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紙の本
内容紹介
2009/05/27 18:18
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:作品社 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「銭形平次」の生みの親・野村胡堂による、入手困難の幻想譚・伝奇小説を一挙集成。事件、陰謀、推理、怪奇、妖異、活劇恋愛……昭和日本を代表するエンタテインメント文芸の精髄。【限定1000部、新字・新かな】
【内容目次】
「奇談クラブ」 第四の場合/左京の恋/鍵/枕の妖異/代作恋文/夢幻の恋/観音様の頬/音盤の詭計/大名の倅/暴君の死/運命の釦(ボタン)/乞食志願/食魔/第四次元の恋/お竹大日如来/結婚ラプソディ/白髪の恋
「伝奇小説」 禁断の死針/百唇の譜/裸身の女仙/黄金を浴びる女/礫心中/芳年写生帖/大江戸黄金狂/天保の飛行術/江戸の火術/十字架(クルス)観音/猟色の果/幻術天魔太郎
編者解説
【著者・編者略歴】
野村胡堂(のむら・こどう)1882~1963年。小説家・音楽評論家。岩手県生まれ。『銭形平次捕物控』の作者として知られる。盛岡中学校時代に金田一京助、石川啄木と知り合う。東京帝国大学法科大学中退後、『報知新聞』政治部記者に。社会部夕刊主任、社会部長、調査部長兼学芸部長、編集局相談役を歴任。1931~57年までに『銭形平次捕物控』シリーズ、長・短篇あわせ383篇を著わす。音楽評論家「あらえびす」としても活躍。
末國善己(すえくに・よしみ)1968-。文芸評論家。編書に『国枝史郎探偵小説全集』、『国枝史郎歴史小説傑作選』、『国枝史郎伝奇短篇小説集成(全二巻)』、『国枝史郎伝奇浪漫小説集成』、『野村胡堂探偵小説全集』、『山本周五郎探偵小説全集(全六巻+別巻一)』、『探偵奇譚 呉田博士【完全版】』(以上作品社)など。
紙の本
読み終えた時、左手がプルプルと…。知識、感動、おまけに筋力までつく充実の600ページ。
2010/10/12 23:09
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:はりゅうみぃ - この投稿者のレビュー一覧を見る
時代小説や伝奇物に詳しい選者・末國善己氏によって丁寧に集成された、野村胡堂の幻想伝奇傑作短編集。
「銭形平次捕物帖」で有名な人情時代小説の大家が、いったいどんな伝奇ものを?と興味を引かれたのがこの本を選んだそもそもの動機だが、知らなかった…。こういった作品の方がルーツでいらっしゃったのだった。
クラシカルでどこか懐かしい響きの綺麗な日本語で語られる、妖しく儚い世界。そこはかとなく淫靡な空気さえ漂わせた短編奇譚の数々に、しばし現実を忘れて読み入ってしまう。
サスペンスからラブコメまで、こんなに守備範囲広かったのか!と驚く「奇談クラブ」、
月岡芳年(芳年写生帖)や浮田幸吉(天保の飛行術)も、この方が描けば、こんなに哀しく愛に満ちた抒情小説となるのね、と感に入ったり恐れ入ったりの「伝記小説」
ドイルの原書を中学時代に既に読んでいたという作者が、生涯書き続けた綺譚・奇談・ジュブナイルの数々は、どれもドイルへのリスペクトにあふれている。あの「銭形平次」すらここから派生した1作品にすぎなかったのかもと穿ってしまう、気合の入った集大成だ。
これほど貴重な作品群(入手困難作の割合高し)を集成・編集された選者の方には、よくこれだけ集めて下さったとただもう頭を下げるのみである。
収録されている全話に(これもすごい)、選者様の巻末解説がついているが、こちらをを読んでから改めて本編を読み返すと、時に悲劇が喜劇にひっくりかえるぐらい目ウロコが落ちちゃうのがこれまた感動的だ。たまに珍解説もなくはないが(おいおい)、そこもまた娯楽小説らしくていい。
ホームズ以外の作品があまり注目されなかったドイルのように、「平次」以外の作品があまり著名ではない野村氏。
そこを高橋克彦氏は嘆いていらしたが、もしかしたら野村氏は、尊敬するドイルと同列で語られることをむしろ喜んでいらっしゃるかもしれない。
2段組でおよそ600ページ。
空いた時間に少しづつ読み進めて、贅沢な時間を過ごす。そういう類の本だと思う。
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