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本書は、官能小説研究の第一人者である著者が、
官能小説について概観する著作です。
2部構成を取っており、
1部では、川上宗薫、藍川京さん、中村嘉子さん、草凪優さんなど
代表的な官能小説作家を紹介し、官能小説の変遷を追うとともに
そこに描かれた社会や家族、男女の姿を検討します。
つづく2部では、「OL系」「スポーツ系」など、官能小説のジャンルや、
官能小説特有の表現をつぶさに分類・解説します。
『四畳半襖の下張』事件、『チャタレイ裁判』で「わいせつ」と指摘された部分や
近年の男性の嗜好など、全く知らなかった話が多く興味深かったですが、
個人的に、もっとも印象的だったのは、
創作のために多くの女性と関係を持った川上宗薫が
ガンで亡くなる間際に、『死にたくない』という闘病記を記したという記述です。
いやらしさよりも、とにかく著者の官能小説への愛が伝わる本作。
著者と同じように官能小説が好き…という方はもちろん
教養として知っておきたいという方には、つよくオススメの一冊です。
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大人の日記を書いている僕としては読まずにいられない本でした。「教養」という文字が僕に自信を与えてくれました。おかげでレジでは堂々と綺麗な女性店員さんに表紙を向けて差し出すことができました。
さて、内容ですけど2部構成でして、僕は第1部の「官能小説の歴史」が大変興味深く読むことができました。第2部はジャンル別の分析ですね。
一つ気になったのは、やはり男性の視線で書いてあるということです。実際には官能小説で感じてらっしゃるのは女性たちが圧倒的に多いはずだからです。
女性は堂々と書店で官能小説を買うことはないでしょうけど、実際にはネットでこっそり読んでる方が多いと思います。そういう点にも触れてほしかったなあ〜と思いました。
それでも貴重な資料となる1冊であることに間違いはありません。
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[ 内容 ]
美少女から人妻、熟女、女教師、くノ一に尼僧。
少年ものに性豪もの。
凌辱系から癒し系まで―官能小説の世界は、欲深い読者たちの嗜好に応じて多種多様なジャンルの作品が淫らに咲きほこっている。
人びとの想像力を喚起し股間を刺激するために…。
こうした百花繚乱の表現世界は、いかにして形成され成熟したのか。
本書では、戦後の官能小説史を丹念にたどり、一時代を築いた優れた作家たちの名作と、彼らが骨身を削って生み出した表現技法を紹介しながら、この秘密に迫る。
[ 目次 ]
第1部 官能小説の歴史(カストリ雑誌からSM御三家へ―官能解放!;性表現の取締りは何をもたらしたか;ポルノ躍進の時代―北原武夫から川上宗薫へ;発禁本のセックスシーン;ポルノ六歌仙の時代;官能小説の隆盛―大衆化の時代;女流ポルノ登場!;大革命の時代―文庫シリーズ誕生!;おんなの時代の官能表現;群雄割拠―女のイマジネーション、男のテク;癒し系の時代;百花繚乱の官能小説)
第2部 官能小説の妄想力―ジャンルと表現技法(女の年齢によるジャンル区分;男の立場によるジャンル区分;女の職業によるジャンル区分;官能小説の文体;ジャンルの流行りすたり;時代官能小説のジャンル)
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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なんか思ってたのと違うかな~。まあ、面白いからいいが。現代よりももっと古い方に焦点合わせて欲しいな~
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全体は大きく2つの柱に沿って構成されている。
1つは官能小説の歴史であり、全体のだいたい7割くらいを占めている。
歴史的な変遷や、それに伴う作者の紹介が行われているがやや短調で退屈な部分があることも否定できない。
ただ、戦前、戦後に摘発を逃れる工夫の中から、今の多様な表現が生まれた、というくだりは面白かったしためになった。表現の自由が規制されれば、あらゆる巧妙な手段を使って全く別の形を探してでも、表現することを求めるものなのかもしれない。
もう1つはジャンルと表現技法についてまとめらている章である。
官能小説はその時々の時流を敏感に読み取ってその内容や文体を変える、と筆者は述べており、その観点から官能小説を分析しているところは興味深い。昨今「草食系」が流行っているが、その風潮もやはり官能小説に反映されているのだとか。
新しい見識が得られる書であるので、一読の価値はあると思われる。
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さらっと読める。
新書にありがちな構成ではあるが、官能小説からの引用や第二部の考察に関しては大変興味深い。
