紙の本
近代の歴史的事実が学べます
2016/02/13 11:32
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投稿者:セリ砂漠 - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトルにも書きましたように、中東問題に関する近代の歴史的背景を学ぶには良書だと思います。しかしながら、私が期待しておりました「考え方」に深く切り込むような記事は少なかったのでその点星を一つ減らしました。もちろん、中東問題は歴史が重要なのではありますが…
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(2010.08.16読了)(2010.08.06借入)
「イラクとアメリカ」についての著作のある作者が、「中東」全体に土俵を広げて考察してみた本です。一冊で全てをわかろうとしても世の中そうは問屋がおろしてくれないので、入門書として読んで、後は、「読書リスト」がついていますので、その中から少しずつ広げていけばいいかと思います。
それにしてもアメリカは、日本と戦争するときは、「菊と刀」というような本になるほどの相手国の文化について、詳細に調査したうえで戦いを挑んだのに、アフガニスタン、イラクでの場合は、そのようなことをやっているように見えないのはどうしてなのでしょう。
著者の酒井啓子さんも
「イラクで起きていることは、イラクの人たちを主人公に描かない限り、理解できないのではないだろうか。中東が「わかりにくい」と思われてしまう原因は、中東で生きる人々を主人公にして考えないことにある。」(9頁)
と書いています。
●中東は世界のど真ん中(11頁)
中東は、最初から国際政治のダイナミズムのど真ん中に作られ、そのダイナミズムの中でどう生き延び、逆にそれをどう利用していくか、という試練にさらされてきた地域である。ヨーロッパのアジア進出の過程で、植民地主義者の関心を集めた中東。石油の発見で外国企業が殺到した中東。ヨーロッパで迫害を受けたユダヤ人たちが、最後のよりどころとして居場所を見つけた中東。冷戦の前戦として、ソ連とアメリカが覇を競った中東。世界が西へ東へ動くときに、全部ここを通過して行った。その歴史が全部、中東に、詰まっている。
●本書の目的(12頁)
「中東」という地域が抱えている問題はいったい何なのか、明らかにすること。
その原因を近現代の国際政治の中に位置づけること。
国際政治に振り回されるだけでない、中東の指導たちの巧みな処世術を解明していく。
中東の人々はどのような社会を作ろうと模索しているのか。
●湾岸産油国(59頁)
空港でタクシーを拾えば、フィリピン人の運転手が「どちらまで?」と尋ねる。ホテルに到着すると、インド人のベルボーイがあなたのトランクを抱え上げ、フロントのエジプト人が「ようこそ」とにこやかに迎えてくれる。スーダン人かソマリア人かがロビーの大理石の床を掃除し、レストランではバングラデシュ人のボーイが注文を取り、タイ人のメイドが浴室のアメニティは足りているか、聞いてくる。窓から見下ろす建設現場ではパキスタン人の労働者がクレーンを動かし、ネパール人のデリバリボーイがピザをバイクに乗せて走る姿が見える。商談でオフィスを訪ねると、応対するのはレバノン人か、パレスチナ人か、はたまたイラク人か。湾岸産油国を歩いていて、その国の国民に出会うのは、至難の業である。
●国民国家(84頁)
信仰と、何民族か、どこの国に属するかは、別のことのはずだった。
ところが、近代ヨーロッパでの環境が、ユダヤ人たちを単なる「教徒」に留めさせなかった。ヨーロッパが国民国家の時代を迎えるのと並行して、ロシアやフランスなどでは、ユダヤ教徒に対する差別、迫害が広がった。ユダヤ人たちは、その宗教上のアイデンティティーゆえに、ヨーロッパの「国民」として平等に認められない、という辛酸をなめることになった。
●イスラエル(89頁)
イスラエルという国は、建国時にそこに住んでいたアラブ人を追い出す形で成立したが、必ずしもすべてのアラブ人が出て行ったわけではない。残されたアラブ人たちも、イスラエル国籍を与えられ、建国直後には、イスラエル人口の14%弱を占めていた。2008年現在では、全人口の2割超にまで増えている。
●イスラエルの主張(93頁)
「パレスチナ人」とは、パレスチナに住む、民族的にはアラビア語を話すアラブ民族の人々である。アラブ民族はシリアやヨルダンや、他の国にたくさんいるのだから、パレスチナに住まなくとも他のアラブ民族の住む地でアラブ民族として生活すればいいではないか。
☆酒井啓子の本(既読)
「イラクとアメリカ」酒井啓子著、岩波新書、2002.08.20
