紙の本
一級品の戦争報道
2009/09/19 09:52
6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:K. ANDO - この投稿者のレビュー一覧を見る
1998年以降のアフガニスタン及びイラクにおけるニューヨーク・タイムズ紙記者の従軍経験が21章にわたって記されています。
アフガニスタンやイラクに関する書籍は、ジョージ・W・ブッシュ前米国政権の対イラク政策の非難に終始しがちですが、この本は、政治的な主張が前面に出ることなく、戦争を報じる記者の経験(その多くは新聞に掲載されることのないもの)が記されています。
一つ一つのエピソードは独立しており、全体としてまとまった物語にはなってはいませんが、まるで海水の一滴に大洋の味が集約されているように、記者個人の戦争従軍記者経験が鋭い洞察とともに記述されていて、戦争全体について読者の思考を誘います。最高級の戦争報道の一つだと思います。
有沢氏による翻訳はこなれており、巻末の柳澤NHK解説委員の解説も秀逸です。可能ならジョージ・パッカーの『イラク戦争のアメリカ』(みすず書房)と併読すると、イラク戦争の理解がより立体的になって、おすすめです。
投稿元:
レビューを見る
【どこで?】
新聞の書評を見て。図書館で。
【なぜ読み始めたか?】
アメリカが進めてきたテロとの戦いの現場を、現地で取材しているジャーナイスとの視点から見ると、どう見えるのか・・・
【どんな内容?】
● アフガニスタンとイラクから、アメリカの進めてきたテロとの戦いが生々しく記述されている。
● 死と隣り合わせの状況や、戦争によって人間性までも破壊されてしまったかのような社会の様子が、現地で自分の目で取材をしなければ書けないと思われる迫力で描写されている。フィクションをはるかに凌駕していると思う。
● 現地で生きる人の視点からも、戦いを仕掛けたアメリカ軍側の視点からも、両方の視点から中立に書かれているように読める。
【感想は?】
● ぜひ読むべき本。世界の中には、このような現実もあるのだとういことを知ることができる優れた内容。
● このような状況のアフガンやイラクに、「民生支援」といって生半可に入っていくことが正しいことなのかどうか・・・日本の支援のあり方についても考えさせられた。
投稿元:
レビューを見る
先ずは読みやすい文体である。
イラクやアフガニスタンに展開する米軍(陸軍、海兵隊)に従軍した記者としての記録だ。映画の戦闘シーンの連続のような記述ではなく、淡々粛々と戦場となった日常を切り取っているような感じか。
日常と非日常、正気と狂気、アラブの習慣とアメリカとの距離など、生死を分ける狭間に身を置く現地住人の姿を分かり易く伝えている。迫撃砲や自動車爆弾の爆音を聞きながら、宗教対立やアルカイダに怯えながら暮らすイラクの人々の姿がある。
この本の結末まで読んで希望は無い。
有るのはタイトルの示すとおり、諦めだ。
投稿元:
レビューを見る
戦争を上から見下ろすのではなく、また見上げるという訳でもない。そこにいる廃墟の市井の人々特に子どもたち、テロリスト、したたかなリーダー、アメリカの少年兵、取材に協力してくれる友人など、エピソードも交えて丁寧に描写された紙面の中から、たち表れてくるやりきれなさ。全ての人がうんざりしているこの戦争を、どうして止めることが出来ないのか!
この本のタイトルが全てだ。
投稿元:
レビューを見る
アフガニスタンや9.11後のイラク.内戦の様を呈し誘拐や殺人が日常的に起きている.米兵の任務も命がけである.著者もまた命がけの取材を行っていところがすごいと思う.戦争のいろいろな当事者へのインタビューも読み応えがある.必ずしもアメリカの政策の批判に終わらず事実を迫力ある描写で伝えているところが良い.
投稿元:
レビューを見る
ニューヨークタイムズ紙の記者が2001年のアフガン、2003年から2006年のイラクで取材した内容を記したもの。
シリア・イラク地域で武装した自衛隊が何かポジティブなことが出来るというのはかなり飛躍した思い込みなんじゃないか、ということを確認させられた。
それから、最近はもっぱらあさイチのコメンテーターとしてテレビに出ている柳澤秀夫氏が巻末の解説を書いているのだが、それが鋭い。この人が湾岸戦争などの取材を手がけた記者だったことは知っていたけど、こんなことを書く人だったのか…。