紙の本
現代の恐怖の語り部作家誕生だ。
2010/05/10 19:11
8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:野棘かな - この投稿者のレビュー一覧を見る
実話怪談という言葉にちょっと違和感を感じていたので、入賞作品がどのような内容構成なのか、どこまで本当で、どの辺まで書いちゃうのかしらと興味深々だった。
この本は、第一回「幽」怪談実話コンテスト入選8作品すべてと入賞者8人が新たに書き下した各1篇を含めそれぞれ2編ずつ、14作品を収録したMF文庫ダ・ヴィンチ怪談シリーズ「幽」編集部編の本だ。
BK1から届いて2日後、何気に、それほど期待もしないで読み始めたのだが、意外な面白さに驚いた。
実話怪談というジャンルでありながら、一等最初の「黒四」という骨太の小説やワンステップ上の語り部怪談とでもいうような枠を超えた作品に怪談の可能性を感じた。
三輪サチさん、谷一生さんなど、本当にあった怖い話、不思議、事実、記憶、調査内容などをきっちり混ぜ込み織り上げる現代の恐怖の語り部作家誕生だ。
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この本、FM東京の「東京ガベージコレクション」のプレゼントに応募して当たったものなんですよ。なので、宍戸レイと平山夢明のサインがあり、京極夏彦の「幽」という字が入っています。感激。
怪談やホラーはあんまり得意じゃなくて普段は読みません。この本もちょっとドキドキしながら覚悟して読んだのですが、意外に恐くなかった。黒木あるじの「ささやき」という1頁の作品が、一番キレがあったように思います。
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雑誌「幽」で開催された怪談実話コンテストなるもので、傑作選を拾って1冊の本にまとめた、というもの。名だたる「超怖」シリーズやら「新耳」「九十九」あたりと比較してしまっては相当に分が悪い、というところは否めないが、それでもそこそこ怖いし読ませる話もある。タイトル作は高評価だったようだが、個人的にはさほどでも。
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うーん。怖くなかったw
実話縛りのせいだろうか。
それとも、私が「怖い」と感じるのは、未知なるものではなくて、「他人を怖がらせよう」と思う気持ちなのかもしれないね。
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黒木あるじさんの話がダントツに面白かった。
以前アンビリでみた『見ると死ぬ面』(呪われる だっけ?)を思い出す。
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『怪談実話コンテスト傑作選ー黒四くろよん』 (メディアファクトリー文庫)
怪談専門誌『幽』の公募による、「第一回『幽』怪談実話コンテスト」の入選作家8名の、書き下ろしを含めた16編の作品が収録されている。
さて、大賞受賞作は。本のタイトルにもなっている「黒四」という作品である。
実はなんと、作者の三輪チサさんは、私の高校の部活の先輩なのだ!
私たち後輩が一番喋りやすかった優しい先輩で、その人柄は文章にもにじみ出ている。
タイトルの「黒四」とは、黒部第四ダムのことだ。
話の舞台は昭和31年の黒四ダム建設現場。
幾度も映画やドラマにもなるほど、同時代に類を見ない過酷な工事だった。
「父」というのは先輩のお父さんだろう。
お父さんが実際に体験した本当の話である。
「雪と氷に閉ざされた山の中、岩盤から染み出す雪解け水に腰まで浸かっての掘削作業」
「凍った作業服」
そんな描写で、もうすでに現場に自分もいるような気分になってしまい、思わず身震いした。
そんな冬のある日、機械を修理するために水の中に腕を差し入れたお父さんは、その手の先に、冬の初めに重機に挟まれて死んだ仲間の顔を見た。
翌日、その男の幽霊が、大事故から現場の仲間たちを救う。
実話だというだけでじわじわ怖い。
真面目で朴訥な語り口や方言が心に響く。
こういう作りモノではない説明のつかない現象は、悲鳴を上げるような怖さとはちょっと違う。
誰かが後ろからそっと自分を見ているような……
そういう身近さが実話怪談の怖さだと思う。