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倒壊する巨塔。ずっと読みたかった本だが、近所の図書館で発見。同時多発テロがどのように計画されて、どのように実行されたのか?・・・が書かれているのかと思っていたが、書かれていたのはイスラム原理主義(過激派?)の歴史みたいな内容と、テロを受けた方のアメリカ側も、役所の縄張り争いばっかりで、まったく役立たずだったよ・・・といいう内容。
下巻では、アルカイダがアメリカを標的にしたテロを始めますが、同時多発テロについては、期待していたほど詳しく書かれていません。「よっく考えれば、FBIとかCIAとかも、やばいなーってのは事前にわかったはずだよね?」ってことが若干強めに書かれていたような気がします。
しかし、イスラム過激派ってのは、こんなにいきあたりばったりなんですかね?
あるいみ滑稽なくらい・・・馬鹿げてるなぁと思ってしまうのは、宗教性の薄い裕福な国で、のほほーんと暮らしているからでしょうかね。
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9.11に至るまでのアルカイダを含むイスラム過激派とCIA、FBIの軌跡を追ったノンフィクション。上巻は、サウジ王家やアフガン戦争のジハードについて詳しく書かれています。
いわゆるイスラム過激派と呼ばれるグループのメンバーの、死を恐れないどころか、殉教による死こそを望む思想を持つに至るイスラム社会の背景が抑制が効いた筆致で丹念に描かれています。もちろんイスラムの教義を信じるロジックについても、著者は共感や理解を示しているわけではないですが、ひとつの世界観として決して否定的でなく描かれています。
ビンラディンについても、その家族や失敗への対応も含めて、その人物像に焦点を当てて描写していて非常に興味深いです。読み応えありです。
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9.11アメリカ同時多発テロを終着点として、単に9.11までの過程を取り上げているだけでなく、テロリズムが生まれる社会背景、テロ組織の成立過程まで書かれている。
長所→非常に細かい取材で、TVを見ているだけでは、決して触れることのない、イスラム世界の情勢が書かれていて非常に、勉強になった。
短所→こういう問題にまったく興味をもてない人が、「なんとなく本屋で手にとって読んでみた。」という感じで読んでも楽しめないかも。(でも結構売れた・・・)
読後の変化→非常に抑圧されたイスラム世界の若者のエネルギーのはけ口として、ただそこにテロがあっただけ。というのが読んだあとの私のテロ組織に関する感想です。
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⇒ http://thomas-aquinas.cocolog-nifty.com/blog/2009/10/200910-f127.html
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9.11同時多発テロに至るまでを、イスラム原理主義側からと、CIA,FBIのアメリカ側からの両側から書いた本。著者の膨大なインタビューを元に、事細かに書かれていて、主観は挟まれていない。イスラム過激派を批判しているわけでもない。
上巻では主にイスラム原理主義が生まれた背景と経過が述べられている。イスラム原理主義の発端となったクトゥブはアメリカで人種差別、性の解放などの誘惑を目の当たりにし、アメリカへの敵意を募らせた。敬虔なイスラム教徒で、厳戒な戒律主義をとっていた彼には西洋の近代化は悪に見えたのだ。その感情は増していき、西洋の完全拒絶、さらにはイスラムか、ジャーヒリーヤか・・・要するにイスラム教が支配するか、完全に滅ぶかの二者択一を唱えた。彼は殺されるのだが、彼が最後に書いた本が後々の若者に受け継がれることになる。
ザワヒリは名門の家系。幼少の頃より伯父からクトゥブの話を聞かされる。地下組織を作りそこで厳戒なイスラム教を信仰する。エジプトの刑務所で拷問を受け、抑圧的なエジプト政権と、さらには西洋に対しても復讐心を抱くことになる。
そして有名かもしれないが、ビンラディン。彼は伝説的な企業家の元に生まれる。彼もまた敬虔なイスラムである。殉教の概念も彼の周辺で発生した。後に9.11のテロを計画することになる。そのきっかけは自国に居座るアメリカ軍への嫌悪だった。
