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生物が生き残るために競争相手を凌げるような利点、天敵を出し抜けるような利点をもつようになる、そのように進化していく課程は神秘的だ。
進化学は全ての生物学の根幹を成している。つまり、種の起源を読まずして生物を語ることはできないのだ。
大綱=当時優勢であった創造説(個々の種はそれぞれ個別に創造されたとする)に対する反論、進化の提唱。
現在多用に存在する動植物の種は、複数の原種の交配によってではなく、一種の進化によって生み出されたものである。
またそれは突然起きるものではなく、何世代もかけて徐々に変化してきた。
そしてそれは人類の飼育栽培下で丹念な選抜または無意識な選抜によって変異してきた。無意識の選抜というのは手に入る最上の変種を選んで保存するという当然のことである。
一方自然界では優勢な生物集団は変異した優勢な子孫を数多く残すことでよりいっそう優勢となる傾向がある。
僅かな変異でもそれが有用なものであれば保存されるという原理を、人間が有用な変異をふるい分ける人為選抜の原理に倣って自然淘汰の原理と呼ぶ。
卵数や種子数の多さが重要になるのは一生のうちのある時期(大抵初期)に個体数が大幅に減少することへの対処としてである。個々の種の増加の上限を決めるのは利用できる食物の量。
あらゆる生物の構造は他のあらゆる生物の構造と極めて本質的な面で関係しあっている。
鳥類の羽の色等の性差は繁殖期に自然淘汰(=性淘汰)が働いた結果。
生物の生存に有利な変異が生じるとすれば、その個体は生存闘争において保存される可能性が最大になる。そして遺伝の原理より、その個体は自分とよく似た形質をもつ子孫を生む。このようにして個体が保存されていく原理を自然淘汰と呼ぶ。
自然淘汰は絶滅や形質の分化を引き起こす。
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19世紀に書かれたとは思えないほど、動植物についてよく調査・研究され、論理的にまとめられている。正確な論述は、ダーウィンがいかに厳格な人間であったかを伺わせる。生物学の基礎をなす極めて重要な古典だと思う。
「どの生物種でも、生き残れる以上の数の子供が生まれてくる。しかもその結果として、生存闘争が繰り返し起こる。こうした状況下では、自分自身の生存にとって少しでも利益となるような変異をそなえた個体は、たとえそれがいかに小さな変異であっても、複雑で変化しやすい環境下において生き残る可能性が高くなるはずであり、自然によって選抜されることになる(自然淘汰)」p21
「すべての生物は、ある年などに個体数を減らすということがなければ、指数関数的な増加を続けることで、たちまちどんな土地でも養えないほどの数に増大してしまう。このように生存可能な数以上の個体が生産されるため、同種の個体間、他種との個体間、生息する物理環境とのあいだで必ず生存闘争が生じることになる」p123
「すべての動植物は指数関数的に増加する傾向があり、生存可能な場所ならばそこで急速に数を増やすはずなのだが、指数関数的な増加傾向は一生のうちのある段階で起こる大量死によって抑えられているに違いない」p126
「たとえば私はこんな実験をした。縦1m、横60cmの区画を耕して除草し、実生の苗が他の植物の被害を受けずに成長できる準備を整えたのだ。そして、自然に生えてきた野草のすべてに印とつけてその成長を観察した。すると、実生の苗357個体のうちの295個体もが、主にナメクジと昆虫によって食べられてしまった。長期にわたって刈り込まれている芝地を放置して草が生えるにまかせると、勢いのある植物が勢いのない植物を、しかも完全に成長したものまで徐々に圧迫して殺してしまう。実際に芝地の小さな区画(1m×1.2m)を放置したところ、最初に生えていた20種のうちの9種が、他の種の成長の犠牲になった」p130
「われわれはよく茂った土手を覆う草本や低木を見ると、そこに生えている種数や個体数の割合は偶然のなせる業だと考えがちである。しかし、そういう考え方はとんでもない間違いである。どの生物もみな、個体数を増やそうと悪戦苦闘し、他の植物を食べたり、樹木やその種子、実生の苗を食べたり、林床をいち早く覆って若木の成長を妨害する植物を食べたりという関係が繰り広げられてきたのだ」p142
「(生きている化石)それらは、閉じ込めたれた地域に住んでいたおかげで、あまり厳しい競争にさらされなかった。そのため、現在まで生きながらえられたのだ」p194
「地表に生息する無数の生物は、新しい構造を獲得することで互いに闘争し合い、最も適応したものが生き残る。それを可能とする構造上の重要な変更が生じるのは、個体にとって有益な差異を着実に蓄積する自然淘汰の作用なのである」p289
「ミツバチは深遠な数字の問題を具体的に解いている。貴重な鑞の使用を最小限に抑えつつ、最大量の蜜を貯蔵できる形状の巣房を造っているからだ。熟練した職人が適切な道具と測定器を使用しても、この形状の巣房を鑞で正確に造ることは難しいだろうといわれている。ところがミツバチの集団は、���い巣の中でその仕事を完璧にこなしているのだ」p376
