紙の本
計算されつくされた「リドルストーリー」
2010/01/15 20:30
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:惠。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
普段、めったにハードカバーは購入しない。できるだけ我慢我慢。そして文庫化を静かに待つ。のだけれどっ!!! 本作は新聞の宣伝欄で見て即、ハードカバーでの購入を決めた。「BOOK」データベースの内容を見てわかるとおり、設定がズルイのだもの。
本にまつわる設定ってたまらない。作中作が登場する作品。本を巡る物語。本屋さんのお話。その手の話には無条件で惹かれてしまう。
伯父の経営する古書店アルバイトの芳光の元に、北里可南子という女性から亡くなった父・参吾が生前に書いた小説を探してほしいとの依頼が舞い込んだ。僅かな情報を頼りにその小説を追う芳光と可南子。参吾が残した小説はりドルストーリーと呼ばれる、結末を読者に委ねるかたちの小説。しかし参吾はそれぞれのストーリーに、結末を一行ずつ用意していた。一編、一編と参吾の残した小説を手に入れる芳光と可南子は、各作品に結末を当て嵌めていく。そうやって調査を続けるうちに芳光は、参吾が関わった「アントワープの銃声」と呼ばれる22年前に起こった事件に行き着く…。可南子が言うには、参吾はとても小説を書くような人間ではなかったらしい。参吾はその小説に何かを託したのか?
本書では「青春去りし後の人間」が描かれている。主人公の芳光は大学生だが、実家の事情により学費が続かなくなり休学中。一方の可南子も過去に縛られている。(なぜか、はネタばれになるので敢えて書かない)
遺作を探す作業は結構すんなり進んでしまうのだけれど、その過程で芳光はちょっとした変化――主に内面的な――を遂げていく。そして父の遺作に込められた真相を知った可南子も、過去を受け入れ、新たな一歩を踏み出そうとする。
といっても、この『追想五断章』自体もリドルストーリーなので、読者はラストを想像するしかないのだけれど、わたしが思い浮かべるラストは「再生」。もしくは「リスタート」といったところ。前向きな余韻が残る作品だ。
さてさて本書では、芳光と可南子の小説探しの本編の合間に参吾が遺した5編のリドルストーリーが登場する。この作中作自体も短編らしいひねりが効いていて読みやすく、本書は1冊読んで6編楽しめるお得な作品と言えるだろう。
そしてその5編のリドルストーリーにはまたある仕掛けが施されていて、その種明かしがされたときはゾクリとなった。そして巧いと唸った。(ネタばれになるので詳しく書けないのが残念)
「青春去りし後の人間」の再出発までの物語。読後感はあったかく、ハードカバーで購入して正解!後悔はない。
さて最後に、本作の設定は不況厳しき平成4年。携帯電話も登場せず、メールなんて手段もない。冒頭で平成4年という設定を知って不思議に思ったのだけれど、最後まで読んでみればなるほど、この時代設定がとっても効いている。
正直いうと、あまりにも読みやすくてその内容はすぐ忘れてしまうだろうとは思う。5編のリドルストーリーの真相が衝撃的だった(トリックという点において)ということは覚えていても、細かいことはすぐ忘れてしまう自信がある。それでも、この読後感のあったかさ、がんばろう!って思える気持ち――読んでよかったと思う。
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2009.08.27 購入
2009.08.28〜09.07 読
フラゲどころか1日遅れでゲト!
とりあえず、全く読んでない新シリーズ(というか、これ1冊で終わりなんかな?)なんで、楽しみ!
どーでもいいけど、近所の本屋1冊も置いてなかったorz
一気に読めるというか、一気に読みたいけれども、あえてチマチマと途中で読むのをやめて、イロイロ考えてっていうか想像しながら読みました。
「いぶし銀」って表現で通っているみたいだけれど、この話に出てくるほぼ全ての登場人物の心情からすれば「鉛色」みたいな感じ。
苦い…苦すぎる。。。
調子のいい時に読むには気にならないだろうけど、自分が苦しい時に読むとあまりにも気分が引っ張られてしまう。。。
でも、ハッピーエンドじゃないけれど、この話の着地点としてはここが一番だと思う。
ミステリっていう軸に則っていても、カテゴリが丸ごとミステリか?と聞かれればそれだけではもったいなさすぎる。
ミステリというか、謎としても、過去の事実の結末としても、ものすごくきれいにストンと落ちた。
あぁ、でもやっぱり苦いよ。
あと多分自分にとってのリドルストーリーはこれが初めてだと思う。
読後もいろいろ振り返って考えて、読み返して…って楽しめる1冊。
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本当にこの作者?!という位、つまらなかった…。
帯にある「本格ミステリ」というのは「この表紙のことか?としか思えない(ちなみにこういう絵は趣味に合わない…)。
キャラについても特に書いていないし、深みがないし…。
ストーリーも特に面白みがないし…。
オチも「結局、だから?」としか思えないし…。
次回作に期待を込めます。生意気言ってすみませんでした。
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当に楽しみにしていて、発売当初は書店で見つからないので注文して取り寄せた本だったのですが、受験勉強にかまけて読みかけのままにしていました。やっと読了。
米澤作品独特の余韻がたまらなくて、いままで読んだ作品のように何度も読み返したくなりました。
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特に買うものを決めずに本屋に行ったところ目にとまった一冊。米澤穂信さんと言えば“古典部シリーズ”や“小市民シリーズ”という印象があるけれどそれらとは違った雰囲気のある作品でで面白かったです。機会を見てもう一度じっくり読み直そうと思う一冊でした。
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次々と明かされるリドルストーリーの結末。
