紙の本
なぜ難解な本を読むのか
2009/06/19 16:39
13人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オリオン - この投稿者のレビュー一覧を見る
なぜ難解な本を読むのか。「そこに難解な本があるから」というのは、それはそれで一つの答えになる。
私の場合、未読の哲学系難解本が書棚に山のように「寝かせ」られていて、それらの書物が一斉に「いつ読んでくれるのか」と日々恨めしげに背表紙で訴えかけてくるものだから、鬱陶しくてしかたがない。
かといって「書庫」に移動し安楽死させようと企んでも、なにしろ敵は不死性をもった言葉で武装しているのだからそうはいかない。
読まないで読んだことにできる方法はないものか。常々そう思っていたら、この本に「読書の技術の真骨頂は「読まない」ことにあります」と書いてあった。
それは、第5章「さらに高度な本読み」に出てくる。「読まない読書」(手にとり眺める読書)の技術マニュアルも示されている。
まず、目次をしっかり見る。目次の章題・小見出しから(自分にとって)重要な項目を探し出し、その部分をざっと読む。その部分が(自分にとって)意義がある場合、少し周辺を読む。意義がなければ、すぐにやめる。適当にパラパラめくり、指のとまったところを(運にまかせて)読む。以上。
なんだ、結局のところ(少しは)読まないといけないんじゃないか。でも、それは「生涯の一冊」にめぐりあうための婚活のようなものだと思えばいい。
それに、この訓練を意識してしっかり積んでいけば、いずれ本の背表紙を眺めるだけで「この本は自分にとって意義がある(ない)」と直感的に分かるようになるのではないかと思う。
これに続いて「包括読み」の技術が紹介される。
関心があるテーマを中心に書籍を渉猟する。ただし、読書ノートはとらずに読み捨てる。(実は、この「読書ノート」のとりかたが本書の話題の中心をなす。それは第3章(通読)、第4章(詳細読み)で詳細に述べられる。)
ここで肝心なのは、できるだけ多くの書籍を手にとり、目にすること。そのためにこそ「読まない」技術が必要になる。
そして、(読書ノートをとらないかわりに)文献リストを作成する。文献リストは多ければいいというものではない。少なくとも一度は通読するつもりの本に限定する。
そうして、特定のテーマに関する「地図」をつくっていく。(この「地図をつくる」こと、おおまかな全体像を把握することが、難解本を読むためにかかせない準備作業となる。)
最後に、地図(文献リスト)にしたがって系統的に読み進めていく。
この本が素晴らしいのは、こうした方法論、マニュアルをただ示すだけでなく、実際にやってみせていることだ。「読書ノートの記入例」と「代表的難解本ガイド」の二つの付録がそれで、「付録」といいながらほぼ半分くらいの分量があてられている。
とくにデリダ、スピノザ、ウィトゲンシュタイン、ソシュール、フロイト、フーコー、ラカン、ドゥルーズ、ナンシー、ジジェクの十人の難解本を紹介したガイドが素晴らしい。ラカンの『エクリ』の解説など、それだけで単独の「ラカン入門」になっている。
本書を読んで、少し気が楽になり、かなり勇気がわいてきた。そして、(高田氏がラカンについてやってみせたようなかたちで)自分なりの「基本文献リスト」を作成しようと思い立った。(そこでまず、無印良品で新製品のA4版ノート4冊とボールペン3色を買った。形より入れ。)
それにしても、なぜ、そこまでして難解な本を読まなければならないのか。
「わかりやすさ」ばかりが称揚される時代、あるいは「わかったつもり」が横行する世の風潮に流されないため、「わからなさの感覚」をしっかりと身につけることが大切だ。「圧倒的な感動と驚愕の結論」を手にすることができるなら、莫大な時間と労力を費やす価値はあるというものだ。
その他、気の利いた言い方を本書からいくつか拾うことはできるだろう。でもやっぱり、「そこに難解な本があるから」という答えが一番しっくりくる。
(「わからなさの感覚」はレヴィナスの著書をめぐる記述に出てくる言葉。「圧倒的な感動」云々はスピノザの『エチカ』について使われた言葉。本書から拾ったのはそれらの言葉だけで、先に書いたような「なぜ難解な本を読むのか」という文脈で使われたものではない。だから、先の言い方が「気が利いている」かどうかの責は、書評者が負う。)
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09/08/14県立図書館にて借りる。
何日か前に電車で、近くに座っていた人が読んでいた新聞の広告に載っていた。(どこ見てんねん)
09/05/20
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K国屋上位。「多読術」「10倍早く読める」など本を読んで、内面を高めよ的な特集、著作が多いのは、出版不況でのマーケティング的要因ともあると思うが、古典的理論・学問を読み深める、という動きが一般化したことの裏付けでもあるので、その辺の訴求は実施すべき。都内大手などは場所を確保している。
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こういう技術って普通どっかで教わるもんなの?
これ知っとけば人文系のレポートとかでもうちょっといい単位来たかも.