「イラク 戦争と占領」酒井啓子著、岩波新書、2004.01.20
「〈中東〉の考え方」酒井啓子著、講談社現代新書、2010.05.20
(2010年8月22日・記)
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中東は欧米に流され操られているだけではない。時にしたたかに時勢を読み解き、国際社会を生き抜いてゆく。
中東世界の人々を、空間も言語も超えて結びつけるイスラームの新しい在り方。
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中東の名前の由来、歴史をざっくりと学ぶには良い書物。欧米に翻弄されたが、米国ソ連を翻弄した国々でもある。イラン、トルコはイスラムに入らないこと。またイランの民主化が進んでいたことなど初めて知った。メディアで伝えられがちなステレオタイプの各国国民像は情報化社会の中では現実との乖離していることが分かった。インターネットは大きな役割を果たしている。そのような情報が可能な状況の中でそれぞれのアイデンティティを模索していることが分かった。
イラン、中国でネットを通じてのアイデンティティの模索ということでは良く似ているのではないかと感じた。
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中東がいかに国際政治の中心であったかが書かれている。
中東の歴史をあまり知らない状態で読んだので中々難しい内容であったが非常におもしろかった。
中東の入門書としてはあまりオススメできない。
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「最近中東は何だか大変なことになっているけど、そもそもあの辺はもともと治安悪いし訳分かんないんだよなぁ」という思いを持っている人は日本人には割と多い気がするけど、そういった人は是非読むべき本だと思う。中東という地域について表面的なニュースしか流れていないため、自分がいかにこの地域のことについて無知だったか、またはかなり偏った中東観を持っていたことがよく分かった。ただし、タイトルにある通り、"中東"の考え方が纏めた本なので、この本だけ読むと例えばアメリカはなんてひどい国なんだろうという強い憤りを感じてしまうこと請け合いなので、その点は注意が必要。
中東という地域に分類されるそれぞれの国々について、その歴史的な背景はもちろん、各国の立場に立った主張が9.11など昨今の事象に絡めて説明されている点が読んでいて分かりやすくて、かなりためになった。
ただし、チュニジアやエジプトに代表される昨今の革命についてまでは時期的に書かれていないので、続編に期待したい。
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この本は、中東情勢を知りたい方の入門としておすすめです。
著者はイランの研究者。わかりやすく丁寧な解説なので、すぐに読めます!
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【目次】
プロローグ
なぜ中東情勢はわかりいにくいのか?
なぜ「中東」とくくるのか?
中東は欧米が導入した言葉
「神様」や文化の違い?
世界のど真ん中で
本書の目的と構成
関連地図
第1章 石油の海に浮かぶ国々
オイル・マネーが生んだ摩天楼
最初の中東体験
世界の動乱の鏡
1.大英帝国の遺産「湾岸首長国」
「中東」はいつできたか
大英帝国、部族長と手を結ぶ
砲艦外交
2.サウディアラビアの登場
イスラームの盟主
宗教家と部族の雄のタッグ
半島のヒーローと英外交官たち
アメリカとの蜜月
アラブ民族主義の政権が続々と
イギリスの退場と左派の台頭
石油がサウディアラビアを救った
石油が国を強くする
3.石油の国々
外国人で成立する湾岸産油国
なぜ格差が政治の不安定につながらないのか?
軍事力を持たない国の生きる道
クウェートのパレスチナ人
小説「太陽の男たち」のラストシーン
「石油の国々」の現在
第2章 パレスチナ問題とは何か
故郷の味
アラブ民族意識とは何か
パレスチナは共通の問題
1.中東の人々のアイデンティティーを考える
そもそもアラブ人とは?
「アラブ民族はひとつ」という思想
「人工的な国分け」への反発とアラブ民族主義
イスラエルの建国
シオニズム思想
イスラーム地域出身のユダヤ教徒「ミズラヒーム」
イスラエルに暮らすアラブ人「イスラエル・アラブ人」
国民とは何か
移住と衝突
2.パレスチナ問題をふりかえる
「ゲリラ」から「テロ」へ
イスラエルの外交戦略「一刻ずつの和平協定」
アラファートPLO議長の登場
占領地のパレスチナ人たち
アメリカはなぜパレスチナ問題に関わったか?
