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年賀はがきを、はばからず文書きちらすはよし。
2009/12/03 21:10
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:和田浦海岸 - この投稿者のレビュー一覧を見る
徒然草を読もうと思ったのは、谷沢永一著「百言百話」に載っていた箇所が印象に残っていたからでした。まずは、そこを引用。
「手のわろき人の、はばからず文(ふみ)書きちらすはよし。
見ぐるしとて、人に書かすはうるさし
字の下手なんか、平気で手紙なんかをドシドシ書くのは宜しい。見苦しいからと云うので、人に書かせるのは、うるさい厭味なことだ(沼波ケイ音訳文)。沼波ケイ音は『この段は短いが、言が実に強い』と嘆賞して、次の如く彼一流の『評』を記している。
――『私が中学に居た時、和文読本と云う教科書の中に、ここが引いてあった。鈴木先生の講義を聞いた時、少年心ながら、ハッとした。今から其の時の心持を譬えて云って見ると、凛然たる大将が顕われて、進め、と号令したような気がした。恥ずるに及ばぬ、自分を暴露して、其の時々のベストを尽くして、猛進するのだ、と云う覚悟は、この段の講義を聞いた時にほのかながら芽ざしたのであった』・・・・」(p122・中公新書)
つん。ささいなことですが、私は、この時から、ありがたいことに、たとえば、年賀はがきの宛名書きなど、はばからず書くようになりました。
それから、何年かたって、古本で沼波ケイ音著「徒然草講話」を手に入れて読みました。うん。よかった。もっとも、もうすっかり内容をわすれてしまったのですが(笑)。
そして、この谷沢永一・渡部昇一著「平成徒然談義」を今日読んだのでした。いろいろなことが刺激される対談なのです。とりあえず第三十五段についての谷沢さんの語りを引用しておきます。
【谷沢】 この『手のわろき人』で思い出すのは、司馬遼太郎です。司馬さんは『燃えよ剣』のなかで土方歳三に『筆蹟のうまいやつには、ろくな奴がいない』と言わせています。その司馬さんの字がまた読みにくい(笑)。小西甚一は『悪筆家元』という四角い判子をつくり、手紙に押していました。私はそれほど洒落てはいませんが、兼好とおぼしき肖像の上に、この文句が書いてある掛け軸をもっています。書いたのは松花堂昭乗(しょうかどうしょうじょう)。・・偽物でしょう・・・それでも、この掛け軸は気に入っています。(p157)
ついでに、もうひとつ。
【谷沢】私は『開運!なんでも鑑定団』をけっこう楽しみに観ておりますが、真贋を見極める力のある人、ない人、さまざまな素人さんが、さまざまなエピソードをもって登場して、人間の面白さが出る、それがとても楽しいです。(p108)
ここから、徒然草の第八十八段へとつなげておりました。
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