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第二章以降、筆者が足を運んで聞いた、高校生の実情の吐露は身に迫るものがある。貧困が高校中退を生むという主張にかなりの説得力を持たせている。最終的な解決策の提案など、詰めが甘いと思わせるところが惜しい。
筆者は高校教育を義務教育化すべしと主張しているが、私は就業の前提条件となっている高学歴化を止めるべきだと思う。本来、義務教育を終えれば、生活に必要な四則演算や漢字の読み書きは身につくものべきものだ。その学力補完を高校に求めるのは筋違いだろう。何故雇用主が高卒以上を求めるのか。その理由から考えないと。仕事を得るのに必要だからと、意味も意義も見出だせないうちに高校を安易に卒業させるべきではないと思う。
論旨がやや飛躍していると思われる点もあり全てに賛同はできない。しかし、こうして色々考えさせるところと、貧困と教育との相関を知らしめた点で、大きな意義のある本だった。。視界が広がったという意味で面白い本といえる。読み継がれるべき一冊かも。
若者に、将来の希望を持たせる。この一言に尽きる。
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所謂「最底辺」と位置づけされる学力下位の公立高校に通う高校生を中心に、高校中退の現状を述べ、その背景には経済格差による貧困問題があることを明らかにしたドキュメント。
全体としては2部構成で、前半は高校中退の現実について、直接中退者に取材した結果を列挙する。後半は高校中退の背景には何があるのか、さらにその打開策を提示する。
前半が全頁の3/4を占めており、中退の現実を読んでいくと結構凹む。思った以上に酷い。
読後感としては、高校よりも小中学校の現状がどんなものか気になった。高校中退者は様々な家庭の事情により、小中学校時分から学習の機会をはく奪されてきているからだ。
そのような小中学時代を送ってきた生徒がほとんど無試験で最底辺と認識されている高校に入学していることだ。入試の現状はどうなっているのだろう。
今の日本社会は再チャレンジを容易に許さない傾向にある、という著者の指摘には同感。落伍者も許さない傾向にあるだろう。
中学校までに学習機会・意欲を奪われ、高校に入るだけの知識が育成されていないのであれば、高校には入学させず、そこまで知識を得てから改めて受けさせるくらい、社会の懐深さというのを確立させるべきではないだろうか。
そのためには高校義務化よりも、夜間中学等の充実が先行されるべきではないだろうか。
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ドキュメント高校中退―いま、貧困がうまれる場所 うーん。将来の日本のためにも何とかしてほしいところ。それにしても、P.221の"戦後日本の不登校率"のグラフを見て笑った。何だこのキレイなお椀型は。 http://bit.ly/9p2aMp
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読了。筆力に思わず目を背ける。悲しいかな小乗の僕は、筆者のような大乗の方々とはいつも結論が合わない。
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最底辺高校の恐るべき実態。ほとんどの生徒が九九を言うことができず、55の次の数が分からない生徒もいるという。生徒たちは授業料を払うことができずに、歯が抜け落ちるように高校をやめていく。親も、教育の大切さを知らないのだ。底辺校では、中退率は3割にも及ぶ。しかし、高校中退では満足な仕事にありつくことができないから、ますます貧困にあえぐことになる。こうして貧困は再生産されていく。ひとたび負のスパイラルにはまり込むと、どんなに頑張っても抜け出すことができないのが、現代の日本社会だ。
「自己責任」という言葉が幅を利かせているが、子供の貧困は自己責任ではない。政府は、同じコストをかけるなら、老人よりも子供に投資すべきである。しかも、少子化社会なのだから、トータルでかかるコストも少ないはずだ。にもかかわらず、老人の福祉が優先されるのは、高齢化社会における民主主義の矛盾であろう。そしてまた、富裕層もいつ足下を掬われるか分からないという不気味さがあるから、既得権益を守ることに汲々としていて、貧困層に構っている余裕がない。こんなことを続けていたら、この国は滅びるであろう。
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職場の課題図書。ハッピーになれない。貧困が人間を壊していく現実。貧困は、子どものことの前に、昨日の我が身、明日の我が身であり、恐ろしくなった。貧しくとも、本を手にできる環境があれば、こんなことにはなっていないだろうに。この国が目を背けている現実を知る。
