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こういった、世の中を広く捉えたタイトルの本には強く惹かれるのでいつも買ってしまうのであるが、これを読んで社会がわかったかというとそんなことはない。
学者の本によくありがちなことだと思うが、話を歴史から始めてしまって、なかなか本題にたどり着かない。また、学者の細かい論を仔細に分析してしまって、全体感を捉えることができない。社会学とは何かの本になってしまっているのではないか。
そもそも、本の構成(目次)からして本当に社会とは何か理解するために適切とは思えない。
小飼弾が、ノンフィクションの良し悪しは目次の構成を見ればわかるといっていたが、その通りで、カントにしろキンケゴールにしろ、論理的に物事を説得しようとする主張の目次は階層的に構成されている。
で、この人の主張はというと、サブタイトルにもあるように、社会とは固定的なシステムとして受け入れるのではなく、能動的に働きかけるべきプロセスである(べきだ)、ということなのだと思うが、あんまり心に刺さらないのは、そもそも社会が何かということを曖昧にしたまま語っているからだと思う。
とまあ、ぐだぐだ批判していても生産的でないので、以下に僕の社会の理解を記しておく。
社会とはコミュニケーション可能なものの総体であり、コミュニケーション不可能なものを含めた世界とは区別される。異なる社会においても通用するべきルールが倫理であり、社会に閉じた倫理というのは真の役割を果たしていない(ある社会学者の受け売り)。
社会は個人の関わりあいとしての集団の集合として存在し、ここでの関わりあいは主に家族(含結婚)、地域、仕事(労働契約)、自発的結合(友情、恋愛)、政治(選挙、納税等)などから成立する。
こうした関係を構築する力は強制的なもの(政治)、インセンティブによるもの(友情、仕事)、経路依存的なもの(家族)に分かれている。
以下略。
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「『社会』とは何か」というテーマのもとに、「社会」思想の歴史を概観し、かつ移民政策と水俣病を実際のケースとしてみることで、「社会」と「国家」、「コミュニティ」について考察した著。
全体的にやや散漫観が拭えず、前半分と後ろ半分のつながりが今ひとつな気がする。新書にまとめられる内容ではなかったか。
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本書は、社会人類学を専門とし、
現在は国立民族博物館教授である著者が、
「社会」のあるべき姿を考察する著作です
筆者は、ホッブス、ディドロ、アダム・スミス、デュルケーム、コントなど
近代社会科学の基礎を作った思想家たちを概観したうえで、
今日における社会統合の困難の一として、フランスにおける移民問題を紹介。
そして、水俣での市民運動などをてがかりに
上述の社会科学が前提としてきた、
閉鎖的で均質な、システムとしての社会像を批判し
多様性と複数性からなるプロセスとしての社会像の構築を提唱します。
近代の創生期において、複数性に注目したスピノザへの注目や
ハーバマスの公共圏と谷川雁の「サークル村」の類似性の指摘など、
興味深い記述も多くあります。
とりわけ、印象的だったのは、
アルジェリア出身で、マルセイユでラジオ局を経営する
社会活動家S・B氏のコスモポリタンとしての生き方です。
外国人参政権、多文化主義のオーストラリアで起きたインド人留学生襲撃など、
社会のあり方を考えさせられる話題が多い今日において
われわれの「社会観」に再考を促し、よりよい社会の構築に向けた道筋を示す本書。
社会科学に興味がある方に限らず、多くの方にオススメしたい著作です
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社会のシステムから、プロセスへって副題にありますが。
日本の「経済」においては、システムすら未熟 というのが、私の感想。もちろん、政治もねw
って、よむひとによって感想も変わるのかなw
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本書ではまず始めに、ホッブス、スピノザ、ルソーといった17〜8世紀の思想家達によって作り上げられた社会概念を確認する。その後、サン・シモン、コントらによって体系化された社会学を時系列にそって説明している。
「社会はいかにして統合されているのか。(中略)社会をその内部から分裂させている要素は何か」ということは、社会というものを考える上で重要になってくる。
それは、十九世紀までは「貧富の差」や「階級的対立」が主要な原因であったが、「代わって二十世紀の後半以降、主要な課題として浮上してきたのが、文化の違いを理由とした排除の問題」であった。
現代においても主要な問題である「貧富の差」「階級的対立」、そしてグローバル化により表面化した「文化の違い」。これらの課題にいかに立ち向かっていくか。
本書では、パリの中学校において宗教スカーフを着用した女子生徒が学校から追放されるという問題を通して、「文化と社会」ということを考えていく。また、17〜8世紀のヨーロッパにおける「公共圏」、あるいは谷川雁らによる月刊誌『サークル村』において行われた、貧富・階級を超えた自由闊達な議論というものを紹介している。
