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絵本 1946年コルデコット賞銀賞 受賞作品

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紙の本

【読みきかせ・小低~小中】米国絵本黄金期を支えたワイズ・ブラウン&ワイスガードのコンビによる山の上の羊飼いの少年の静かなお話。大切な存在の身を案じるときの「気持ちの揺れ動き」を体験できます。

2009/12/14 21:31

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:中村びわ - この投稿者のレビュー一覧を見る

 マーガレット・ワイズ・ブラウン(ゴールデン・マクドナルド)とレーナード・ワイスガードが1947年に『ちいさな島』でコルデコット賞をとる前年、同賞銀賞を受賞した作品です。
 前半は昼間の時間帯の出来事で、左ページに文字、右ページに絵が配され、その絵はフルカラーです。後半になると夕方から夜の時間帯の出来事になり、左ページに絵、右ページに文字が配され、絵は茶色味のある赤紫のモノクロームの濃淡で描かれています。絵と文がそのように分かれていて、絵童話的な構成が与えるイメージ、そして後半の単色ページのイメージが相まって、素朴で地味とも言えるほどに穏やか、だからこそ清澄な雰囲気が漂っています。

 物語に登場するのは羊飼いの少年と羊たち、そして犬だけです。トカゲとピューマもちらり顔だけは出しますが……。季節は、朝夜はまだ山では冷えることもあるというので、春という感じでしょうか。
 羊飼いの少年は、山のいただきに向かって徐々に雪が解けて草がのぞいていくので、毎日そこへ羊たちを連れて行き草を食べさせてやるのが仕事です。羊たちの群れのなかには、子羊も何匹か混じっていて、群れでの行動に慣れていないため、ときどき集団を離れそうになってしまう子もいます。そういう中にやんちゃな黒い子羊が混じっています。

――むれをはなれて、かってに とんでいってしまうのは、いつも あの黒い子ひつじでした。(P8)

このような書き方からも分かるように、また題名からも意識させられように、聖書「マタイによる福音書 第18章」の「あなたがたはどう思うか。ある人に百匹の羊があり、その中の一匹が迷い出たとすれば、九十九匹を山に残しておいて、その迷い出ている羊を捜しに出かけないであろうか。」(『新約聖書』国際ギデオン教会より)の教えが根底にあるのでしょう。祈りが全体を覆っていると受け止めました。

 黒い子羊のことは少年も気にかけていたのですが、それでも気づかないうちに、どこかへ消えてしまいます。最初に気づいたのは母羊で、声を上げますが、母羊がさがしても、少年がさがしても、犬がさがしても見つかりません。群れの羊たちが協力して鳴いても、少年が叫んだり笛を吹いたりしても、返事がないのです。
 当の黒い子羊は、ひとりだけで楽しく遊んでいます。この遊んでいる場面をきちんと間にはさんでいるのが、「さすが」です。子どものお話なのに、このような場面が欠けていたらどうでしょうか。群れに戻れるのかどうかということだけでも心配なのに、子羊の安否すら分からなかったら安心して絵本を楽しめるのかどうかということもあります。また、そういった心配を片方に絞るだけで、物語の芯を太くしているようにも思えるのです。
 暗くなる前に羊たちをふもとの牧場へ連れて帰るのが少年の仕事です。そこで仕方なく、見つからない子羊をそのままに少年は戻っていきます。

 物語の始まりは、少年のつぶやくような詩になっています。そこで少年は、自分の子羊たちや草花に対し、風に「やさしく吹いておくれ」とお願いをしています。言ってみれば、それも祈りのようなものですが、後半のモノクロームの夜の部分になると、「子羊がどうか見つかりますように……」と読者は祈りながら読んでいくことになります。
 読者以上に子羊の無事を祈っているのは、羊飼いの少年です。ふもとの牧場と違って、子羊が迷ってしまった山の上の方は寒いし、ピューマもいるということで心配はつのっていき、少年は眠れなくなってしまいます。いったんは朝まで待とうとしながら、ついに夜の山へと出かけていきます。

 聖書にあるように、迷える者には手を差し伸べてあげるべきだというような教えが中心をなすお話ではなく、1つの出来事を通しての少年の心のこまやかな動きを追っていく内容です。ハラハラドキドキの冒険活劇ではなく、大切な存在の身を案じる、心配するときの「気持ちの揺れ動き」が体験できるようになっています。
 現代人としては、「夜の山へ出かけて行くのは良くない。二次災害につながってしまうこともある」と突っ込みを入れたくなるということはありますが、聖書の教えを押し拡げ、寓話的な絵本世界を確立させていることが素晴らしいです。
 

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