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高校中退と貧困に関連があるとはあまり考えた事もなかったので、
読んで驚きました。
しかもそれは高校以前からずっと続いているなんて。
著者が強く望んでいた高校授業料無償化は実現しましたが、
それでも制服代や教科書代、修学旅行代は掛かります。
著者も述べているように公立の授業料よりも制服や教科書や旅行代の方が遙かに高額です。
なので授業料が無償化されてもそれほど有難味は感じません。
高校中退を減らすには、
やはり義務教育化して教科書も無償にしていかなければ現状は殆ど変わらないと思います。
それと、普通高校に行くのが当たり前、とか
大学行くのが当たり前、という常識ではなく、
将来への道はいろいろ選択肢があるという常識に
日本の社会が変わっていかなければいけないと思いました。
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高校を卒業している事が当たり前となっている今日の日本において、高校を中退してしまうという事、せざるを得ない環境とはどのようなものなのかを説明している本。
底辺校とされる学校に通う生徒の家庭状況(年収200万程度の家庭が1/3。子供のバイト代で生計を立てている家もあり、制服・体操着を買えないこともある)、学力(足し算・掛け算が出来ない、中学時代に定期試験を受けていない為「成績が無い」、アルファベットを書けない)、勉強に対する認識(「自分の仕事は勉強でなくアルバイト」と答える)の低さに驚かされるが、何より支えてあげるはずの教師もあまりの指導することの多さと、受け止めようとしない生徒・両親に諦めを感じて、「生徒を切ろうとする」ようになってしまっているのだという。
筆者は、実際に高校を中退した人を対象にインタビューを行っている。両親も高校中退、片親に愛人が出来たので家にいられず夜を彷徨う、授業料を支払えなくなったので・・・、中退したら職が見つからなくなった、正社員のはずなのに日給・時給制、家族全員中退、男遊びで妊娠してしまった、「高校も義務化して欲しい」、親からのDV、(中学時代の成績が良くないために通っている)高校が家から遠すぎるなど、辛い実情を語っている。
正直、「考えが甘すぎるのではないか」と思えるような主張のため同情出来ないものもあったが、これまで育ってきた環境や「安易な考えで中退するとどうなるのか」を共に真剣に考えてくれる(親を含む)大人が周りにいなかったという事による悲劇という見方も出来なくはない。中退後は何をしているのかというと、日雇いの大工、内装、警備、水商売という職に就く事がほとんどで、社会から疎外されて生活してきたこともあり、社会のために働こうとはしない。筆者が言うように「自己責任」のひと言で片付けるのは、今後の日本を考えていく上で有益なのだろうか。
保育所や障害児通園施設においても貧困の影がちらついている。男に依存する母親、歯磨きを教わっておらず歯がとけてしまった子、食事はスティックパンやカップラーメン、おむつのはかせ方を知らない、親の性交渉を見ているのか、Hごっこをする子もいるという。
根底にあるのは家庭の貧困であり、両親の学習への感心の無さ、生活リズムの崩れ、きちんとした親子関係がとれていないといった事で、子供の考え方が悪い方向に固まってしまうのだという。
それにしても、親の最終学歴、職業、収入、教育に対する考え方一つで、子供の住む世界が凄まじく変わってしまう事実には驚かされる。負のスパイラルから抜け出せるよう国が取り計らったところで、一体どれだけの家庭がその情報を手に入れ、かつ有効的に活用していけるのだろうか。
筆者は高校を中退してしまう大きな要因として、学校生活・学業不適応(学力や意欲の無さから学校生活に適応出来ない)、学業不振(小学校レベルでつまづいている事があり、ついていけない)、進路変更(厳しい学校において学びや仲間づくりを諦める)の3つを挙げており、彼ら自身も安易な気持ちで辞めてしまった後で、「バイトが見つからない、次の仕事に考慮されない��と嘆いている。同世代の様々な家庭環境にある子供とつながることが出来ないという点も、問題として指摘されている。
それにしても、文科省の高校中退率の算出方法が筆者の算出方法と比べると、3%も数値が変わってしまう事には驚かされた。「算出方法は目的によって多種あってもいい」と筆者も述べているが、文科省の目的は一体なんだったのだろうか。「制服や体操着を買えなくて恥ずかしいから学校に行けない(買った後は顔つきが明るくなった)」、という子の存在や「うちの生徒にとって修学旅行で飛行機に乗るという経験は生姜で最後になると思います。これからもいっそう貧困の中で暮らしていくでしょう」と語らざるをえない教師はあまりに悲しい。
