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紙の本
定跡の進化
2010/06/03 22:45
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ココちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本は七冠制覇した頃の羽生名人による、
矢倉における5手目の最善手は何かを追求した連載講座を2冊にまとめたものです。
下巻はテーマ2▲7六歩△8四歩▲6八銀△3四歩▲6六歩に対する急戦から解説されます。
5手目▲6六歩のメリット・デメリットは、
銀上がりを保留しているので中央に手厚く、いろいろな急戦に対処しやすいことです。
ちなみに現在プロ間では5手目▲6六歩が主流のようです。
デメリットは、
5手目▲7七銀では怖くなかった△急戦棒銀の選択肢があること、
6筋が争点になるため△右四間飛車の戦いが避けられないこと、などです。
第1章は急戦棒銀です。
こちらは先手の最新の対策が所司七段の「矢倉急戦道場」で詳しく解説されています。
なので、定跡通の方にはあまり目新しい変化はないのではと思われます。
「先手優勢」と解説されている変化が▲佐藤康八段-△羽生四冠(段位・タイトルは当時)の、
A級順位戦が元になっているのが面白いところです。
しかもこの将棋を羽生四冠は千日手に持ち込んでいるのがまた凄いですね(笑)。
第2章は右四間飛車です。
こちらも後手の様々な指し方が所司七段の「矢倉急戦道場」で詳しく解説されています。
5手目▲6六歩が主流な事もあって、本書から右四間飛車定跡はかなり進歩している印象を受けました。
なので定跡通の方は物足りない印象を持たれるのではないかな、と思います。
具体例としては、中川流△4二金の指し方が解説されていません(エッセイで触れられてはいます)。
第3章は、陽動振り飛車で、急戦ではありません。
陽動四間飛車、陽動三間飛車、陽動向かい飛車が扱われています。
基本的には持久戦になり、また矢倉戦ではなく対抗形の方に近くなりますから、
まとめるのにかなり苦労されたようです。
先手は堅く囲えるうえ後手から打開が難しそう、と、正直あまり後手にうまみがなさそうな印象を受けました。
またプロ間でも現在はほとんど見られない戦型のはずです。
陽動振り飛車を解説した定跡書は少ないですから、後手を持つのが好きな方には面白いと思います。
第4章は5筋交換型で上巻の第2章と関連しています、いわゆる阿久津流です。
上巻第2章との一番の違いは△8五歩▲7七銀の交換を入れることで、
テーマ1の5手目▲7七銀に対しては後手は8四歩型のまま指すことができます。
連載時の結論は△8五歩▲7七銀の交換を入れた形は後手がつまらないのでは、という結論です。
が、現在この形は渡辺新手により8五歩型がむしろプラスになる変化が出ていて、
あるいは後手が指しやすいのではないか、とまで定跡が進化しています。
残念ながら渡辺新手についてはエッセイで取り上げられているのみで、詳しい解説はありません。
以上でテーマ2は終了し、テーマ3▲7六歩△8四歩▲7八金の解説です。
現在はあまり見かけないこの3手目▲7八金ですが、
森内永世名人も流行時最善と思って指していたという自戦解説を読んだことがあります。
急戦でいく指し方などもあり先手が得の変化が多いので、矢倉ではなく角換わりになる、
という結論のようですが正直よくわかりません(笑)。
「矢倉その変化の歴史」と題されたエッセイでは、連載講座以降の新手がメインで登場していて、
羽生名人が感想を述べ、有力な変化を解説されています。
そして「矢倉史を彩るこの一局」としてエッセイで取り上げた対局の棋譜が20局載っています。
最後に「変わりゆく現代将棋」単行本化に尽力された梅田氏と羽生名人の対談でまとめです。
個別に挙げましたように上巻よりも現在進歩している定跡が多いため、
定跡本としての価値は上巻よりも少し下がるかもしれません。
とはいえ本書の価値は定跡にあるわけではなく、トッププロの凄さに触れられることですから、
羽生七冠の意欲作、ぜひ読んでみてほしいなと思います。
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