紙の本
事件は「神」に導かれて解決していく………ともいえる。ハント「マスティーとはなんだ」ジョニー「インディアンと黒人の混血だよ。………インディアンの奴隷もいたんだよ。知らないの?」ところでマスティーの「神」ってキリスト教の神とは違うんだろうなぁ。
2011/03/19 16:20
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:よっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者のジョン・ハートはノースカロライナ州の生まれだそうだ。ノースカロライナ州レイヴン郡がどんな土地柄かは知らないが、ここはちっぽけな田舎町。それでも貧困、売春、麻薬、異常性格者や小児性愛者による犯罪の多発、格差社会、ドメスティックバイオレン、などなど、どこにでもあるのかもしれないアメリカ犯罪小説のモデル的基点である。
ただ今まで読んだミステリーにはなかった地方色としてインディアンが相当ひどい迫害をうけた怨念が残る地らしい。この郡の解放奴隷第1号はインディアンと黒人の混血奴隷であり、その血を引く男(リーヴァイ・フリーマントル)と当時の奴隷解放運動家の血を引く少年(主人公のジョニー・メリモン)との因縁、神がかりなもつれ合いがストーリーのバックにあることは見逃せない。
「少年ジョニー(13歳)の人生はある事件を境にして一変した。優しい両親と瓜二つのふたごの妹アリッサと平穏に暮らす幸福の日々が、妹の誘拐によって突如失われたのだ。事件後まもなく父が失踪を遂げ、母(キャサリン)は薬物に溺れるように。(しかも町の実業家ケン・ホロウェイの愛人となりその暴力になすすべない毎日)少年の家族は完全に崩壊した。だが彼はくじけない家族の再生を信じ、親友(ジャック・クロス、父は町の警察官で長男を溺愛するが障害を持ったジャックには暴力的。母は狂信的なキリスト教信者。つまりこの家庭も崩壊している)とともに妹の行方を捜し続ける。」
インディアンの歴史に通じその呪術に魅せられ、それで勇気を奮い立たせ、
執拗にアリッサの行方を探索する少年。彼をを見つめる町の人たちの視線は冷たい。アリッサ失踪事件に責任を感じ、少年ジョニーと母キャサリンに心を寄せる刑事・ハントがその探索を助力するが、ジョニーは誰も信用しない。警察組織をはみだした一匹狼のハント刑事もまた仕事師がゆえに妻は離れ、一人息子との仲は険悪である。
そして小児性愛者による別の誘拐事件が発生し、その周囲からは大量の死体も発見される。
単独犯か、警察内に協力者がいるのか?
アリッサはその犠牲になったの?
まだ生きているのか?
脱獄囚・リーヴァイ・フリーマントル(この人物造形は異色である)は事件とどのように関わっているのか?
謎は次々と提示される。
アリッサの生存を信じているジョニーの必死の探索によりひとつひとつと謎が解ければ、さらに新しい謎へと展開する。サスペンス小説の醍醐味がここにある。
そして事件の真相は思いがけないところにあった。
家庭崩壊と再生、愛憎の絡み合う人間ドラマではある。アメリカの暗部や警察組織の保守性等々社会性。いかにも多くの現代アメリカをえぐるテーマで、てんこもりされているように見える。だが最近の小説には、これらのテーマをもっと鋭く丁寧に描いたものがいくらでもあるから、それだけでは新鮮味に欠ける作品になってしまったろう。
この小説の魅力はノースカロライナの地方色が投影された特異な性格を持った少年、彼による真相の追求、その迫力あるプロセスにつきる。
周囲からつまはじきにされた少年の孤独をひしひしと感じ、家族思いのけなげさに心を揺さぶられながら、インディアンの怨念に思いをはせる。
久しぶりにぐいぐいと引き込まれる本格サスペンス小説だった。
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ジョン・ハートの最新長編。期待に違わず面白かったです。
一年前に双子の妹が誘拐され罪悪感と絶望で父親が失踪、支えを失い残された母は土地の有力者につけこまれて無気力状態。残された最後の子供(The Last Child)のジョニーは13歳の少年ならではの生真面目さで独自に妹の行方を捜し続けていますが、、、。物語は担当刑事ハントとジョニーの2人の視点から交互に語られて進行。前2作同様に設定はやるせなくつらく悲しく作品全体の雰囲気も重いのですが、今回少年が語り手であることもあってか、読後感は意外にも爽やか。読み終わってタイトルの妙に改めてうなりました。
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前作の時も思ったのですが、主人公役以外、メンタリティが弱いキャラばっかりなのが気になって仕方ない。とりあえず下巻へ。
単純にこの著者の作品は好みでないだけの気がしてます。
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上巻なので特に引用はなし。
とにかく、息をつかせない。
それでも、どこか希望を見出させてくれるのはなぜなんだろう?
