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中世史を専門とする歴史学者ならではの、栄華を誇った王朝の記憶のTapestryたる「百人一首」の歴史的読解。 -20091228
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[ 内容 ]
藤原定家の撰した歌集「百人一首」。
そこには、かつて栄華を誇った王朝の記憶が幾重にも織り込まれている。
陽成、崇徳、後鳥羽などの王家の敗者、元良親王、敦忠、儀同三司母など恋に生きた人々、曾禰好忠、藤原実方、源重之など、都鄙往還した下級貴族たち…。
そうした詠み手たちの分析から、王朝時代史の読み直しを行い、さらには、時代を超えて継承される文化の力を考える。
歴史学の立場から王朝文化の枠に踏み込み、近代における王朝時代の認識のされ方まで射程に入れた碩学の野心作。
[ 目次 ]
1 「百人一首」の時代
2 神と人―敗れし者の系譜
3 男と女―「恋は曲者」
4 都と鄙―「名所」「歌枕」への誘い
5 虚と実―王朝の記憶を繙く
6 「百人一首」に時代をめくる
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「王朝の記憶」として、百人一首を位置づけて理解を試みている。とくに定家がそれら百首を選んだ周囲が、タイトル通りに詳しい。子規の貫之などへの批判から、近代における貴族・王朝の負のイメージ云々のくだりも興味深い。文章はかたいが、そのさまが信憑性を加えている感。
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藤原定家によって集められた『百人一首』とその歌人たちについて、さまざまな観点から解説している本です。
著者は『百人一首』における定家のねらいを、武家の台頭する中世において王朝時代の記憶を振り返るものとして理解しようとしています。そのうえで、百人一首の歌人たちについて、いくつかのテーマにそって紹介をおこなっています。歴史のなかで敗北した大伴家持や崇徳院、恋を歌った藤原道綱母や寂連法師、歌枕を訪ねてイメージの世界を形成するのに寄与した能因や西行、そして小野小町や在原業平が能などの後世の作品のなかでどのように造形されたのかということについても解説がなされています。
最後に著者は、近世および近代における『百人一首』の受容史にかんして、ごく簡単な見取り図ではあるものの、興味深い問題提起をおこなっています。