紙の本
新しい幸福の形が見えれば、新しい消費の形が見えてくる
2010/11/11 19:41
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:MtVictory - この投稿者のレビュー一覧を見る
「物質的豊かさと幸福は結び付かない」と頭では分かっていながら、私たちが「物質的豊かさから逃れられない」理由を本書では探っている。その上で、「物質的豊かさを超えた幸福の形があり得るのか、あるとしたら、どういうものか」に迫っている。消費低迷、市場の飽和に直面するビジネスパーソンには発想の転換を求められる時代だ。本書はそんな時代を読むためのヒントになるだろう。
今、求められているのは幸福をもたらす画期的な商品を開発することではなく、そのモデルの延長上で考えても解は出ない、と著者はいう。そうではなく、「新しい幸せの形を検討」すべきだという。「それを明らかにすれば、おのずと新しい消費の形が見えてくる」とし、本書では従来の消費社会と幸福観を振り返った上で、新たな幸福観を解き明かそうとしている。
商品を買うことではない幸福のあり方のモデル。その鍵は「つながり」と時間だという。そしてそれを満たす新しい幸福の物語(ストーリー)を仮説として3つ挙げている。それは自分を極める物語、社会貢献の物語、人間関係の物語。第3章から5章ではそれらの物語において得られる幸福とはどういうものか、そこではどのような消費が行なわれるのかについて述べている。
第6章では究極の消費は「仕事」だとユニークな見方をしていて興味深い。仕事は先の3つの物語の全てを包含する活動なのだ。「仕事が幸福の原動力」となる。人生で最も長い時間を過ごす「仕事」を通じて得られる幸福感が大切だというのは理解できるだろう。仕事を軸に見れば、そこにまつわる新たな消費(製品、サービス)の形も見えてくる。今の雇用状況を改善し、ワークライフバランスを確保できる社会づくりが求められる。それが仕事における幸せの増大につながる。「豊かな社会とは、仕事の質・内容が豊かな社会」というのには同感だ。自らの仕事の取り組み方で仕事の質を豊かにしていくことも必要だろう。
また今後は、「幸福だから消費する」という方向に向かうとして、従来のような幸福を得るための消費を否定する。終章では成熟社会の日本では「つながりを作り出すための消費」が大きくなり、それをサポートする産業がこれからの経済をリードすると結論付けている。
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切り口は面白い。自分自身の消費行動は本書の分析に結構当てはまっていると思う。幸福についてはマズローやバウマンの分析が有名であるが、現実の生活や活動に活かしていくことはなかなか難しい面があると思う。だけど、成熟した社会の中では「物質的豊かさ=幸福」という図式が成り立たないので、幸福というものの中身に深く切り込んでいくことが企業にも必要になってきているんだろうな。そういえばフランスのサルコジ大統領は国の状態を図る尺度として経済指標以外の指標を検討しているようだし、世の中の尺度は徐々に変わっていくのでしょう。
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想像以上でした。いまの世の中の価値観を、完全に解明してしまっている。
「裁量の自由」「承認」「自尊心」「手ごたえ実感」「時間密度」。
このキーワードで、怖いくらいに説明がついてしまう。
僕らはものを買って幸せになるのではない。幸福それ自身を買う世の中になってきたんだ。
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モノが売れない時代、どんなサービス・商品が求められているのかを「幸せ」という観点から考察しています。『希望格差社会』『パラサイト・シングルの時代』などの著書で知られる山田昌弘氏と電通のコラボ、ここ最近読んだビジネス書では、一番役に立ちそうです。ちなみにこの本は、山田氏の出身校である中央大学生協の書店で購入しました。ビジネスの行き詰まりを感じている方にお勧めです。
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● これらのおみやげは、友人たちと話をし、ネタを提供するための道具として役立ってくれます。つまり、消費が人間関係を育むための道具となっているのです。
● こうしてみると、コミュニケーション能力とは、相手が何を喜ぶのかを知っている能力だということがわかります。
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幸福の方程式 (ディスカヴァー携書)
著者: 山田 昌弘 / 電通チームハピネス / ディスカヴァー・トゥエンティワン / 新書 / 2009-09-09
http://booklog.jp/users/jwtdream/archives/4887597363
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松原隆一郎先生が日経新聞で書評を書かれていたので読んでみました。
消費=幸福とは言えなくなった今、人々にとって「幸福」とはなにか、「消費」はなにによってもたらされるかということが書かれていました。
納得できた部分と「うーん…」っていう部分が半々くらいだったかなという印象。
幸福の方は比較的共感できたけど、そこから消費への結び付け方が…。。
冒頭の山田さんの文章は実に社会学的で読みにくいですが(笑)、チームハピネスの文章はとっても読みやすいのでご安心を!
