つけそこねたまま流されてしまった先に待つものは、足場となるような確固たる自分の気持ちもないまま、絶壁の如き未知の困難に直面するという、とんでもない状況であるかもしれません。とくに、規格外の個性を帯びたために、「学校」という場でプラスの恩恵を受けることの少なかった子どもたちの場合、負の自己イメージという負債まで背負って、そのような困難にぶつかっていく可能性が高くなります。

個性が制度に合わないということを理由に、「学校」が、一方的に負債を与える場であっては困ります。もっと柔軟に、いろいろなタイプの子供たちが、自分というものを考え、つかみ、そして世の中に出会っていく場としての「学校」があれば、どんなに素晴らしいことか。

本書は、その思いに対する答えの一つを示していると思います。

著者は、第一線で活躍するプロの研究者として、自分の研究対象である脳というものの性質について、最先端の研究内容を紹介しながら、高校一年生にも十分に理解できる言葉を使って、実に魅力的に語って聞かせてくれています。さらにはどのように世の中を捉え、考え、興味の対象を見つけ出していくかということを、ワクワクするような気分とともに教えてくれています。

未知のものへのあこがれは、強い学習意欲を生み出すだけではなく、その対象にあこがれる自分というものが、どのような人間であるのかを、深く考えさせる契機ともなります。とくに、「学校」という制度のなかで規格外とされる個性を持ってしまった子供たちにとって、そうした契機は、おそらくは規格外のまま進んでいくであろう、参考文献に乏しい人生を築いていく上で、強力な支えとなるはずです。

"不登校"というラベルのもとに、別室で定期テストを受ける生徒たちの心情を思いながら、このような出会いに「学校」のなかで恵まれたなら、どんなに豊かな中学生活になることだろうと考えずにはいられませんでした。


ところで、本書のあとがきに、おどろくべきことが書かれています。
著者の池谷裕二氏は、一般社会に向けてのこうしたアウトリーチ活動に長けた人として評価されているのだそうですが、そうした活動をすることに対して、次のような強い批判も受けてきているというのです。曰く、


「科学とは難解なもの。もし簡単なものだったら専門家は必要ない。それを一般向けにかみ砕く行為は真実の歪曲。嘘を並べ立てて啓蒙とはおこがましい」

「研究者ならば科学の土俵で社会に貢献すべき。アウトリーチ活動は実のところ社会還元にはなっていない。餅は餅屋。一般書はプロのサイエンスライターに任せるべきだ」

「科学者は誰もがなれるわけではない。選ばれしエリートである。だからこそ税金から多額の研究費が注ぎ込まれている。個人の趣味に時間を費やすのは無責任な造反である」


ため息が出るほどアタマの悪い発想です。

「難解な科学」を研究している「エリート」たちも、生誕直後からエリート科学者だったはずはなく、かつては幼い子どもだったのです。一体彼らはどのようにして、自分の歩むべき道を見つけて育ってきたというのでしょう。

こうした批判の一部は、おそらくはブロの研究者側から出たものでしょうが、このような愚かしいことを言う人間たちですから、所詮ろくな脳の持ち主ではありません。こうした人々に税金から研究費を与えているならば、ムダですから即座に中止すべきです。


これにたいして、著者はこう語ります。


「10代の若者が元気でいてくれると、こちらまで幸せな気分になります。もしかしたら、教育とは、生徒のためではなく、教師が元気をもらうためにあるのかもしれないと、そんなふうにさえ思いました」


出会いというもののすばらしさ、そしてなにより、幼いひとたちを育てるということのダイナミックにな喜びを知っている第一線の研究者を、私は心から信頼したいと思います。

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紙の本

脳はウソをつかない正直者

2011/12/26 00:54

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:JOEL - この投稿者のレビュー一覧を見る

 脳科学研究の最前線の話を母校の高校生たちにしてみせた講義録が本書である。したがって、とても読みやすく分かりやすい。
 第1章は全校生徒へ向けた講演。第2章から4章は、さらなる集中講義を希望した9名の生徒への講義だ。したがって、理系の書物は苦手という人は第1章だけを読むのでも良い。

 しかも、本書のための特設サイトが開設されており、10ほどの関連図版や動画を楽しむことができる。
 紙の書籍では見せられないものを、この特設サイトで体感させてくれるのだ。紙の書籍とウェブとが融合をして、楽しみを広げてくれるのが本書の特色である。
 
 人間の探索活動に関して、残された研究の最後のフロンティアは人間自身にある。それも直接のぞいてみることが困難な脳に。近年は少しずつ測定機器がそろってきたので、それまでの常識を覆す研究結果が出始めている。本書は、それを2009年時点でまとめてみせている。しかも、高校生への講演という平易な方法で。