でも、もしかして・・ってこんな終わり方わかった気がする。
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何だか馴染めぬまま・・・
退屈なまま・・・
読みきった感じ。
ラストに関しても、途中でうすうすわかっちゃったし、
あくまで、個人的に好みではない作品でした。
《2009年9月21日 読了》
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いやあ、良かった。
期待通りだった。
米澤穂信はおもいっきりミステリーマニアと思ってます。
なのでミステリーファンの期待を裏切りません。
依頼人の亡くなった父の書いた5つの小説を探して物語が進むのですが、
22年前の事件が絡んできて、
見つかった小説を読むと色々と想像できて、
なんともワクワクです。
しかも、見つかる小説が全てリドルストーリーなんですよ。
リドルストーリーとは最後の結末が書かれていないのです。
最後の結末を書くと蛇足になったりして面白くない場合などに
しばしば使われます。
今回は、別に父が5つの結末を残していて、
小説が見つかるたびに、それを付け足して読んでみて、
なぜ、リドルストーリーにする必要があったのか
なぜ、この結末なのか
などを考えながら、謎解きをやるんですよ。
そこが良かった。
色々想像できた。
最後はなんというか、
悲しい気持ちになったけど、
それをリドルストーリー5つで描いた父の気持ちは
ものすごく大切な宝物でした。
去年の「儚い羊たちの祝宴」の最後の一行の魔術といい。
今回のリドルストーリーといい、
期待を裏切らない手法に満足です
★★★★(8点)
。
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設定された年代ならではの描写には懐かしさを覚えると同時に、不便が故の面白さってあるよなあ、と再認識。
アントワープの銃声の真相には疑問を感じた。それ、成人男性なら一蹴できるんじゃないかな?
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父の遺した作品を探して欲しい、という奇妙な依頼を引き受けた古本屋の居候の物語。
ミステリー…というにはちょっと違う感じもしますが、おもしろかった!
作中作も入っているのでお得な感じです。
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結末をあえて書かない“リドルストーリー”がテーマの一つ。
全ての謎が解けたときにわかる、謎にこめられた思いがなんとも−−切ない?苦しい?
適切な表現が思いつかないけれど、面白いのは確かです。
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◎ダ・ヴィンチ2009年11月号
「今月のプラチナ本」
◎週刊文春ミステリーベスト10 2009年国内第5位
◎ミステリが読みたい2010年版
[2009年ミステリ・ベスト10]国内第3位
◎第63回(2010年)日本推理作家協会賞候補作品。
◎第10回(2010年)本格ミステリ大賞候補作品。
2009年11月11日(水)読了。
2009−111。
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古書店アルバイトの大学生・菅生芳光は、報酬に惹かれてある依頼を請け負う。依頼人・北里可南子は、亡くなった父が生前に書いた、結末の伏せられた五つの小説を探していた。調査を続けるうち芳光は、未解決のままに終わった事件“アントワープの銃声”の存在を知る。二十二年前のその夜何があったのか?幾重にも隠された真相は?米澤穂信が初めて「青春去りし後の人間」を描く最新長編。
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“「菅生さん」
抑揚なく、可南子が尋ねる。
「なぜ、戻っていらしたんですか。もう、依頼は断るとおっしゃったのに」
「仕事を終わらせるためにです」
自分の言葉に、芳光は驚いた。しかしその先も、言うことは決まっていた。
「僕はもう、大学に戻れる見込みはない。伯父の家にもいられない。だけどこれは僕の仕事です。叶うなら、終わらせたい」
たとえ自分の物語ではないとしても、と口の中で付け加える。”
米澤さんの物語の作り出す、ほろ苦い後味が好きだ。
恋愛関係じゃなくて、人間の過去のほろ苦い後味。だけど、どこかあっさりとしていてすぅっと消えていくような。
父親の遺した五つのリドルストーリーを探してほしいと頼まれた大学生の菅生芳光。
小説を探すにつれて明らかになってくる依頼主北里可南子の過去と“アントワープの銃声”。
全てが繋がって、小説は見つかって、可南子の過去が明らかにされて。
だけど、それが何だっていうのだろう。
“父親の一周忌を翌日に控え、芳光は泣いた。
いったい、人間の生き死にに上下があるのだろうか。一篇あたり十万円の金で他人の物語を探す間に、花の季節は移り変わっていく。どうしてこんなことになってしまったのだろう。
ひどい虚しさが胸を覆っていく。雨音だけがうるさい夜だった。
翌日、母の車で掛川駅まで伯父を迎えに行った。
伯父は芳光を見やると、
「ひでえ顔してやがる」
と呟いた。”
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古書店でアルバイトする主人公は、ある依頼を請け負う。
その依頼とは、結末の伏せられた五つの小説を探すこと。
その小説とは、依頼人の亡くなった父親が生前に書いたもので、
ある事件との関連があった。果たしてその真相とは?
と書いてしまうと、普通のミステリに思えないこともないが、
作中作の物語と、結末の伏せられたリドルストーリーが、
幾重にも連なり、結末を予想させない。
リドルストーリーという題材を最大限に生かした妙作だ。
話はすべて終えた、と思った最終章で、新たな展開が待っている。
人によってだとは思うが、当方はまったく結末が予想できなかったので、
「なるほどなぁ。やられた!」という衝撃でした。
小説好きにはたまらない要素がいろいろ入ってます。