本筋とは直接関係ないけど、初めて知った素敵な話をメモ。
「ブータンは、GDPに対抗して以前からGNH(Gross National Happiness)=国民総幸福量を国の政策目標として掲げ、2009年、ブータンの憲法の条文に入れようという動きもあります。」
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仕事のヒントを求めて購入。
自分なりの幸福論、プライベートの視点とビジネスの視点
ぶれてはいけない。
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(2009/11/20読了)コミケに全力投球!な人種(何かに「深くはまれる」人種)は幸福度が高いそうです(笑) 「はまる」のには天賦の才能が必要なんだそうな・・・(私は残念ながらその才能だけはバッチリ持って生まれてきましたよ)それにしても、『ワンピースのサンジとゾロの恋愛系のブースが(P134)』とか細かすぎです(汗)そこまで詳説せんでよろしい・・・
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<前段>
幸福は本来、追求するものではなくて、何かほかの目標を達成する事によって、あるいはそのプロセスで意図せずに気付かされ、結果として感じるものでした。でも、今、「幸福になりたい」、「どうすれば幸福になれるか」と幸福を直接追求する人が増えているのです。
<本書が定義する幸福について>
◆幸福のペンタゴンモデル
・時間密度・・・夢中になる、没頭する。機会費用に動じず、現状の行動に迷いが無い
・自尊心・・・自分に誇りを持ち、他人を喜ばせる心のゆとりがある。自分の発言や行動に意味を感じる
・手ごたえ実感・・・課題の解決に達成感がある。課題にやりがいを感じている
・承認・・・他人から評価され、他人に対して影響力をもてる。組織や仲間の中に、自分の「居場所」がある
・裁量の自由・・・好きなことを好きなときにできる自由がある。「内発的な動機」がある
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他人から自分が承認され、最終的には自分が社会から承認されて自分も社会を承認する、相互承認の状況になったとき、社会の中に自分の居場所があるように感じられるでしょう。
「裁量の自由」があり、しかも作業が楽しくて「時間密度」が高ければ、仕事は消費と同じ形となり、幸福につながる行動になる。しかも、楽しんだうえに評価され(「承認」)、熟練して徐々にうまくなっていくことができ(「手ごたえ実感」)、給料までもらえる(「自尊心」)ので、幸福として、申し分ないわけです。
<個人的感想>
ということで、つまるところは、仕事から幸福が得られたら、最高に幸せなんだろうなぁ。
「ワークライフ=ライフワーク」
原尻さんのこないだ言ってたことだ。
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みなさんもご存知「パラサイトシングル」や「婚活」など
現代人の人間関係を社会学的に読み解いている山田昌弘さんが
電通の社内横断的組織である「チームハピネス」と一緒にまとめあげた本です。
人々の幸福のあり方が変わって来たということは
消費のカタチ自体が変化しているということであり
私たちもそんな時代の変化を理解しておくために参考になるかと思います。
「物質的豊かさ=幸福ではない」
今までは、家庭を築き、家族の幸福のために
モノを所有すること自体が幸福でした…
ところが、今は個人の幸福を求める傾向が強く、
モノを所有する先にある幸福を得るための手段として消費する
というスタイルに変わってきているのです。
そんな商品を買うことに代わる新しい幸福の物語を
3つの視点で、この本の中では整理されています。
1:「自分を極める物語」
①自分の強い衝動を満たすための「はまる」消費
②豊かさを実現するための「手ごたえ」消費
2:「社会に貢献する物語」
③社会がサステナブルであるように循環する気持ちよさを満たしてくれる
「ギルティ・フリー」な消費
④生活に循環する要素を持ち込む「サステナブル」な消費
3:「人間関係のなかにある物語」
⑤つながりを強めるための「与える」消費
この新しい消費スタイルが見ていくと
「なるほど…」と思う現象が実際に色々とあります。
たとえば…
①商品の差異の「揺れ」がポイントとなっている「オタク消費」
②育てる手ごたえを消費する=「家庭菜園」
③社会・企業・消費者みんなにとってWinWinの関係になる「バイブリッドカー」
④今の社会を維持するために必要な「リサイクル」
⑤「つながり」を消費する「ボランティア旅行」
など。
この時期、年末恒例のヒット商品ランキングが発表されていますが
近年、このランキングにも変化が生じていると言われています。
今までのランキングでは、誰が見ても「なるほど!」という商品でしたが
最近は、あまり見聞きしたことのない商品もちらほら…。
それは、自分の得たい幸福の物語があって、
その商品は直接は与えてくれないが、
幸福を得るのに役立ちそうな道具として購入する
という「道具消費」だそうです。
このように、私たちが日頃、注目しているトレンド情報の背景には
微妙な消費者心理や行動の変化が生じているのですね。
単に「○○が流行っている」という現象だけではなく、
その背景にある本質を「なぜ…なぜ…なぜ…」と
探っていくことが大切だと思います。
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これからの流行を知る参考になる本。
幸福って何だろう?
