紙の本
暮らしやすい都市を作り出すのは、実はわれわれ自身であるはずなのだ
2011/11/30 04:14
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:良泉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
現代の“機能的”とされる大都市の数々が、いかに魅力のないものであるか。現代の“先進的”とされる大都市の数々が、実際はいかに暮らしにくいところであるか。
人口の大部分が「都市」に暮らす現代の我々は、実は、このことをすでに感じ初めているはずだ。気づかない振りをしている人々も含め、素直に自分達が作り出してきた「都市」を振り返ってみることが、大切なのではないか。
われわれは、何を、どこで、間違ってきたのだろう。
その答えを導き出す上で、大きなヒントとなるものが、本書にある。ずっと昔に、日本とはずいぶん離れたアメリカの一都市で記された本書に、すでに、現代の日本の「都市問題」の本質が記されている。
そのエッセンスともいうべき部分が、最後の訳者解説に適切に記されている。
『都市の本質とは、お互いに知らない人々が集まって、過度に干渉せずに関係を築けるということだ。その関係が、街路という公共的な場所を核として発達する。そしてその街路の公共性を保つのは、そこに張りつく多様な商業経済活動と、それが生み出す「ついでの」活動だ。・・・用途規制や巨大開発などを通じた土地利用の純粋化は、そうしたついでの活動を殺し、街路を殺し、結果として都市を殺してしまう。目に見える単調さやつまらなさは、その結果でしかない!』
「ついでの」活動がしにくい都市、「ついでの」活動を起こす意欲を持たせない都市は、やはり、つまらない。
われわれが作り出してきた都市の欠けていたものは、一見無駄に見える「余裕代」の部分だったのではないか。キャパシティが不足していたのではないか。
時代も地域も違うお手本を、一から十まですべて今の我が国に当てはめることは、当然、妥当ではないし、すべきことでもない。むしろ、そんな処方箋は、きっと病を悪化させる。
しかし、本書に記されたジェイコブズの4条件は、決して無視はできないし、今の我が国にとっても、大いに参考になる、すべきものである。
少し長いが、引用する。
『都市の街路や地区にすさまじい多様性を生み出すには、以下の四つの条件が欠かせません。すなわち、
一、その地区や、その内部のできるだけ多くの部分が、二つ以上の主要機能を果たさなくてはなりません。できれば三つ以上が望ましいのです。こうした機能は、別々の時間帯に外に出る人々や、ちがう理由でその場所にいて、しかも多くの施設を一緒に使う人々が確実に存在するよう保証してくれるものでなくてはなりません。
二、ほとんどの街区は短くないといけません。つまり、街路や、角を曲がる機会は頻繁でなくてはいけないのです。
三、地区は、古さや条件が異なる各種の建物を混在させなくてはなりません。そこには古い建物が相当数あって、それが生み出す経済収益が異なっているようでなくてはなりません。
四、十分な密度で人がいなくてはなりません。何の目的でその人たちがそこにいるのかは問いません。そこに住んでいるという理由でそこにいる人々の人口密度も含まれます。』
都市を無機質にする無謀な開発行政と、生涯闘い続けた“ただのおばちゃん”ジェイコブズ。われわれがこれまで従ってきた“権力”というものの無力さ、無能さがよくわかる。
いまの都市の大きな病を治すために必要なのは、権力に浸りきった都市計画ではない。庶民の感覚なのだ。
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今から50年以上前に、都市における「多様性」の必要性を説いた一冊。これは完全訳で2010年に発売された新装版。現代でも通用する都市論の傑作の1つ。
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それまでの都市論を批判し、とにかく生の都市の機能について書かれている。これは学者でなく市民活動家のジェイン・ジェイコブスならではの視点。
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とにかく多様性の必要性について書かれている。多様というといかにも複雑そうで、これまで都市計画が推し進めてきた秩序と相反するように聞こえる。
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本書では都市の多様性を単なる無秩序、統計学的に扱う問題でなく、複雑には見えるが個々が相互に関連し合う組織だった複雑性として扱う。それは当時台頭し始めた生命科学の考えと共鳴している。
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キーワードは多様性、街路、高密度など。
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他の都市論と違い、描写される都市のイメージからリアルなとし生活が想像できてしまうのがこの本のすごいところ。
