紙の本
カラー写真がふんだんに
2009/11/10 14:13
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:7ひきのこぶた - この投稿者のレビュー一覧を見る
間が悪いというか、人物紹介の手間が省けたというか、「脳科学者の茂木健一郎氏、4億円申告漏れ」というニュースが新聞を飾った。だから、わざわざここで説明の必要がないのだろうが念のために記そう。何かに気づく瞬間のことである「アハ体験」という言葉(事象)が広まったのは、おそらく日本テレビ系列の「世界一受けたい授業」からであろう。授業の“講師”が茂木健一郎。ドイツの心理学者カール・ビューラーが唱えたドイツ語の「Aha-Erlebnis」の英訳の「a-ha experience」からきていて、決して独創ではないが、日本でそれを広めたのは、茂木ということになるだろう。だから、茂木健一郎が著者だと聞いたときは、てっきり、茂木の専門分野の「脳科学」関係だと思った。ところが違った。タイトル通りに、幼い時からの趣味である昆虫を観察(採集)に、コスタリカへ出かけた「旅の記録」なのである。
同行するのは動物行動学の泰斗・日高敏隆京大名誉教授ら7人。コスタリカ政府に届け出て、採集と持ち帰りの許可も取ってある、立派な学術旅行である。そこに茂木は混ぜてもらった。ただし、小さいころの昆虫採集の経験は豊富。“おじゃま虫”にはならない。出発前には、それを危惧した人もいたようだが「捕虫網の使い方が慣れている」ことを感心されたそうだ。もっとも、自分の捕虫網は荷物の中には入れてこなかった。採集そのものは、専門の研究者がいる。それより、熱帯林に巣食う、日本にはいない蝶などに見とれられれば十分だ。何しろ、「夢」は「採集」することではないのだから。
一行の主目的は昆虫だが、あくまでも“主”であって“副”を否定するものではない。昆虫が群がる美しい花もあるし、その昆虫を餌にする鳥もいる。もちろん、熱帯雨林という環境に棲んでいるジャガーやナマケモノがいる。幸い、ジャガーに遭うことはなかったが、ナマケモノには遭遇。面白かったのはナマケモノの生態。ナマケモノにとっては、人間の住んでいる傍のほうが安全だという。なぜなら、ジャガーに襲われる危険性が小さいからだという。また、終始、動作がスローなナマケモノのが、唯一、俊敏になるときはというと、小便をすることだそうだ。
ところで、申告漏れを伝える読売新聞に茂木のコメントとして「仕事に追われて、全然、書類の整理ができずに、申告する暇がなかった。」というのがあったが、この旅行と本書執筆は、やはり“仕事”なのだろうか。正味の「夢」であってほしい。
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茂木健一郎が、日高敏隆一行と共に訪れた南米コスタリカの熱帯雨林の様子を記録する手記。そこで出会った様々な昆虫、鳥、動物や風景の写真が数多く載っている。
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[ 内容 ]
子どもの頃から憧れていた熱帯雨林の生態系。
昆虫採集をきっかけに育まれた旅への焦燥。
初めて訪れるコスタリカの自然では、いったい何が待ち受けていたのか。
それぞれの生物には固有の環境世界があり、その中で時間や空間を認識しているという環世界の考え方。
その生命思想を発展させた動物行動学者・日高敏隆氏とともに、蝶だけでも一千種を超えるという生物多様性の豊かさを実感する道のり―。
本書は、日常を脱し、自分を包むすべてのものに感性を開く、脳科学者の旅の記憶である。
[ 目次 ]
旅立ち
日高敏隆さん
サン・ホセ
郊外へ
空中トラム
ラ・セルバ
捕虫網
研究棟
フィールドへ
プラ・ビーダ
鼻行類
サラピキ川
レイン・リアクション
フォルトゥナ
モンテベルデ
蝶を追う
ケツァール
環世界の花
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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わあ、憧れのハワイ航路、じゃなくて、あこがれの熱帯雨林だ、私もいつかきっと行ってみたいのです。