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タイトルの通り、難解な本を読み方についての本だが、一般的な本の読み方としても応用は効くと思う。
ただ、本を普段読んでる人なら、実施せずともわかりきってることが多いような気がした。「難解な本」を読むレベルに全く至らない私にはあまり意味が無かったかもしれない。
(2009/6/16読了)
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読書とは自分以外の誰かが書いた書籍の内容を自分の頭の中に吸収するという作業。
年間5000冊の本を手に取りたい。
図書館は思想の墓場ではない。
学問の基礎となるのは知識の蓄積。
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難解な本っていうのは、だいたい哲学書のようです。
そういう哲学書を、
「登山型」と「ハイキング型」
「閉じた本」と「開いた本」
の二種類四パターンに分類して、読み方を書いておられます。
登山型は、内容が歩いて頂上を目指すように、一歩一歩重ねるような書き方の本。
ハイキング型は、平地を歩くようにすらすら書かれている本。
閉じた本というのは、著者の考えに沿って書かれている本
開いた本というのは、著者の考えがあまりなくて、読み手が自分の考えを構築していくような作業を必要とする本
という感じでしょうか。
医療には、そんな難解な本は無いことに気づかされた良書。
基本的には、マニュアルと知識の吸収だけですからね。。
この本には、ノートの取り方など、その他のスキルも沢山紹介されています。
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世の中には、「難解」な本がたくさんある。
一般に難解だとされている哲学書や、背景知識のない状態で読む専門書など、
その内容を何とか自分にインプットしたいのに、難解で理解が困難な本である。
そういった本は、たとえるならロッククライミングの崖だ。
その崖(=本)によって知の高みに登りたいのだが、どう取りかかってよいか分からない。
前置きが長くなったが、本書はそのような「崖」を登るための道具やノウハウを丁寧に教えてくれる。
あの本も、この本も自分に登れる崖になったとしたら、
どんなにワクワクすることだろう。
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高校時代か大学入学したての頃に読みたかったです。哲学系の本を読む初心者の方には必携となるでしょう。おすすめです。
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難解な哲学書の読み方について書かれた本ですが、読み進め方や読書ノートの取り方など、様々な分野の学術書を読む上でも非常に役立つ内容だと思います。
「閉じている本」と「開いている本」、「登山型の本」と「ハイキング型の本」といった概念のおかげでより理解しやすくなっています。
個人的には「思想」と「科学」の違いの説明がまさに目から鱗でした。
例えばマルクスの思想を利用するためにはマルクスの思想を学ぶ必要があります。
しかしニュートン力学を利用するのに必ずしもニュートンの思想を学ぶ必要はないのです。
身近な例で言うと、アルバイト先の学習塾の生徒たちは直角三角形の辺の長さを求めるのにピタゴラスの定理を使っていますが、彼らはピタゴラスがいつの時代の人でどんな人生を送ったかということはこれっぽっちも知らないわけです。
具体的な実践方法の説明も兼ねた難解本ガイドも大変興味深かったです。現代思想は訳が分からないなと思いました。
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読み助2010年1月22日(金)を参照のこと。
http://yomisuke.tea-nifty.com/yomisuke/2010/01/406-7a90.html
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読み方にも色々ある。
・閉じた本/開いた本
・登山型/ハイキング型
そこまで難解な本を読む予定は今のところないので、流し読み...本1冊読むのに3週間かけたり、読書ノートを1冊辺り1冊作るなんて、とてもできない...
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あくまで「難解な」本の読み方という印象。しかし、読む本の選び方、系統的な読書、「包括読み」は応用が利きそうで、参考になった。
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あまりこういう本を登録する事はないんだけど・・・メモ代わりに。
・本の内容は「開かれた本」(素地を提供して読者の自発的な思考構築を促すもの)、「閉じられた本」(著者が明確な結論を持っており、それを読者に提供するもの)
・本のタイプは「登山型」(始めから理論を一つずつ積み上げていくもの)、「ハイキング型」(周りの景色を楽しみながらその時々の展開に注目するもの)
・読み方は「同化読み」(記述が正しいという前提で著者の意見に賛同しながら読む)、「批判読み」(懐疑的な眼差しでそれぞれの理論を吟味しながら読む)
・・・以上の組み合わせで心構えを変えながら読むが、簡単な登山型もあれば、軍事訓練のようなハイキング型もある。
本のタイプは難易度を示すものではない。
巻末の読書ガイドが役立ちそう。
デリダ、スピノザ、ウィトゲンシュタイン、ソシュール、フロイト、フーコー、ラカン、ドゥルーズ、ナンシー、ジジェク。
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多うくの本を薄く読むのではなく、1つ1つの本をじっくり読む方法が示されている。
難易度「中」の300ページ本を読むのに4(通読)+10(精読)時間かかると著者はしめしている。
p111 通読とは
1.目次を読む
2.その目次で重要なものをざっと読む。
3.さらにそれが重要ならば、その周辺も読む。
4.適当にぱらぱら読み、指の止まった所を読む。
p119・113・115 新刊の9割は署名・著者名がダメで、多くの本を読むため、読まない技術が大切である。
p118入門書に必要な要素
1.参考文献表がある。
2.その表に日本語訳のものがある。
3. 牽引がついいている。
4.300ページ未満。
p22
「登山型」・・概念を理解しなければ先へは進めない。
「ハイキング型」・・次々に新しい理論が出てくる。内容を理解しなくても先へ進める
p26
「同化読み」・・その本の内容をその著者に合わせて読む。
「批評読み」・・その本の内容を批判的に読む。
p116
「包括読み」・・1つのテーマをいろいろな分野から読む。