オスロ合意
細切れになっていく自治組織
分離壁で切り離されて
3.アメリカはパレスチナ問題にどのように関わってきたか
アメリカの政権とイスラエルのロジック
脅威は外からひっくりかえす
アメリカの対中東政策
『イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策』
オバマの中東政策
第3章 冷戦という時代があった
1.アメリカとソ連の時代
世界が「東」と「西」に分かれていた時代
二大ボスが世界を回す
なぜ今冷戦時代について考えるのか?
超大国を操作する技術
「二大ボス間の戦い」の時代から「仮想的との戦い」の時代へ
2.北辺防衛のための国々―トルコ、イラン
ソ連の南下をどこで防ぐか
トルコはアジアかヨーロッパか?
冷戦時代のイラン
湾岸の憲兵
ソ連の戦略「民族主義政権を取り込め」
アメリカの関心を引くための「ソ連カード」
3.アフガニスタン侵攻
なぜソ連はアフガニスタンに軍事介入したのか?
サウディアラビアとパキスタンをパートナーに
オサーマ・ビン・ラーディンの軌跡
「アフリカの角」ソマリ���
4.メリカの一極集中時代へ
アメリカはなぜ直接の軍事関与を避けてきたのか?
「地平線のかなた」作戦
湾岸戦争が「超大国操作術」の転機に
イラク戦争
冷戦時代は中東をどう変えたのか
第4章 イランとイスラーム主義―イスラームを掲げる人々
イランの反政府運動
イスラーム主義とは
1.イランで実現した「イスラーム共和制」
「よくわからない国」というイメージ
ホメイニーはどんな指導者だったのか?
イラン革命とアメリカ
なぜアメリカは「大悪魔」と呼ばれるようになったのか?
2.「革命」政権の変質
ホメイニー亡き後
ハータミーの微笑み外交
アフマディネジャードとはどんな人物か?
「救世主(マフディー)」と交信できる大統領
3.「民主化が進むとイスラーム主義が強まる」のはなぜか?
イスラーム主義はなぜ台頭しているのか
ヒズブッラーとハマース
民衆が支持するのはなぜか?
ムスリム同胞団
終章 メディアとアイデンティティー
パレスチナのラッパー
庶民の声はどこにいった
アラビア語衛星放送「アルジャジーラ」の影響力
イランのインターネット普及率は四八パーセント
ネット空間
ヴァーチャルなイスラームの連帯
ネットでのイメージと民衆感情にはギャップも
イスラーム銀行とスカーフ
なぜスカーフをかぶるのか
読書リスト
おわりに
関連年表
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中東についての基本的な知識が得られた。
わかりやすい!
基礎知識がほとんどないままよんだのでもう一度読むことになるだろう。
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日々ニュースで取りざたされる中東問題の、「わけのわからなさ」。その背景には何があるのか、いままで断片的にしか知らなかった。そんなときに手に取ったのが、この本。本書を読むことで、日々ニュースで接するアラブ諸国への理解が進んだように思う。予備知識がなくても、とてもわかりやすいし、かなり勉強になった。
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パレスチナ問題や湾岸戦争、イランイラク戦争、植民地政策の中東利用、冷戦の中東利用&中東の冷戦利用etc
今まで世界史とかニュースとかでなんとなく知っていたけど、詳しく知らないって、でもどうしたら知れるんだろう?っていうことが、この本を読んでよくわかった。忘れてしまう内容もあると思うけど…ジャスミン革命とその後の中東につて同じく詳しく書かれた本があれば読みたい。
2011/11/03読了
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中東については無知に近かったので大枠の知識が理解でき有効であった。
・イスラエルはユダヤ民族主義を元に建国された。出身は皆異なる。
US、軍事費の1割をイスラエルに使用する。イスラエルロビーの影響。
特に民主党はminorityを尊重する。
・ビンラディンはUSの子分だった。
ソ連がアフガン占領時に、対ソ連で地元アフガンと闘った。
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中東に関しての知識がちょっと固まった。何で今のような構図になったかがよくわかる本でした。ラストに載っていたもっと掘り下げたい人用のおすすめ文献もまた読んでみたい。
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テスト勉強のために手にとった本。出会いは最悪だけど、興味範囲が広がったという点では、出会って良かったなと思える。
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「中東」は、奥が深い。新書1冊くらいで分かった気になってはいけない、ということが良く分かる、分かりやすい入門書です。