時代とともに変わる幸福の定義。その流れをみると、これからが見える。
これからの生き方を見直したり、これからのマーケティングを考える上で、とても参考になった。
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仕事で急遽、これからの日本社会における「幸せ」研究をすることになって、今年出た、山田昌弘氏&電通チームハピネス著「幸福の方程式」を読了したのだが、これがなかなか面白い。消費なき幸せ探求の時代に、ブランドはどうあるべきかについて考えさせれられた。示唆に富む記述を引用しておく。
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新しい「幸せの物語」は、モノを買うことによってモノの向こう側にある幸福を手に入れるのではなくて、幸福そのものを直接得る、という回路だ。そのとき消費は、幸福のストーリーに必要な商品を買うことではなく、幸福のストーリーをサポートするためのものとなる。
「○○したい(車に乗りたい)人」はかつての物語に乗って、消費に喜びを見出せる人。「○○できれば(車に乗れれば)いい人」はもはやその物語を失って、従来の消費生活から離れようとしている人です。この両者の差、心の温度を引いた差が、社会で失われた消費の喜び(=幸福感)ではないでしょうか。
ダニエル・カーネマン教授によると、幸福にはフローの幸福とストックの幸福がある。前者は、自分に好ましい刺激を受けたときに刹那的に感じる幸福。後者は、一定の期間安定している幸福感。多くの思想家が説いていることを要約すると、フローの幸福よりもストックの幸福を重視せよということになる。
ストックの幸福に注目すると、幸福感は、今まで生きてきた人生の時間の中で、あるいは1日24時間の中で、夢中になれる時間がどれだけあったかという割合によって決まると考えられます。「幸福の濃さ」という感覚でとらえた幸福を解く鍵を、「時間密度」と名づけてみました。
マーケティングには、「ラダリング」という(商品ニーズ~価値観に梯子登りする)分析の手法がある。しかし最近は、この手法では扱いにくい商品、それほど欲しくないけど買わざるを得ない、はしごが上に伸びていかない商品が増えている。つまりはしご登りではなく、はしご下りになりつつあるのだ。
オバマ大統領の選挙活動は、著名アーティストや俳優が自主参加したが、その理由は「自分たちがアーティストとしてやりたかったことを、彼が政治でやっていたからだ」と答えている。つまり、社会に人々の連帯を作り、社会をよい方向に変えていくという同じ目標を持っていたからだ、といっている。
今日の幸福につながる消費の2つ目の物語は、「社会に貢献する物語」だ。それは、社会や自分の生活にサステナブルな視点を持ち込み、「自分が生活すればするほど社会が良くなっていく」という実感を楽しめる、ギルティ・フリーな生き方を意味する。
わたしたちはまだ、人口が減少し始めていることのインパクトも充分に理解していない。2020年頃になると、年間で70万人も人口が減少、つまり毎年、島根県と同じ程度の人口が減っていく時代が確実にくるというのに。
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[ 内容 ]
実際、戦後の高度経済成長期からバブル崩壊まで、私たちの幸福とは、「物質的豊かさと幸福は関係ない」と頭ではわかりつつも、モノを買い続けることであった。
しかし、社会の成熟と経済不安の両面から、今ようやく「物質的豊かさ」を超える幸福の物語の兆しが見えている。
新しい幸福をもたらす消費行動が始まっている。
わたしたちが、幸福のために、モノに代わって求めているものとは!?
[ 目次 ]
第1章 戦後消費モデルの変化と幸福の物語(物質的豊かさと幸福との関係;消費社会の「物語」、二つの段階;消費不安の時代;脱・消費社会の幸福)
第2章 幸福が見えれば消費が見える(なぜ今、幸福ブームなのか;幸福を解く鍵は何か?;幸福のペンダゴン・モデルの考え方;消費の物語に代わる新しい幸福の物語)
第3章 「自分を極める物語」の幸福と消費(「揺れ」が消費を創造する;手ごたえ消費;新しい萌芽)
第4章 「社会に貢献する物語」の幸福と消費
第5章 「人間関係のなかにある物語」の幸福と消費
第6章 究極の消費としての仕事
終章 つながりと幸福の弁証法的関係
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
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☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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2010.07 とても良くできた本。消費が幸福を生まなくなった現在において、幸福を解く鍵は、絆、つながり、コミュニティー。消費が幸福を生む時代から、幸福が消費を生む時代へ。