歴史に「もし・・・だったらどうなっていた」はないわけだが、これを読んでいると思わずそういう考えが頭をよぎる。ただこの9.11同時多発テロは首謀者がビンラディンでなければ起きていなかったのかも。それだけ彼がどれだけカリスマ性を持ち、アメリカに対して執念を燃やしていたかが読み取れる。ただクトゥブもザワヒリもビンラディンに共通している点は、敬虔なイスラム教徒であるということだ。ビンラディンも、プライベートでは子供と遊んだり温和な一面が書かれている。「神」の解釈の数だけ宗教があるのかもしれないが、9.11は本当に起きなければならなかったのだろうか。一読して、なにかもの悲しさを感じてしまった。
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イスラム原理主義の種はWWI後半のイギリスの三枚舌外交によって播かれました。そしてWWII集結後に芽を出して育っていき、やがて9.11に収斂していく…。その様子がありありと描かれたドキュメントです。
歴史とは原因があり結果があるわけですが、そこに至る過程は、様々な要因が絡み合って生成されていくものだということが本書を読むとよくわかります。
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9.11、それは多くの人の人生を、人生観を変えることになった。
ブッシュ政権下で“悪”とされ、一躍世界中を震撼させたたアルカーイダ。
本書ではウサマ・ビンラーディンを始めとしたアルカーイダの原動力となった人物たちの生い立ち、思想形成の過程を、著者自身の豊富なインタビューから追想する。
それは多く、凝り固まった思想を爆発させる捌け口をみつける過程であった。
各章がおおよそ一人の来歴でまとめられており、また、翻訳書にありがちな、人物が入り乱れるという状態も巻末の人物索引で解消される。そのため非常に読みやすい構成である。
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911までの歴史の積み重ねが基本的には時系列に沿って丹念に描かれています。訳文も読みやすく、面白い内容です。
基本そんな悪人が登場してくるわけではないのに、最終的にはああいう結果になっちゃうのが理不尽。下巻も楽しみ。
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アルカイダという怪物はいかにして生まれたのか。それは少なからずアメリカ自身がもたらした影でもあったということがわかる。
ビンラディンというと、得体の知れない謎多き人物という印象を多くの人が持っていると思う。だが、本書には家族関係や思想的影響の前後関係が詳細に記述されており、その性格がどのようなものであったか断片的であるにせよ掴むことができるという点で貴重な資料である。無論、本当のところでなぜ彼がそうしなければならなかったのかは永遠に理解できないであろうし、理解すべきことであるとも思わない。
さて、ウサマ・ビンラディンの父ムハンマド・ビンラディンは、一代で財をなしコングロマリッド企業を築いたやり手の実業家であった。つまり、ウサマは俗っぽい言い方をすれば、お坊ちゃんだったわけだ。あえてこのまま俗っぽい解釈を与えるなら、彼は偉大な父の影に捉えられた。父を超えることはできず、自己分裂を起こしてしまったのだと思う。自分探しの果てに自意識が空回りし、世界を壊すという方向でしか自分を救済できないと考えたのだ。特に神学的学識や深い思想を持っていたとも本書を読む限りでは思えない。すべてが後付けで矛盾し、心が揺らいでいる。弱い心にイスラム主義という大儀が都合よく解釈され、彼の不安を後押ししたときに最悪の反応が起こった。テロリズムはどうしようもない精神的な貧しさの残滓だった。
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もともとイスラームにとっての敵は、無神論(物質主義)であった。したがって、物質主義を生み出した「近代」を、イスラーム主義者たちは憎悪した。
第二次大戦後、植民地支配から脱出したイスラーム圏各国は「近代」化を目指した。それがイスラーム主義者には気に入らなかった。こうして世俗政府対イスラーム主義の構造が生まれる。
ところで、国際政治に目を向けてみると、「近代」の代表者がいることに気づく。アメリカとソ連である。ソ連はマルクス的な唯物史観を信奉している無神論国家だ。当然、イスラーム主義者が敵視する。アメリカはキリスト教国家(イスラームからすれば、同じ神を信ずる同門である)であるが、資本主義経済によって、物質主義に堕落してしまった。したがって、アメリカもまた「潜在的に」敵視されうる。
先述したとおり、もともとイスラーム主義者にとっての最大の敵は「地元の政府」であった。政府との対立というローカルな戦いから、アメリカとの対立というグローバルな戦いに変化したのは、決して必然ではなかった。。アメリカが最大の敵に絞られていく過程。ジハードが正当化されていく過程。自爆テロという手段が「選択」されていく過程…。それこそ「神のみぞ知る」変化だったのである
