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タバコを歴史の遺物に タバコ規制の実際 みんなのレビュー

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紙の本

出版社からです。

2009/10/08 08:54

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投稿者:ノッキ - この投稿者のレビュー一覧を見る

 30年以上にわたり、公衆衛生史上最大の課題、タバコとの闘いに挑んできたチャプマン教授。これを読んだら、今すぐ行動せずにはいられなくなるだろう。
国立がんセンター研究所たばこ政策研究プロジェクトリーダー望月友美子

              【監訳者序文】
 「科学的にタバコは体に悪いことが証明されている。」「従ってタバコはやめるべきだ。」という100%理にかなったことを言っても、喫煙者はおいそれとタバコをやめるわけではない。人々の健康に関する「知識」と「意識」と実際の「行動」の間には差があり、特に今の時代、喫煙が健康に有害であることは喫煙者自身も十分知っている。従って人々が禁煙しないのは単に有害性の情報が不足しているためと考え、喫煙者に医学知識を伝え禁煙の必要性を説くだけでは不十分である。それは時に医療専門職が単に自分の信念を表明するということで終わっていることもあるが、そうではなく、実際に人々の喫煙を減らすためには、そのための方法論とその科学的な検証が必要である。
 喫煙などの健康行動への介入に関する重要な考え方としてポピュレーションアプローチというものがある。もともとは心血管疾患などのリスクを長期前向きコホートで観察した研究から生まれた考え方であるが、血清コレステロール値が高い群の心血管疾患の発生率は高いが、心血管疾患患者の総数で見ると、むしろコレステロール正常域の者の方が多い。従って、心血管疾患対策は少数のハイリスク者を見つけ出しそれに働きかけるハイリスクアプローチだけでなく、集団全体を動かす働きかけが重要ということである。わが国の生活習慣病対策で、健診によってハイリスクの個人を発見し、その個人の‘悪い’生活習慣を教育して改めさせるという方針には、ポピュレーションアプローチの考え方が欠如していた。その結果時に保健師が、一生懸命保健指導した対象が翌年相変わらず運動もしなければタバコもやめていないことにがっかりするとともに腹を立て、保健指導の対象を叱正して、喧嘩になるなどの弊害まで生み出していた。‘悪い’生活習慣の背景にある原因を考えず、その結果の患者を非難するのは被害者非難<victim blaming>で健康教育では最悪の方法であるが、わが国の予防医学の現場では未だこれを脱することができておらず、特に喫煙に関してはその傾向が強いのではないか。
 それではどうすればよいのか。その答えが本書の原題“Public health advocacy"であり、タバコ対策を例にAdvocacyを具体的に説明しているのが本書である。喫煙などの「‘悪い’生活習慣の背景にある原因への対策」として、原著者のSimon Chapman教授は自らのオーストラリアでの経験と実績をベースにしつつ、それを決して成功談から来る経験の押し付けや自画自賛でなく、対立意見の分析も含めた根拠のある論証として提示している。その典型的な例として、本書でも論じられランセット誌上などでChapman教授が論争を展開しているニコチン補充療法に対する疑問が挙げられる。Chapman教授は、ニコチン補充療法はそれを実施できた対象群での有効率は高いが、社会全体にとっての効果、すなわち人口全体の喫煙率を下げるためには、効率が悪いことを指摘している。これはまさにハイリスクアプローチ(むしろニコチン補充療法の場合はハイベネフィットアプローチと呼ぶべきかもしれないが)の問題を指摘したものであり、別の働きかけ、すなわちポピュレーションアプローチを置き去りにして、ハイベネフィイットアプローチにのみ走ってはいけないということである。(略)
 Chapman教授が長年タバコ対策に取り組んだオーストラリアでは1964年からの40年間で成人男性の喫煙率が58%から24%に急減し、それに引き続いて肺がん、心疾患、閉塞性肺疾患(COPD)による死亡率も大幅に減少している。これが自然に発生したのではなく、Chapman教授が中心になって行った禁煙アドボカシーが大きく貢献したと考えられる。本書の第2章の冒頭で、世界的に有名な心臓外科医が一生に行った手術で救った命の数とタバコ対策で救われた命の数を対比させ、後者の大きさとそのことを人々が認識していないことが指摘されている。その意味でたくさんの命を救ったChapman教授は公衆衛生を志す者にとってのヒーローであるが、本書はこのヒーローが偉業を達成した方法(とその科学的検証)を書いたものであり、彼の後に続くタバコを憎む者たちへの指南書でもある。
 本書の校正作業を行っていた2009年春、リーマンショックに発した100年に一度といわれる世界的な大不況で、ほとんど全ての業種が深刻な販売不振と困難な経営にあえいでいた。そういうなかにあって世界3大タバコ会社であるフィリップモリス(PMI)、ブリティッシュアメリカンタバコ(BAT)、そして日本たばこ(JT)の各社はいずれも前年比二桁増の高収益を続け、売上を伸ばしている。しかしタバコ会社が売上を伸ばすということは、それだけより多くタバコ煙が人類の肺の中に入っていっているということである。
 わが国は先進国の中では群を抜いて喫煙率が高い国であるが、タバコ規制は緩く、それに対する運動のレベルも決して高いとは言えない。タバコ規制論者の多くが相変わらずタバコの健康影響を列挙することに明け暮れ、ハイリスク(ベネフィット)アプローチは盛んになってきたが、そうした活動自身を科学的に検証し、実際の結果として(アウトカムとして)集団レベルで効果をあげるためのアドボカシーへ方向転換する議論はあまり聞かれない。そもそも問題の根本にある「たばこ事業法」の第1条「我が国たばこ産業の健全な発展を図り・・・」を廃止させようという主張すら、ほとんど聞こえてこない。本書の翻訳が、わが国で喫煙という個人の悪い健康行動の背景にあるタバコ会社を追いつめ、わが国でも喫煙を歴史の中に葬り去ることに役立つことを願ってやまない。
                    訳者を代表して 矢野栄二
                          (2009年盛夏)

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