茂木健一郎は、脳科学という難しいはずの専門分野にもかかわらず、啓蒙者としてできるだけそうするように努めている平易な語り口と、彼自身の全方位的ミーハー趣味とが相まって、今や短期間で出た著作のハイスピードさは世界一かもしれませんね。
ええっと、多分なんだかんだといっても、我が家には30冊は下らないと思います、彼の本。
ところで本書は、彼ひとりでなく、我が敬愛する動物行動学者の日高敏隆センセとのコラボですから、よけい見逃せません。
モギケンが語る自らの昆虫少年物語は、まさしく私のそれと重なるところが多いのですが、今から考えると、よくもまああんなに熱中して、カブトムシやクワガタの生息していそうなクヌギの木の蜜のある場所を熟知して、夏ともなれば真っ黒になって野山を駆け巡って、夢中で追い駆けていたものだと呆れます。
それはともかく、読み終わった後に、無意識にポール・ボウルズの『遠い木霊』と、フランツ・ファノンの『地に呪われたる者』を手に取っていたのは、私にも何故だかわかりません。
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熱帯、南米コスタリカへの旅行記。今大変人気の脳科学者茂木健一郎の昆虫、特に蝶への思い非日常への同化という独特な視点が面白い。
椎名誠の紀行文になれているので熱い思いがありつつも冷静なタッチの書き方に最初はこそばゆい感じがした。
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茂木さんの旅行記であるが、昆虫に魅了された幼少時代、生物の楽園としてのコスタリカ、それを日高敏隆氏と共に行動するという、興奮感が伝わってくる良い本だった。
また写真が非常に美しく、コスタリカに引き込まれるような感覚になった。
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脳科学者、茂木健一郎が生物行動学者の日高敏隆ら7人とで行ったコスタリカ熱帯雨林紀行。マスコミへの露出等から、これまでこの著者には好感を持っていなかったのだが、実に瑞々しい感受性。誤解していたようだ。彼は幼少時には昆虫少年だったのが、ある時から虫を殺せなくなったそうだ。彼の補注網の一閃が、その蝶の命を一瞬にして奪うことを思ったのだ。また、「熱帯の夢」の中にはあらかじめタナトスが織り込まれていたという感慨も著者ならではのものだろう。同行の中野義樹の写真も美しい。幻の鳥ケツァールの写真というおまけまで。
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しかし、よくもまあこれだけ次から次へと本が書けるものだ。そして、テレビ出演もあり、本業の脳科学もあるだろうに、いったいいつの間にこんな熱帯の森を訪れたのか。そのことについては、本書の中で著者自身が書かれているが、11日間という日々を熱帯コスタリカへの旅に費やされている。これだけ長期間にわたって日本を離れるのは本当に久しぶりなのだそうだ。途中、日本の夢を見たというからおもしろい。さて、本書が単に茂木さん単独の旅行記だったら、たぶん購入しようと思わなかった。そこに、プラス「日高敏隆先生と行く」と書かれていたのでつい手を出してしまった。茂木さんは、子どものころにかなり日高先生の本にお世話になったようだ。昆虫少年としていろいろ学ぶことが多かったのだろう。だからこそ、この日高先生との旅には強い思い入れがあったのだろう。私自身も、学生のころずいぶんと影響を受けた森毅先生と、短い時間ではあったけれど、いっしょに食事をし、お話をさせてもらう機会がもてたのは、いまでも最高の思い出となっている。さて、美しい写真といっしょに旅行記を読んでいると、決して自分ではいけない場所に行ったような気分になれて、とても楽しいひと時を過ごすことができる。本書自体はちょっときれいに仕上がりすぎていて、できれば、旅に付きものの何かトラブルとか、ドタバタが出てきた方が、実感がこもったような気もするのだけれど。(しかし、茂木先生、最近ではツイッターなんかでも精力的に書かれている。人の倍くらいの時間を生きているような気がする。)
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ビジュアルは綺麗
旅行記という感じなので、思想的なものはなく、自然や虫が大好きな人は良いかもしれない