 まず、科学にまつわる思いこみの否定から始まる。たとえば、科学は因果関係を明らかにすると思われている。しかし、著者によれば、「サイエンス、とくに実験科学が証明できることは、「相関関係」だけだということです。因果関係は絶対的に証明できません」となる(p.25)。解熱剤を飲むと熱が下がるが、そのメカニズムが不明なため、ただ単に相関関係があることしか言えないというのだ。

 そこから脳研究へと話が展開する。主観の問題はサイエンスの土俵では扱うのが難しかったが、脳活動の変化をMRIで画像として取り出すことができるようになったので、多くのことが分かり始めた。
 恋愛をしているときは、テグメンタと呼ばれる部位が活性化する。実は、麻薬などによって快楽を得ているときも、同じ部位が活動する。つまり、恋愛はテグメンタが活性化するという「快楽」であるのだ。だから、”あんな人と付き合うな”と言われても、理性よりも快楽が上回ってしまい、恋は盲目化する。
 こうして、最新の脳科学は、ある程度、脳をのぞいてみることができるところまできた。

 おそろしいのはサブリミナルの効果を脳科学が明らかにした点だ。はたして、視覚で捉えられないほどの短時間の刺激で人は動かされるのかというのは、長く論争の的だった。
 手元のグリップを軽く握るグリップ測定をやってみる。はじめは握力ゼロ。「握れ」という指示の前に、サブリミナル映像で「がんばれ!」と見せる。これはサブリミナルなので、意識上は見えていない。ところが、「がんばれ!」とサブリミナルで表示した後に握らせた方が、何もしないで握らせたよりも、握力が2倍になったというのだ。これは『ネイチャー』というイギリスの科学雑誌に載った研究結果だ。
 そう、サブリミナルの効果が実証されたのだ。意識でとらえていることが人間にとってのすべてではないということになる。意識にはのぼらなくても、人間の行動を左右するものがあるのだ。

 脳と身体の関係も興味深い。ミュラー・リヤー錯視で、実は同じ長さなのに、どうしても一方が、もう一方よりも長く見えてしまう矢印を見た人は多いだろう。視覚的には、そうなるのだ。ところが、この矢印を指でつまんで下さいというと、指はどちらの矢印も、同じ指幅にひろげてつまもうとする。矢印の長さが実際は同じであることを体の方では知っているのだ。「身体は真実を知っている」(p.141)と著者は言う。
 こうなると、脳が身体を操っているとは言えない。逆に、身体が脳の認識を決めている部分があることを、著者はほかの実例をあげながら示す。

 さて、脳科学が明らかにしたことのうち重要なもののひとつに「脳のゆらぎ」がある。「脳回路はゆらいでいるんだ」(p.267)。脳は、外からの刺激を受けて発動するだけではなく、自発的な活動もしている。刺激がなくても、ある程度の幅をもって、自発的に活動しているのが「ゆら」ぎだ。

 ゆらぎは、パフォーマンスにも影響する。著者が例にあげるのは、ゴルフのパッドだ。相当なプロでも、パットが入ったり、入らなかったりする。これは、脳のゆらぎに左右されているからだというのだ。同じ場所、同じ距離、同じパットでも、入るときと入らないときがある。これも論文として発表されていて、「プレイヤーの脳活動を観察していれば、パッドが成功するか失敗するかを予測できる」(p.269)と言う。パットを打つ直前の脳の状態を見れば、成功と失敗が予測できてしまうのだ。MRIではなく、前頭葉のアセチルコリンという神経伝達物質に絞って観察して実証している研究がある(p.278)。「君は30秒後にミスをする」と言える可能性だって、将来的にはあるのだ。

 それにしても、脳の活動の部位を見れば、その人が何を感じているか分かる、行動の成功と失敗が分かるというのは、ちょっとおそろしい気もする。著者は全裸にされるより、脳をのぞかれる方が怖いとまで言う。
 目の前に出されたものが好きかどうか、楽しいと感じているか、うそをついていないか、こうしたことが、脳の特定の部位を見れば、たちどころに分かるのだ。池谷氏の脳科学はしばらく追いかけてみると面白そうだ。一般の人に分かりやすく伝える活動に、力を入れているから理系でなくても読みやすい書物がすでにいくつかある。 

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2009/05/03 19:35

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2009/11/12 22:01

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2009/06/16 09:55

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2010/04/24 23:54

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2009/08/16 12:21

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