「ダーウィンはイギリスの10ポンド紙幣の肖像となっている」p422
「「種の起源」を読まずして生命を語ることはできない」p423
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訳者の力によるところも大きいと思うが、その重厚な佇まいに反して読みやすく理解しやすい。
現代では当然のものとして受容されている「進化論」。形質の獲得が自然淘汰・性淘汰に依るものだという主張は、これほどまでに丁寧になされていたのかと驚く。それほどまでにセンセーショナルな主張だったのだろう。
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言わずと知れた名著だが、一般読者向けとあって非常に読みやすい。
生物学の小難しい話もあるが、実験に基づいた例証が魅力的で、まるでグローバルヒストリーの本を読んでいるようにワクワクした。
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専門家のための学術的なものでなく一般向けであるとのことである。
以前から読みたかったのだが、それを知って読むことにした。丁寧で細かく分かりやすい。文章の後に気がついたことがあったら、注意書き、説明も怠らない。現代では知られていることのまとめ書きになるわけである。
適応しつつ対処していくことにつきるということだろうと思うのである。
読み終わった後も確認したくなったときのために手元に置いておこうと思う。終わりの“本書を読むために”もとても興味深いことが記してある。
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私的ベスト5のうちの1冊。チャールズダーウィンの人間性に触れる事ができる名著だと思います。訳者の渡辺正隆さんの補足がわかりやすく、岩波文庫版より字も大きく読み易いです。
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言わずと知れた古典。その構成は、第一部(1~5章)で自然淘汰説(自然選択説)を説明し、第二部(6~9章)でその難点を取り上げ、第三部(10~14章)で生物学諸分野の知見が自然淘汰による枝分かれ的進化によって理解できることを示している。
私がこの本を読んだ目的は二つあり、一つ目はダーウィンの入念な論証を追体験することである。これは、種の起源はダーウィン本人による一般人向けの要約書であることから、なるべく専門的な知識なしに容赦のない思考のヒントを得ることができると考えたからである。二つ目はある程度ボリュームのある読書体験をすることである。上下巻合わせて800ページ超もある大著を読み通す経験は今後の読書の幅を広げるうえで重要な意味を持つと考えたからである。
この二つの目的に関しては現代でも種の起源を読むいい理由になると思う。
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今更ながら人類の歴史的名著を読む。まずは上巻。
なぜ本書が人々の常識を一変させたか、それは一般読者向けに分かり易く書かれたことのほかに、シンプルな主張を徹底的な論理武装で身にまとった点にあろう。本書内で厖大な事例が列挙されているが、彼は帰納的に進化論を導き出しているのではなく、観察と実地調査から既に結論を有しており、その論証としてあらゆる角度・視点から推敲を重ねて丁寧に理論の層を重ねている。そこには反証に対する準備も含まれる。「自然淘汰」が最も有名だが途中変異や本能など充分に検討と熟慮を以って慎重に進化論を温めていたことがわかる。ウォレス氏が手紙を出さなければ、ひょっとすると発表せぬまま亡くなった可能性もあるくらい一点の濁りもないレベルに仕上げようとしていたことが窺える。
我々は「進化論」の概要を押さえ先人の智慧の果実に与れば充分だと思うが、当時の一般人の感覚を追体験する意味で読むと面白いであろう。
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ダーウィン世界各地で虫の採取や魚の捕獲、動物の観察をしすぎ(笑)って思った。実験をしっかりしているのが特徴だなと感じた。
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現在の生物学の土台を創り上げた言わずと知れた名著。生命の創造説が主流の時代の中、長年に渡って生物の観察を続け、論証を重ねる事で導き出した「自然淘汰説」。この学説は、現在でも様々な分野に大きな影響を与えている。
生物進化に関する本を複数読んできて、恥ずかしながら本書を読んだ事が無かったので読みました。遺伝子に関する知見がない中で、ここまで壮大な生物進化に関する学説を唱える事が出来た彼の偉大さを改めて実感しました。
続けて下巻を読みます。