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[崩れ落ちるまでに]世界中に衝撃を与えた9.11同時多発テロ。事件の首謀者であるビンラディンとその側近のザワヒリ、対してアメリカにおけるテロの発生を未然に防ごうとしたFBI調査官のジョン・オニールの3者が、テロに至るまでにどのような環境で育ち、世界認識を固め、悲劇に突入していったかを徹底的な調査で追いかけた作品です。著者は、本書でピュリッツァー賞(注:米国のジャーナリズムにおいて最も権威あるとされる賞)を受賞したローレンス・ライト。訳者は国際政治経済に関わる作品を多く手がけている平賀秀明。
上下巻でなおかつ文字の細かさ故に圧倒されてしまう方もいると思うんですが、その情報の濃度にさらに圧倒されること間違いなしです。どれだけの情報量と精査を必要としたのだろうと思わずにはいられない質の高さと多角的視点に驚嘆させられました。9.11に関する作品は多数見かけられますが、本書はその中でもマストとして位置づけられる作品なのではないでしょうか。テロが起こってしまうまでの一挙手一投足がつぶさに記されていますので、決して読みやすい作品とは言えませんがぜひ一読をオススメします。
「狂」の一文字で片付けられてしまいたくなるアル・カーイダ、そしてその頭目であるビンラディンの存在を事実に基づいて歴史的文脈に入れ込んでみせたところ、そしてそれ故に彼らが相対化された(かなり回りくどい言い方ですが、「こっち側の世界」にビンラディンらを引き摺り下ろしている)ところに本書の価値があると思います。ぜひ一読していただきたい箇所として、本書後半にある尋問シーンが出てくるのですが、最後に被疑者から引き出した回答、そしてその引き出し方に著者の訴えたいところの一端があったのではないかと感じています。
〜新兵たちには都会育ち、コスモポリタンな背景、高い教育と言語能力、コンピューター操作のスキルといった共通点があった。だが、強いてひとつだけ共通点を挙げろと言われれば、それは”寄る辺なき思い”だったろう。〜
(みんながみんなというわけではないのだろうけど)アメリカの調査報道の素晴らしさには本当に感服する☆5つ
※本書は上下巻合わせたレビューです。
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ビンラディン、ザワヒリ、FBI捜査官オニールの軌跡を丹念に追いかけて、等身大の姿を描く。徐々に惨劇に向かって収斂していく様には、まさに戦慄を覚える。ピュリツァー賞受賞、『ニューヨーク・タイムズ』年間最優秀図書。手嶋龍一氏推薦! たった一つの出来事が現代史の風景を一変させてしまう。9.11事件こそ超大国アメリカをアフガン・イラク戦争に駆り立てた凶事だった。本書は重層的な視座から21世紀の悲劇の全貌を描いた意欲作だ。
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上下巻の大著。$$9.11の原因、背景、に迫る。$$ジャーナリズムというのはこういうのを言うのだなと思わせるほど$$徹底的に調査し描き出している。$$描いている情景はまるでその場にいるようなリアリティがある。$$内容もビンラディンがそのような思想に至った環境遠因から描いている。$$これを読むと彼が冷酷無比なテロリストというイメージが覆される。$$むしろお坊ちゃまで理想主義な夢想主義者に見える。$$
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今日は、あいにくの雨でした。外出せずに、読書か映画を見て過ごそうと、積読している本の中から本書を取り出し読み始めたら止まらなくなり、上巻を読み切りました。
2001年9月11日にアメリカで起きた同時多発テロがどのような経緯で起こったのかを綿密な調査で綴ったドキュメンタリーです。
上巻では、アラブ人がアフガニスタンでソ連との戦いに外国人舞台として関わり、のちのアルカイダという組織が形成される背景が語られています。ビンラディン氏が幼少期から影響を受けてきた人物の活動や、テロに関わる人物の行動など多角的に開示されていきます。1995年あたりまでが上巻で確認できます。サウジアラビア、アフガニスタン、パキスタン、ソマリアが主な活動場所でした。中東の社会情勢やイスラムの世界観から描かれる世界の捉え方が読めるので、イスラム教を信じる人たちが隣人にいる国々の肌感覚も伝わってきます。
本書は2007年にピュリッツァー賞を受賞しています。読み応えがあり、ノンフィクションですが、物語に引き込まれます。下巻を読むのは来週の週末になりそうですが、続きを読みたくてしかたありません。