紙の本
父は、父、私は私、でも…。漫画界巨匠の三人娘たちによる座談会。
2010/03/16 15:50
21人中、21人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:書痴 - この投稿者のレビュー一覧を見る
まず、朝日新聞の記者が思いついたという、本書のタイトルが秀逸です。タイトルから、それぞれ、誰の娘だかすぐ想像でき、それだけでも、三人の父親の凄さを物語っていると思います。
本書は、「ゲゲゲの娘」こと、水木しげるの次女悦子さん、「レレレの娘」こと、赤塚不二夫の長女りえ子さん、そして「らららの娘」こと、手塚治虫さんの長女るみ子さんたち三人による、各自の父親に対する思い出話、対談集の内容になっています。
有名漫画家のプライベートな話や、仕事にまつわる数々のエピソードが満載、これだけでも興味がわかないはずがありません。一般家庭とは異なった、ある意味特殊な家庭環境で育ったお三方が、幼少期から青春時代を通し、父親とどんな係わり合いを持ち、影響を受けてきたか、そして現在、父親の創造した作品も含め、どのような姿勢で父親と向き合っているかを語ります。
水木悦子さんのお話で、印象に残ったのは、子供時代、姉と父親が漫画のことで喧嘩になり、「お父ちゃんの漫画には、未来がない。手塚漫画には未来がある」姉の手厳しい発言に対し、水木しげるは「これが現実なんだ!おれは現実を描いているんだ!」と返答したそうです。おならや、変な人(容貌も含め)が好き、勘違いのため来る原稿依頼は全て引き受けていたというような、ほのぼのした話が良かったです。
伝説的なエピソードで有名な赤塚不二夫ですが、父親の愛人と一緒にセブ島旅行させられた高校生のりえ子さんの話は、まるで漫画みたいで強烈でした。ディズニーランドの年間パスポートを所持し、エレクトリックパレードが大好きな、意外な一面も知りました。
「とりあえず好きなように、子供が納得するまでやらせる。もし迷っていたら拾ってあげる。それが親の役目だ」という、手塚治虫の教育観は、手塚作品の底流と共通するものがあって興味深く思いました。また、るみ子さんが、赤塚不二夫にホテルに誘われたという驚きの証言もあります。
父親の女性観、好きな音楽、父親に対する愛情、反発、そして父親の作品を後世に伝えるための仕事と、まだまだ話題は尽きません。育った環境は個性的で各人バラバラですが、父親の偉大な遺産を受け継ぐお三方ですとって、共通するのは、父親の仕事(作品)に対する誰にも負けない愛情と誇りが感じられました。
あとがきで、特に心に残った言葉がありました。ご両親が相次いで亡くなってから半ば呆然自失の赤塚えり子さんに、「何度でもお父様のことは話した方がいいよ。気持ちの整理になるから」と手塚るみ子さんが話したそうです。このことは、まさに、本書の背景に流れるテーマだと思います。
文章の下に脚注があり、お話に出てきたキャラクターもきちんと紹介されているので、水木・赤塚・手塚作品にあまり馴染みのない読者にも、読みやすいかと思います。お三方の写真も掲載されており、本文中に、誰がどのキャラクターに似ているかという話も出てくるので、見比べてみてはいかがでしょうか?
本書で、お三方が指摘されているように、メジャーな作品以外にも、全ての作品に思い入れがあり、本書を契機に、もっとたくさんの作品を読んでみたくなりました。
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三大漫画家さんのお嬢さん方の対談。
読んでいて不思議と「ああ、お父さんの話だ」と思った。本当に自分の肉親の話をしているな、と。いや、まんまなんだけど。
それが悲しく切なくなるほど染みて感じられました。
あと、200頁の手塚るみ子さんの
「やっぱ作家は現役で生きててこそだな(後略)」
と言う下りが、りえ子さんるみ子さんの背負っているものをよくあらわしています。
私も代表作しか読まないから、機会があれば小品を読みたいと思います。
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書店で衝動買い。
娘たちは皆ファザコンだけど、お父ちゃんに全く容赦ないなあ(笑)
赤塚家のハチャメチャっぷりと、水木家のほのぼのっぷりが実に対照的。
そして家の子供たちが違う漫画家の作品をほめる親の葛藤はすごかったろうなあと思う。
(手塚氏と水木氏の仲が悪かったって話は……もしかしてこれも理由じゃないんだろうか)
そして、小学生のころ読んでいた「ペックス」が手塚氏の作品だったことを初めて知りました。
……東海林さだお氏だと思ってたよ…完全に……。
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漫画たちと素の姿が見え、有名人の子に生まれてしまった女の子のたちの成長物語としても楽しめます
http://life--design.com/book/2010/03/post-73.html
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手塚作品、水木作品には親しんでいるが、実は赤塚作品を余り読んだことがない。
「レッツラゴン」を読もうと思いました。
古本しかないので全巻買うとすると万単位に…。
文庫で復刻しないかしら。ムツカシイのかな…。
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偉大な漫画家でも娘にとってはただのパパ。
水木家ははやっぱ親子仲が飛び抜けていいな。
手塚先生はもっと長生きしていろんな作品を見せて欲しかったなあとよく思う。
でずにーの衰退とかをどう感じたんだろうとか気になる。
赤塚先生は私はおそまつくんとかもーれつア太郎とかバカボンを子供の頃に
少し見た程度であまり知識はない。
でもかなり自由奔放で父親としては…って感じた。
水木先生の作品は朝ドラの影響で読んでみようと思ってたけど、
手塚先生も赤塚先生も読んでみようと思った。
