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暗く、重く、悲壮で醜い人の業
2009/11/12 23:59
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:DSK - この投稿者のレビュー一覧を見る
暗・重・悲・鬱・醜……こうした言葉がもたらすどんよりとした空気が全編を包む。今まで読み進めてきた雰囲気は第10巻から薄れていたが、それに輪をかけて暗く重く悲しく鬱で醜い人の業が曝け出されている。所々で脇道に逸れながらも基本的に元ネタをトレースしているようなので人物がばったばったと倒れていく。志半ばで舞台から消えていく。そのほとんどが人の憎悪・妄執・忘我などに基づく醜い所業によるものである。「聖盃」なる得体の知れないモノを奪い合う人間同士が裏切りを重ねる凄惨な争いの果てに訪れる最後の戦い“ラグナロク”とは一体何なのだろう。これだけ人間同士が醜く争った後に世界を救うと言われても虚しくなる。誰もいなくなってから世界が救われて何が得られるのだろうか。世界が救われたら失った命は戻ってくるのだろうか。それともアダムとイヴの頃に戻って1からやり直すと言うのだろうか。それを「救う」と言うのだろうか……本巻を読み終えてからこんなことを思った。その意味では人の内面に潜む悪意のようなものを随分と炙り出している内容である。逃げ場のない虚無、僅かな希望の直後に訪れる絶望。本シリーズの愛読者が決して望まないであろうシリアス過ぎる展開に軽い苦痛を覚える。ここまでくると最早『円卓生徒会』ではなくなっている。あのおちゃらけた軽いノリが懐かしい。あれはあれで軽過ぎるとの辛口もあったようだが振り幅が大き過ぎる。何もここまでヘヴィにしなくても、である。それだけにボーマンの健気でいじらしい素振りが光っている。本巻の実質的なヒロインである。要所要所で出てくるボーマンの言動や想いだけが拠り所である。ようやく人並なヒーロー然と振る舞い始めた(これもまたこれまでのヘタレとのギャップが大き過ぎて違和感がある)亜砂の行動が全ての鍵を握る怒涛のクライマックスを迎えた果てに希望はあるのだろうか。
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