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十年一日のごとく見えて、社会の変化を取り入れている官能の世界の面白さを垣間見られた。ジャンルが多様で非常に奥が深いと感じた。
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逗子図書館にあり
官能小説と一口で言っても、実は色んなジャンルがあるんだな、と知った。
代表的な官能小説が紹介されているので、興味を持った人は、片っ端から読んでみる指南書になると思う。
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東大の仏文科出身(他にも京大や九大、早稲田)であったり、芥川賞の受賞歴のある官能小説作家がいたのは、やや意外だった。それは、そもそもが官能小説に対して偏見を持っていたからに他ならないからなのだろうが。荷風の『四畳半』から最近の作品にいたるまでが紹介されていて、それぞれの文体や語彙の工夫の跡はわかるが、あまり変わり映えがしないような…。
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官能小説という分野を、2つの視点から説明している。第1部は歴史の流れを追う。第2部ではジャンルの細分化を試みている。
性を超えて、文学として語ることは可能であるか?疑問を持つ。男女が持つ、本能をそのように表現すれば良いか?性交の描写の技法やタイトルは様々に工夫されている。嗜好と創造は方向性を持つのだろうか?
歴史、カストリ雑誌が取り締まり、発禁の時代を経て「ポルノ」として大衆に受け入れられる。女流作家が登場し、文庫として、消費の時代へ、さらに出版(発表)形態も、百花繚乱になる。
ジャンルによる分類として、外観的な区分をしている。1女の年齢2男の立場3女の職業。また、主観的に、4文体5流行6時代官能小説
52
ぐっと股間にこたえる表現
117
男性読者の股間を直撃する淫猥表現
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日本の官能小説の歴史を綴った本。キワモノ常套と読んだがキワモノでした。
しかし真面目にプレイ内容解説されると勉強になる部分もある。気がする。
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官能小説を書いたものであるが、歴史が書かれているが、図書館でも調べられるものが多かった。
また、後は、官能小説の羅列で、面白さもなかったが、作家の実像などは、面白かったです。
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ネタバレ 2010年刊。耳目を引くためか、よく見かける表題「教養としての…」を用いるが、戦後の世相・世俗分析、官能小説家の文体・作風の特徴、世相と官能作家との関係性を著す(後半の一部はキャラ属性や関係性の特徴を述べるが)。構成や引用箇所、小見出しが明快で読みやすい。小説表現に常なるリアルさは不要だろうが、本書指摘の官能表現の誇張(男性作家に多い)は確かに興を削ぐこと甚だしい。また、肉食女子の氾濫を男性が忌避し、癒しを現代の官能小説に希求、とは得心。ただ、BL、LN系やハーレクイン的官能小説の言及なく、やや偏頗。
種々の定義がありうるところが、猥褻概念、そしてその摘発基準の変遷も、さわりではあるが本書で感得できる部分はある。現代のそれと摘発文献との比較をすれば、現代のそれの方が一層猥褻であるのは一目瞭然なので…。
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官能小説評論家 永田守弘氏による官能小説の歴史です。第1部では、官能小説の変遷を追いかけながら重要な作家の紹介とその当時に流行(?)していた性癖についてまとめられています。第2部では、官能小説のジャンル分けについてまとめられ、それぞれの代表的な作品や作家が短いですが紹介されています。抜粋ではありますが、紹介作品の濡れ場の一部が引用されているのが特徴だと思います。文学の本流から外れてしまう官能小説を体系的にまとめたという意味で貴重なものです。思っていた以上に時代の流れに敏感な業界なんだなと思いました。
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官能小説の歴史と代表作家のカテゴライズで終始。引用箇所が偏っていて筆者の趣味嗜好が伺われる。ある意味定点観測で作家の違いと特徴がわかる仕掛けにはなっているのが良いとは言えるが、そもそも現行作家の中では大した違いはない。団鬼六、宇能鴻一郎のような飛び抜けた特色と文体はむしろ何も規制のない現代であるにも関わらずしぼんでしまっていないか。
自分としては今だに半村良の性表現が最上に淫靡である。続いて夢枕獏がくるが、結局いずれも官能小説専任ではない。
つまりそういうことだ。