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難しかった。翻訳した人のさじ加減もあるかもしれないけれど、ダーウィンさんは自分の論説をゴリ押ししないところが謙虚だなと思った。
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たまーに、ビジネスの文脈で「変化できるものが生き残る」的な話をされるんですが、これがダーウィンの言葉かというと微妙だそうで(経営学者メギンソンの解釈)、確かに本著を読んでもそういう表現は書いてありませんでした。
ビジネスでそう言われる時って、「だから我々が日々やっているコト/意識を変えよう」なんですが、本著を読んでいると、「世代交代の中で形質等が変化していき、自然淘汰が進む」というコトなのかなと。
ダーウィンも、引き合いに出されて困っているかもしれません(笑
というコトで、きちんと触れる機会のなかった本著、あらためて向き合ってみました。
本著、筑波大学の生物学教授の手による新訳で、今では否定されている事柄や、著者自身が増刷の際に修正した事柄までしっかり注記されており、160年前の本を読むことへのモヤモヤ感を解消してくれるだけでなく、これだけ前の本なのに、現在でも一定の正確さが認められ続けていることへの驚きを感じます。
(とはいえ原著の出版は江戸末期なので、そこまで昔ではない?のかも)
本著を読んでいて特に感じたのは、ダーウィンの学問に対する誠実な姿勢です。
まだ解明できていないコトを正直に書きながら(あるいは、こんな疑問がある、と課題を提示しながら)、方向性を提示し、これは全体としての科学の発展に繋がったんだと思います。
当時の世の中のトーンをあまり理解できていませんが、キリスト教的な創造説が一般常識となっていて「うっかり神の偉業を否定すると異端審問で殺されてしまいかねない(?)」中だからこそ、著者はこれだけ突き詰めた論考を発表して、結果としてこれが科学的な手法として広く広まったのかしら…なんてコトも思いました。
(リベラルアーツの上位に存在した神学を、その座から引きずり降ろすための試み?だったんでしょうか…)
あと、最近読んだ現代日本の著作2つともリンクする点を見つけて、何だか嬉しくなりました。
栽培種における形質の変化では、『奇跡のレストラン アル・ケッチァーノ』の在来種の野菜を栽培するくだりを想起しました。1世代でも意外と変異があるというのを、既にダーウィンが書いていたとは…。
https://booklog.jp/users/skylark0311/archives/1/4167903237
また、農家が作物の収量を上げるには異なる種類の作物を輪作するが、「自然は、同時輪作とでも呼べることを実行している」のいうくだりからは、『奇跡のリンゴ』の自然農法を想起しました。
https://booklog.jp/users/skylark0311/archives/1/4344416457
最近読んで、「へーっ」となったコトが、まさか本著に書いてあったとは…。
本著における営みの延長線上として、人類はDNA検査というマイルストーンに辿り着いていて、進化生物学や遺伝学といった分野は今後も花開いていきそう。
凄いのは、1859年に出版された本著からそのラフスケッチのようなものを感じ取ることができるということです。
「一般読者向け」の本だそうなのですが、個人的には新訳ながら慣れない単語が多くてスイスイ読めるとまではいかず、分量的にも結構大変だなぁと思いました。とは言え、下巻もぜひ挑戦しておこ��と思います!
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この本は、誰もが知っているダーウィンの「種の起源」ですが、実際に読んでみると、とてもよく研究された本で、めちゃくちゃすごい本だと思いました。
世の中が「この世は神が作ったという」創造説を信じている中で、生物進化論を科学的に証明した本書は、まさに時代を大きく変えた歴史的な本だとと思いました。
ぜひぜひ読んでみて下さい!
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自然界のあらゆるものは神の計画に従って役割を分担。種は永遠不変。動植物の分類。リンネ
※スウェーデン
生き残る種は、変化に最も適応した種。最も強いから、最も知的であるから生き残るのではない。▼有利な個々の変異を保存し、不利な変異を滅する。これが自然淘汰である。ダーウィン『種の起源』
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農業高校を卒業したくせに今まであまり生物関連の本を読んでこなかった。そんな自分に喝を入れるため『種の起源』に挑戦したが、結果は最高の読書体験でした。
地球環境に適応し、柔軟に種を分岐させてきたすべての生物の地道な足跡を、強い愛情と探究心を持ってダーウィンは追求する。
ミミズと土についての著作も読みたい。
予想外な点
・創造説に対しての気配り
・読みやすい
・優生思想や競争心を煽ることは書いてない。