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偉大な漫画家である前に、娘達にとっては一人の父だった。その上で著名人の父を持った葛藤や、尊敬の念がある。見方がそれぞれ愛にあふれていてあたたかい。年を重ねてきたからこそわかる、父の、そのときそのときの気持ちを想像し、受け止めようとしていて、いいなと思った
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もう、まずはタイトルが秀逸ですよね。
ほとんどタイトル見ただけで衝動買いしちゃいました。
『ゲゲゲの女房』がNHKの連ドラになっている時期なので、二匹目のドジョウ狙いかと思ったら、全然違ってました(^^;
水木しげる、赤塚不二夫、手塚治虫の娘による鼎談集です。
水木しげるは存命ですが、赤塚・手塚のお二人は鬼籍に入り、すでに新しい作品を生み出すことはできないわけで、自分の中ではどちらかというと“過去の人”だったのですが、娘さんたちはそれぞれの形で父親の作品を再生産しようとしています。
流行り廃りの激しい世の中で、その試みが功を奏すかどうかはわかりませんが、はっきりしているのは3人揃ってファザコンだな、ということですね。
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偉大な漫画家三人の別の一面が語られるとともに、父と娘の関係、人生における父親の存在感についても語られている贅沢な対談集。
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奥様が書かれた『ゲゲゲの女房』を読み終わったので、では今度は娘さん側からと思い購入しました。
いや〜娘だと容赦ないですね(笑)
でも皆さん、お父さんが大好きなのがよく伝わってきました。
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天才漫画家である父親を娘視線から解剖した対談集。どんなに天才でも父であり、人間臭くもあったんだと、心がほっこりする。特に漫画そのものの生き方をしていたらしい赤塚不二男氏の赤裸々な人生にびっくりした。
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朝ドラ「ゲゲゲの女房」を楽しく視聴中なので、関連した本が読みたくなって借りた本。朝ドラの原作本そのものは図書館で114人待ちという、まあ、予想通りな展開だったわけですが。
とはいえこの本はこの本ですごく興味深かったです。タイトルが秀逸というほかなく。手塚、赤塚、水木の3人の娘さんの対談集。テーマはおとーさん。
接点の程度はともあれ、身近に“天才”(多くの場合は天災と紙一重だったりする)がいると、インパクト大きいだろーなー。
皆様おとーさんを尊敬していて、そしておとーさんを好きなのですね、という対談でした。
それぞれの作品をよく読み込んでおられて、作品の内容をすごく的確に語られている、というか。
手塚漫画の女性観についてとか、水木作品の「どんなに便利な世の中になっても、最後には棺桶が用意されている」という要約とか、言われてなるほどーと思うわけで。
水木家はファミリーな感じで、赤塚家はナンセンスなところがあって、手塚家はクオリティ高いなーという感じで……三者三様なのですが、互い同士だから共感できるところもあるっぽく。
対談だから時間を区切って会話となるわけですが、掘り下げるべきところは結構いいところまで掘り下げて語っていて、よくここまで話せたなーという内容でした。赤塚-手塚ラインの娘さん同士が仲良さげで、そこからふくらんでる雰囲気だから話が弾むのかしら。
しかし赤塚不二夫って不思議な人だったのですね……思わずWikiで調べてしまいました。トリッキーすぎる。
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1日で読みきってしまいました。娘だから知ることの出来る父の姿を対談形式で書いてるんですが、あんまりイメージに無かった。と言うのは少ないかな。でも、作家さんや編集者の無茶ぶりには本当に数十年前のこと?と疑ってしまう。やっぱり傑作の裏にはそう言うエネルギーが必要だったんだろうな。
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手塚治虫、赤塚不二夫、水木しげる。日本でこの三人の名を知らない人はいないでしょうね。
その三人の娘の対談集です。
偉人の家族という苦労話と誇りが満載で、逸話は「さすが漫画の神様!」と思うような物が多いですが、それでいて少年のようでもあり、娘との接し方に悩む父親でもありました。
手塚先生は神であり王でもある、といった感じ。生活水準が高いですよね。破産しても、家族に惨めな思いは絶対にさせないという強い意志があったと思う。
赤塚先生の娘さんは、すごく血を強く受け継いでいるんだなぁ…と。普通なら父を憎んでも仕方ないようにも思うのに、後妻ごと一緒に愛せるところが凄すぎる。
水木先生は若い頃に一番苦労されたと思うけれど、堅実・誠実・確実な幸せを手にされていると思いますねぇ。ほっとする存在でした。
娘チョイスの短編は、娘から見た父親の姿というより、娘がどのように育ったか、という家庭の事情が滲み出ているようで面白かったです。
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3人とも有名漫画家の娘さんということで、幼少期に学校でちょっと嫌な思いをしたり、娘であることに重圧を感じられた時期もおありのようですが、全編からお父様のことがそれぞれ大好きだというのがよくわかりました。
私の父は漫画家ではありませんが、モノを生み出す仕事をしているので、3人の娘さんのお父様との距離の取り方が参考になりました。
本のタイトル、『ゲゲゲの娘、レレレの娘、らららの娘』は、朝日新聞の記者の方が就寝中に思いつかれたそうですが、何とも端的な表現で、素晴らしいタイトルだと思いました。