「貧しいとは何も出来ないこと。何も選べないんですよ」という生活保護を受けて三人の子を養う親の叫びは、届く日がくるのだろうか。
自分用キーワード
エドモンド・バーク「教育は国家にとって安くつく防衛手段」 9、10歳の壁 就学援助制度 アマルティア・セン「(基礎教育が)人間の安全を脅かすほとんどの危険に対し強力な予防効果がある。世界の本質を、その多様性と豊かさを認識することであり、その思考及び友情の大切さを理解すること」
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2008年度まで埼玉県立上尾高校で勤務されていた元教師の研究をルポルタージュ風に書き上げた1冊。
4時間ほどで読めてしまう上に、想像以上の世界が紹介されているのでオススメ。
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あまりに我がことから遠すぎる世界は、やっぱりイマイチ実感もわかないし、難しいです。これを通じて、我が子への教育観は少し出来上がった気はしますが。
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いつかのNNNドキュメントで放送された「高校中退」に衝撃を受け、そのことをふと思い出しこの本に出逢いました。
第一部(第1章~3章)には非常に多くの方の話がでてきます。
中退した当事者はもちろん、その家族やかつて教えていた教師の話。
「貧困」にクローズアップし、未就学児の家庭や保育士からも数多の話を引きだされています。
読んでいて、実際のこととは思えないような、思いたくないようなエピソードが非常に多いです。
希望を見出せる糸口がわからない、暗澹とした気持ちになりました。
この本が出版された翌年に高校無償化法は施行され、その結果、経済的理由による中退者は減少したという調査結果もあります。
とりあえず「金銭面の不安はなくなった」とは言えますが、第一部でのインタビュー話にみられるように、幼少時の生育環境も経済面と同等かそれ以上に非常に重要だと思っています。
幼少期に、扶養者の貧困によって教育の機会や学ぶきっかけが周囲の子どもたちよりも奪われてしまうということがなくなってほしい。
国家や自治体の予算もマンパワーも限られるなかで難しすぎる課題かもしれませんが、この本を読み終えた今はただそれを願うばかりです。
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学力のなさの裏側にこんな悲惨な貧困の実態があったとは知らなかった。現状の教育システムじゃとても彼らを掬いとってやることはできない。また、高度知識社会に成るにつれて彼らのような人間は、ベーシックインカム導入などの、思い切った社会システム改革を行わない限り居場所がなくなってしまうだろう。
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高校で分数計算ができないのはまあわかるけど、九九ができない生徒がいるってのはかなり衝撃だった。英語の授業でアルファベットが書けないというのはどうでもいいって思えるレベル。
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2014.2.15
高校の義務教育化には反対
実情を世に知らせることを目的としているので、経験者にとって目新しい内容ではない。
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埼玉県の高校教師が、高校生が中退する理由、その後の生活などを丁寧にインタビューしてまとめたもの。問題は大概中学時代から始まっていること、親の問題と経済的な事情が大きいことなど良く知られた事実が多いものの、生徒の側に立った視点は◯。
日本で「高校中退率2−3%」と言われているのは1年あたりの中退者数/総数であり、さらに定時制や通信制への転学者は中退とは見なされない(その後の調査もされない)なので、実際は(3年間あるので)8%以上になること、埼玉の県立高の中退率は13%もあることなど、知らなかったことも多い。
ただ、調査が2006-8年くらいのものなので、実態に詳しい人からは、景気が良くなった今では、運転免許さえあれば非正規の仕事を探すのは高校中退でも以前よりはるかに簡単だという指摘があった。階層化は避けられないにせよ、絶対的な生活のレベルはやはり景気に左右されるということなんでしょうね。
実はアメリカでも「中退率」にはいくつか指標があり、立場によってどれを使うかが違ったりします。政府が問題を小さく見せようとするのは万国共通ですね。