投稿元:
レビューを見る
直近の統計では、精神疾患患者の数は300万人超、あるいは400万人弱ともいわれる。また別の統計では、日本人が一生のうちに一度でも精神疾患にかかる割合は、5人に一人という数字もあるようだ。
タイトルからもわかるように、本書はこころの病をもつ本人や、こころの病を持つ家族がいる人達に向けて書かれた本である。
しかも「親子の」とあるように、もしも子どもが心の病に苦しんでいるとすれば、むしろその親が本書をよく読んでその本質を理解すべきであるというのが著者の訴えであると思う。あるいは、子どもが心の病にかかる場合には、必ずその親に原因があるということに基づいて書かれた本である。
昨今、残虐な殺人事件等が増えているが、そういう加害者達もつきつめてみれば、育った家庭環境においては被害者であると著者はいう。こころの病は、そのもとを絶たない限り、世代を超えて連鎖していくというのが著者の研究に基づく確信である。
従って、著者は単にこころの病を患ってしまった患者を治療するということだけでなく、この連鎖を食い止めて、社会全体が病んでいるその流れを良い方向に変えていきたいという強い思いを持っている。
そういう意味で本書は、あらゆる人が一度は目を通してみるべき本であると思う。それによって、自身が予備軍であることに気付くことがあるかもしれないし、あるいは加害者であることに気付くことがあると思う。
ここには臨床の事例が10例収められているが、いずれも非常に困難な状況に陥ったケースが取り上げられている。しかし、著者をはじめとする優秀なサイコセラピストの粘り強いセラピーにより、最終的にはこころの健康を取り戻していくという事例である。
現代社会に生きる親たちが、自身のために、そして子供たちのために、読むべき本だと思う。