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みんなのレビュー95件

みんなの評価3.8

評価内訳

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紙の本

スキャンダル一つでその人間を切り捨てて省みないのは、なにも日本人の専売特許ではないんですが、でも、自分の価値基準を持たずにマスコミの報道をうのみにしてししまうことが多いのも事実。英雄が泥にまみれるのがお好き?

2009/11/05 22:41

6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

なんだか目隠しされて歩いているような感じでした。話が全く見えてこないんです。平野の文章があるい、なんていうことはありません。全体の漢字比率だって今までの彼の作品ほど高くはない。文章にしても美文というよりはやや硬質ではあるものの、特別なものではありません。

にもかかわらず、薄いベールの包まれたようで何が核にあるのか一向にわかりません。それに輪をかけるのが登場人物たちの名前です。海外の小説を読んでいて一番悩むのが、どの名前も同じに見えてしまい、人間関係がつかめないこと。落ち着いて読めば登場人物は決して多くないのですからなんとかなりそうなのに。

そういう意味でアメリカを舞台にしたことが足を引っ張っているとは思います。大統領選挙にしても、かの国の武力介入にしても、有人火星探検にしても日本人にすれば所詮は他人事。そんな思いがあるせいでしょうか、状況理解に今ひとつ身が入りません。だからあと100頁で読み終わる、そんなころになって漸く全体の姿が朧げにみえてくるありさまです。

繰り返しますが、文章は平易なほうでしょう。ただし、リズム感はありません。会話はそれなりに多いのに、流れていかない。お話自体もそうナンですが、会話の殆どは一方通行で、ぶつ切り状態です。読む快感は失われますが、代わって現代人の多くが置かれている曖昧で孤立的な状況はよく伝わります。これを純文学的と評する人もいるかもしれませんが内容的にはエンタメ。領域を越えたというよりは、境界線上で戸惑う小説、といったほうがいいかもしれません。

本の作りにしても、平野作品にしては珍しい軽装本で、広川泰士の写真のせいでしょう、ちょっと見には太平洋にある島の旅行記か写真集といった印象を与えます。著者名も小さめで、平野ファンでなかったら誰も小説とは思わず、間違って手にした人は開いた頁に活字しかない状態に驚いてしまう、そんな気がします。そんな装幀は、古平正義。

物語の主な舞台となるのは2033年のアメリカですが、話の中心にいるのが佐野明日人なので、日本もほんの少し登場します。2033年という近未来を舞台にしたのは、基本的にこの話がSFではないからです。ただし、話の設定に有人火星探査の成功、ARという遺伝子を利用したホログラム技術(?)、《散影》という監視カメラシステムは不可欠で、それが時代を決めたと思います。

《散影》から私は伊坂幸太郎の『ゴールデンスランバー』を思い出します。あれも2030年頃が舞台でしたし、カメラによる社会の監視化がテーマの一つでした。国民の合意による監視社会化ついては東浩紀『情報環境論』に詳しいのでそちらを読んでもらいたいのですが、『ドーン』と『ゴールデンスランバー』にはもう一つの繋がりがあります。それが選挙であり、マスコミです。

これについては、平野啓一郎が2009年に出した『小説の読み方  感想が語れる着眼点』で、伊坂の『ゴールデンスランバー』を取り上げ、かなり詳しく書いていることに留意しておくべきでしょう。当然のことながら、そのためには書かれた以上に深く読み込んでいるはずなので、それが影響した、とはいいませんが、意識の上にはあったのではないでしょうか。

描く時代が同じであれば、取り巻く状況も似てくるというのは不思議でもなんでもありません。私としては共時性ということで二作のあり方をみています。監視カメラシステム、選挙、マスコミ、ネットといった共通点はあるものの、読んだ印象は随分異なります。

文体的には、伊坂のほうに面白味があります。内容もですが、伊坂の作品は娯楽性が強く視点はシニカルで行間からはユーモアが滲み出てきます。ラストにしても、やったね、と快哉をあげさせるものでしょう。その点、平野の文章は、今までの装飾過多というか豊饒なそれを捨て、クールで硬質、どちらかといえばメカニカルな印象を与えますし、結末も音が徐々に消えていく、そういった静けさに満ちたものです。

ただし、この話のラストから、これを愛の再生の物語、と断じるには随分無理がある、私はそう思います。主人公が佐野明日人かというと、それも疑問です。明日人が抱える苦悩が、彼の性格というか火星探査行で得た病状故かはともかく、あまりに内向的で社会性がなく読者の共感を招かないため、印象が弱いのです。妻である今日子も明日人の影でしかありません。

それに対し、圧倒的な存在感を示すのは同じ有人火星探査船《ドーン DAWN》のクルーで、現在行われている大統領選挙で共和党の副大統領候補となっているコロラド州知事アーサー・レインの娘リリアン・レインです。彼女は、その美貌と探査からの帰還で一気に人気者になりますが、それゆえにネット上でバッシングにあい、身を隠すことになります。

彼女の宇宙での行状、以前勤務していた会社の問題、両親との関係、さらにいえば明日人との醜聞などの事柄のなかで苦悩し選択をする。アストーが周囲のことを考えることができず、常に内にこもって自分のことしか見ようとしないのに対し、リリアンはあきらかに社会的存在である自分を常に意識し、そのなかで成長していきます。

出版社のHPには
           *
愛はやり直せる
2033年、人類で初めて火星に降り立った宇宙飛行士・佐野明日人。しかし、宇宙船「DAWN(ドーン)」の中ではある事件が起きていた。世界的英雄となった明日人を巻き込む人類史を揺るがす秘密とは?
講談社創業100周年記念出版
           *

とありますが、どうも話の中心にあるのはアメリカの世界戦略のあり方であり、それを決定付ける大統領選挙ではないかと思います。軍需産業に寄りかかるかの国の経済のあり方、それを支えるために行なわれる派兵、そして海外で死亡する兵士の大半を貧困層出身者が占めるという現実、そして軍事の民間委託のもつ問題、どれをとっても世界の行方を左右する事柄です。

それに対して、明日人、今日子の間にあるのはあくまで結婚生活の問題でしかありません。無論、我が国の伝統である私小説的観点からは、佐野明日人の苦悩こそが物語りの中心でしょうが、やはり世界の動きを左右するリリアンの前には、卑小としかいいようがありません。

もしかすると、平野は暗に何故日本人が世界的にみて外交オンチであり、政治的に二流国家の域を出ないのか、それをアストーとリリアンを描くことで炙り出したかったのかもしれません。是非、読んで確認してみてください。これは2033年ではなく、まさに2009年の世界のお話です。

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