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都市計画に隠された4つの嘘
http://ymkjp.blogspot.jp/2013/02/4.html
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詳しいレビューは訳者解説に分かりやすくまとまっている。今日では自明のコミュニティやネットワークの重要性、そのために時間をかけるプロセスの重要性についての主張がみられるほか、都市での観察により居住者と都市の関係性を細かく分析されている。詳細なデータは示されていないため提起されたものは概念的なものにとどまるが、既存の都市計画理論を無批判に取り入れていた当時の時代背景においてはジェイコブズの批判は思想として極めて重要なものであっただろう。
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クソ長い!!二段組で500ページ。山形浩生の訳じゃなかったらとっくに読むのを放棄してるとこだった。後半は根性だけで読んだ気がする。そして最後の訳者解説のわかりやすいこと。本書3500円だけど2000円ぐらいは解説に払った気がする。都市は生物なんですね。というところでこの間読んだ「世界は分けてもわからない」とすごい繋がるところあるなと思った。
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今この本を読むとジェイコブズが都市計画の思想に複雑系やシステム論を入れようとしていたことがわかる。最後の「都市とはどういう種類の問題か」の章を読むとより明確になる。
科学思想の歴史の要約と解釈として参考にしたものはウォーレン・ウィーバーのロックフェラー財団の自然科学・医学部門の退任の際の「ロックフェラー財団 1958年年次報告」
ウィーバーの科学思想の歴史の発展の三段階。
1 単純な問題を扱う能力
2 まとまりのない複雑性を扱う能力
3 組織だった複雑な問題を扱う能力
単純な問題とは違いの行動に直接関係がある二つの要素ー二つの変数ーを含む問題で、これらの単純問題は、科学が最初に取り組みを覚えた種類の問題。
ひどく単純化して、科学的技法は極端から極端へと移り、広大な中間領域は手つかずのまま。変数が中間程度で相互に関連している。
現実には野蛮人と農民は伝統に縛られ、社会階級にとらわれ、詠進にとらわれ、疑惑に悩まされ、何であれ見慣れぬものを恐れ、最も自由のない人たちです。
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集団的記憶喪失の愚。
中世の中国は世界一の先進国。
文明の五本柱①コミュニティーと家族。②高等教育。 ③科学とそれに基づくテクノロジーの効果的実践。 ④税と政治の力。 ⑤知的プロフェッショナルによる自己規制
住宅や自動車を低利&長期ローンで建てさせる政策→市民を奴隷にする策
市民や物資の殺人的な大量&高速移動は致命的。cf. ガンディーも高速輸送を否定していた。
人間の養育に効率や経済の物差しは当てはまらない
豊かさが社会全体に行き渡らないことは自らその文化を虐殺することである。
農業に代わる資源とは、創意工夫の才=人的資源の開発である。
最も危険なのは、支配的内部からの腐敗、新しい文化に適応できないことである
石油が全ての問題を露呈させた。 ①コミュニティーの破壊 ②環境汚染 ③森林資源
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アメリカ大都市の死と生
(和書)2011年08月20日 14:07
ジェイン ジェイコブズ 鹿島出版会 2010年4月
最近は近代建築の巨匠と言われる人たちの著作や建築作品をみていた。今回は全く違った見方をするジェイコブスさんの本を読んでみた。確かに面白いと思う。
ジェイコブスさんが最後の方に書いた部分が印象に残った。
『・・・自然を感傷的に捉えるのは危険です。ほとんどの感傷的な発想は、気づかれないかもしれませんが、その根底に根深い敬意の欠如があるのです。おそらく世界一自然を感傷的に見ているわたしたちアメリカ人が、おそらく世界一貪欲で冒涜的な、野生と田園地方の破壊者でもあるのは、偶然ではありません。・・・』
訳者解説にあるアマチュアについての話も面白かった。
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とても50年以上前の著作とは思えない名著。しかも、専門家ではないアマチュアにしてこの洞察力。街のにぎわいの創出など、昨今求められているまちづくりの考え方が、既に明快に示されている。恐るべき慧眼。都市は複雑系である、このことを肝に銘じたい。
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1961年に書かれた都市計画、街づくりのバイブルともいえる本。建築学生ならぜひ読んでほしいという本のひとつ。著者は作家兼活動家のジェイン・ジェイコブズである。当時、都市計画の専門家ではなかった彼女が近代都市計画への痛烈な批判、都市の多様性の魅力を語った一冊である。都市の使い手の一人としてどのような街が心地よい街なのかをぜひ考えてほしい。 建築学科4年