多様性を認め、議論し葛藤すること。それが社会のエネルギーになる。そしてそのエネルギーによって新たな社会を構成していくという意見は大いに賛成だ。そのような大きな視点に立った上で、個人として社会とどのように関わっていくことが必要かを「葛藤しながら」考えていくことが求められるのだろう。
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前半が社会というものをその認識の歴史に沿って解説しています。以下に章立てを挙げておきます。
第1章 社会の発明―ホッブズ、スピノザ、ルソー
第2章 社会の発見―統治性と社会問題の出現
第3章 社会の科学の成立―社会主義と社会学
それぞれおぼろげながらに見聞きしきたことが1つの流れとして理解できたような気になりました。私はこの手の文章を読むのは苦手で、まあなんとかついていくことができたといった感じですが。
一方、後半は文体も打って変わって、事例による筆者独自の研究です。章立ては以下のとおりです。
第4章 社会と文化―文化の名による排除から社会統合へ
第5章 社会と共同体―複数性の社会へ
4章は100年のヨーロッパにおける移民の受入れとその排除について、5章は水俣病発生時における患者の様子やさーくる村の活動についてが書かれています。
社会学は分析に専念するのではなく、社会問題に対峙し社会にもっと働きかけていくべきだというのが著者の主張の核心であったように思います。
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[ 内容 ]
「社会」という語は、どのような意味や役割を担わされてきたのか。
十七世紀以降のヨーロッパで、それは初め、統治や富の増大を目的に国家が介入する空間として認識された。
後に、貧困・暴力・不衛生など、「社会的な」問題が拡大し、それに対処するための対象となった。
社会を複数の要素からなる複合的なものとしたのはスピノザである。
人が他者とともにより良き生を築くための場という彼の構想に、社会の可能性を読む。
[ 目次 ]
はじめに
第1章 社会の発明―ホッブズ、スピノザ、ルソー
第2章 社会の発見―統治性と社会問題の出現
第3章 社会の科学の成立 ―社会主義と社会学
第4章 社会と文化―文化の名による排除から社会統合へ
第5章 社会と共同体―複数性の社会へ
むすび―多にして一を生きる
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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「社会」をテーマにこの言葉の変化を
歴史的変遷を説明し,事例をあげながら解説している.
君主制の中世ヨーロッパのフランス革命時の「社会」
イギリスなどの工業化が進む時代の「社会」などである.
ひとまず全部読んだが、あとで読み直すことになる.
感想はその時に追記.
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本書は、「社会」という概念の成立を追いながら、現在における「社会」概念をどのように捉えるとよいのかを考察している。
日本語の「社会」という語は明治時代に作り出されたものだが、「社会」という概念の源泉は17世紀のヨーロッパに求められ、近代化と切っても切れない関係にある。竹沢は「社会」概念の成立過程を追い、それによってこの概念がどのように変化したのかを見ている。そして、「社会」を、(国家のみで完結するような)閉じられたシステムとしてではなく、開かれたプロセスとして社会を捉えることを提案する(竹沢は、この考え方に寄与したスピノザを高く評価している)。
今日では、グローバリゼーションの進展により、多くの領域で、さまざまなアクターが複雑に結ばれる関係が以前よりも際立って表れるようになった。それに伴い、「社会」の境界を問うことが難しくなってきている、あるいは境界を問うことに意味がなくなりつつある。言い換えれば、人間と人間の「つながり」の形が絶えず変化しているということである(フランスの社会学者ブルーノ・ラトゥールのように、「社会」はもはや存在しない、と述べる人もいる)。社会をプロセスとして捉えるという竹沢さんの考えは、社会がそのような動的な存在になっているからこそであろう。社会とは何かと問うことは、突き詰めれば、人間と人間の「つながり」とは何かを問うことである。この本は、複雑化した「つながり」を捉える視点のひとつを提供する本として、面白く読めると思う。
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難しかったです(笑)全部の話がとっても興味深かったのでもう一回世界史勉強しなおして読み直したいぐらい!たしかに「社会」ってよく使うけど、その定義って考えたことなかった。「社会」=国家っていう一般的なとらえ方にいろんな視点からメスいれてて、読んでて飽きなかったです。ただし少し話が散漫でした。
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前半を中心に多くの部分を割いて、西欧を中心とした社会学の進展について概観し、後半部分を中心に、「社会とは何か」という問いについて筆者の答えが提示される。
社会学の入門書としては有用であるが、主題である「社会とは何か」という問いに明確な回答が成されたかは甚だ疑問。
今後スピノザなどの古典的名著を読む上での足掛かりとしてはいいのではないだろうか。