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歴史小説家が描く近未来戦争物ファンタジー。
切り口や手法はこれまでの彼の歴史小説の作品まんまだけれども、「移植」はそれなりに成功していると思う。これは佐藤さんの良い寄り道。
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この作者が、歴史物以外を書くのは珍しいなと思っていたら、歴史物ではない最初の作品だそうだ。現代ではなく、近未来を舞台として、まさにタイトルの通りの戦争の話である。
戦争の血なまぐささ・悲惨さと、作者独特のユーモアのある軽快な語り口がミスマッチで、するすると読めてしまう話である。しかし、そこに込められた批判精神は、読んでいてズキリとするようなものだ。こんなふうに、現代の超大国アメリカを解釈していいのかなと思ってしまうほどだ。
実際に言われてみると「そうだよな」とうなずいてしまう見方で、例えば今の大統領選挙への感想などが、一気に変わってしまった。歴史上人物や国を解釈するのと同じ精神で、クールに見ていけばこういう見方も出てくるのだろう。うーんとうなる。
エンターテイメントとしても気持ちがいいが、その裏にあるシリアスな感覚がとてもよかった。
2008/1/19
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えぇっと、先に言っておきます。
本書及び著者のファンはこの先は読まないほうがいいと思います。
もし読んでしまったら…ごめんなさい。
クソつまらなかった。
読み進めるのをここまで苦痛に感じたのは宮部みゆき以来だ。
宮部みゆき、京極夏彦、佐藤賢一…
今後私がその著書を手に取ることは絶対にない作家のリストに一人追加。
まず、小説として評価:
テンポが悪い。
人物描写が類型的。
世界観が理解できない。
ここぞ、というところで主人公の薄っぺらな御託が延々と続いて拷問かと思った。御託はいいから話を進めて欲しい。
人物の類型化が必ずしも悪いとは思わないけど、こんな人種ジョークレベルの類型化を長い小説でやられても興ざめ。
「アメリカが不幸になって、世界は幸福になりました」という理屈が、どう考えても理解できない。
どうもこの本では全ての悪をアメリカに負わせているけれども、
例えば、こういうネパールの混迷
http://www.asiapress.org/apn/archives/2000/1047/
とか、米軍も逃げ出したソマリアのどうしようもなさ
http://www.special-warfare.net/data_base/101_war_data/africa_01/somalia_01.html
とか、こんな東京の片隅に引きこもってる私でも感じるのに、
『インターネット英語』なる不可解な言語を操る主人公のいる世界で、どうして米国が内乱を起すだけで他国の問題が解決するのか、完全に理解不能。
800円も払っちゃったから最後まで読んだけど…
今後この人の本には手を出さない、ということが学習できたから授業料としては安かったかな。
なんだかご大層な理屈がいろいろ出てきたけど、全て「承服しかねる」としか言えない。
追記:緋文字のシーンだけは面白かったけど、元ネタのほうが100倍は面白い。
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この作者の著作でわたしが苦手な部分は、絶対に女性が性的対象になってることで(いい部分でもあるんだけど)この作品はそれがさらにひどかった。いつもは結構どきつくてもそれがリアルで切実な気持ちを表していたりほのぼのしたるするのに対し、今回は単純にやりすぎだと思った。
一方で、それでも読み終ったあとほのぼのした暖かい気持ちになって、また著者の他の作品を探そうと思ってしまうのは、今回もまた彼の登場人物への、そしてアメリカと日本という国家へのどうしようも無い愛情を感じたからだ。生きてる人間も、その人間の行動もどうしようもなく愚かである。この作品でもアメリカ内戦という架空の事態を描いているにもかかわらず、それでも生きている人間や国への愛情が感じられて泣きそうになった。アメリカという国が他国に干渉する理由が著作の仮説通りだったらなんだか悲しすぎる。自分の大好きな国でもあるので、その点が非常に印象に残った。
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可もなく不可もなく。
『女信長』といい同著といい、悪くないのだが作家の焦燥感めいた感じを受けてしまう。
確か作家本人が言っていたと思うのだが、「夏休みに全集を持ち込んで読んでもらいたい」という気概でヨーロッパものに邁進してもらいたい、というのが一ファンの率直な気持ち。