とてもドキドキしまくった。
ジョニーを、お母さんを、ハントを物凄く身近に感じてしまった。
とにかく新境地開拓のつもりで買ってきたわけなのだけれど、当たりだったかも!
ホントは最初SF!?
って思ったのだけれど違いました。
まさに本格ミステリ!!
それでも、そこには人間関係の細やかな描写が!
とにかく先が気になりまくる1冊。
アリッサ、もしかしたら生きているのかな。
どこかで出てきてくれるのかな。
それとも、先には絶望しかないのかな。
もうジョニーは天涯孤独になってしまうのだろうか。
あぅあぅ、下を読まなければ!!
【6/10読了・初読・個人蔵書】
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コテコテの洋物ミステリー。
なんというか、大味なんですよね。
なかなか惹きつけられるシチュエーションがなく・・・
うーむ、下巻に期待しましょう。
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前作「川は静かに流れ」も良い小説であったが、
本作も非常に優れた品質の作品。
プロットが素晴らしく、
一気読みさせられてしまう。
不安、恐れ、悲しみ、葛藤、
信頼、愛情、友情、赦し。
様々な感情を追体験する、
ミステリの範疇を超え広く愛されるであろう作品。
早川書房創立 65 周年 & ハヤカワ文庫 40 周年記念作品。
2010 年 アメリカ探偵作家クラブ賞(MWA賞)長編賞受賞作品。
2009 年 英国推理作家協会賞(CWA賞) イアン・フレミング・スチール・ダガー賞受賞作品。
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電車乗り越したぜぃ
絵が見える、けど終わりは見えない!キングみたい。でも頭重苦しい感じは若干弱し。にしたって重い話なのにどっぷりつかっちまった。
面白かった!
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海外作品は苦手なんだけど、週刊ブックレビューで見て面白そうだったので。はじめはとっつきにくかったが、途中から引き込まれた。続きが気になり一気に下巻へ。
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双子の妹の誘拐事件をきっかけに、家族が崩壊した哀れな少年。妹を見つけ出し、家族の再生を夢見て闘い続ける姿が健気で、胸が打たれる。
キャサリンやハント刑事、リーヴァイなど、他の登場人物がどのように交差し、そしてどのような結末を迎えるのか非常に楽しみだ。
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1年前に双子の妹が誘拐された兄、少年ジョニー。事件後に、父が失踪し、母が薬物におぼれる中、失われた妹=幸福な生活を取り戻すため、怪しい人の地図を作成し、一つずつしらみつぶしに調査していた。その調査には、彼の親友であり、妹が誘拐されるシーンを見ていた少年も付き添っていた・・・。
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誘拐された双子の妹アリッサ。
彼女の誘拐をきっかけに幸せだった家庭は崩壊する。
母と息子を置いて失踪した父。
全てを失い酒と薬に溺れていく母。
そしてそんな過酷な状況でも、妹の無事を信じ
家族の再生を願う息子ジョニー。
あまりにも儚く残酷な設定だが、信念を曲げないジョニーの姿に
どこか救われる想いが生まれる。
次から次へと出てくる一筋縄ではいかない登場人物たち。
謎が謎を呼ぶ展開。
まさに息つく暇なしのミステリーの傑作である。
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双子の妹アリッサが行方不明になって1年。
少年ジョニーは探し続けている。
近くで捕らわれのまま生きていると信じて。
10歳ぐらいにしか見えない13歳の男の子の頑張りように応援せずにはいられません。
娘を一人にしたと妻に責められた父は出奔、母キャサリンは酒浸りとなり、言い寄ってきた金持ちの男ケンの言うなりに。
調査に当たった警官クライド・ハントもまた、人生を狂わせていた。
あまりののめり込みように半年で妻が去り、高校生の息子アレンとは上手くいかない。
同僚にも半ば引かれている有様だったが…
ここへ来て新たな展開が?
同じ学校の少女ティファニーが行方不明に。
事故現場に行き合ったジョニーは、倒れている男が死に際に「あの子を見つけた」というのを聞く。
たった一人の親友ジャックと共に懸命な探索を続けるジョニー。
スリリングで引き込まれます。
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2月13日読了。ミステリーマガジン2011年版海外1位。このミステリーがすごい2011版海外5位。展開早くて読みやすかった。
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2011年このミス1位の文庫化上巻。主人公は13歳なのに、車は運転するし、銃は持つ。う~ん。。。アメリカって怖いところだな。。。
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「キングの死」でデビュー、「川は静かに流れ」が、日本でも評判をよんだジョン・ハートの第三作。双子の妹が誘拐され、父も失踪。まもなく母親は薬物におぼれるようになり、地元の実業家が家に出入りするようになる。すっかり崩れてしまった家族。ジョニーは妹の行方を追い続けるのだが。ポケミスと同時発売。文庫上下巻と同価格というのが面白い。でも、ポケミスのイメージとはちょっと違う作品なのではないかと思ったりもします。下巻に続く。