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病院における治療という形態が、特定の時代の特定のパラダイムにほかならないことを、江戸時代以降の日本の医療の歴史を丹念にたどりながら解き明かした画期的な書物。
もちろんこちらは医療の専門家ではないので、専門家からの、すでにこうした類書があって、本書の内容は別にそう新しいものでもなんでもないんだという意見もあるのかもしれないが、たぶんそういう本はなかったのではないか。そうであれば、この論文において、参考文献としていくぶんかは取り上げられていただろうが、みあたらないようである。
本書はきわめて独創的な本である。そのために、いささか文章が読みにくくなっている箇所もあるが、それはある程度はしょうがない。独創的な本というのはそういうものである。
病院における治療という形態が、特定の時代の特定のパラダイムにほかならないということは、それを支える価値観が崩れれば、シフトが起こらざるをえない。
著者は、治療を至上価値とする医療システムから、地域包括ケアへの転換によって、病院の世紀の終焉がすでにはじまっていると語る。
現在さまざまに進められている医療と介護の制度改革を考えるにあたって、必ず読んでおかなければならない本であると思う。