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決して明るいとは言えない作品が殆どの短編集(7作品)
私は好きです 普段心のどこかで感じている罪悪感や劣等感のような重みを自分だけじゃないからと、肯定できるような気がして。人は皆普通の顔をして生活しているように見えても、裏では抱えているものがあって・・などと安易に安心できるような気がして。
どれも、ラストにちょっぴり驚くような終わり方があって 幸せとは言えないし救いようがなかったり切なかったりするのですが。
個人的には表題作である「ひとさらいの夏」と「田螺と水面の月」「蜘蛛」が良かったです。
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勝組にも負組にもなれない、中途半端にダメな女たちの物語。
自分の人生こんなものかな、と思う年頃ってのがあって。その年頃をなんだかんだ言いながらすんなりと通り過ぎることのできる人は幸せなのかもしれない。
その一つの壁なり川なり溝なりの手前で、ふと心の隙間を直視しちゃったときの不安をなにでうめるのか。
仕事か、夫か、子どもか。
ここにいる7人のどうしようもなくダメなオンナを愛おしく思えるかどうか、は自分の現在次第。
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ドロリと濃厚でいつまでもまとわりつくような、決して快いとは感じられないがかといって憎悪する類のものでもない、そんな情念がすべての作品の底に敷き詰められている。
理屈で説明しきることは到底叶わない男と女の業が非常に高い共感度を以て描かれているので、読者は登場人物たちの言動や物語の進行を理性では拒みつつも、脳幹の部分では認めざるを得ない、そんな思いに囚われる。
出てくるのは皆、自分であり自分の家族であり、身近にいる誰かなのだから。
そしてここに著されているのは、おそらくは女性作家にしか書けない感覚なのだろう。
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7編からなる短編集。
突然悪夢のような負債をしょい込んだ女。
長い間待ち続けた真実の恋が現れた。
王子様は15歳。お姫様は41歳。
表題作「ひとさらいの夏」は
どこか懐かしく、若いころに観た映画を思い出しました。
いやーな気持ちになるのだけれど
それだけではない何かを持った作品。
「亜種幻想」が秀逸。
冨士本由紀さんの他の作品も読んでみたい。
そんな気持ちになります。
Twitterで書店員さんおススメ作品でした。
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初読の作家さん。イヤミス…?そんな気はしなかったな。いままで読んだイヤミスの中では上品な方だと思う。どれもきれいな終わり方だった。7つの短編のなかで、「氷砂糖」「ひとさらいの夏」はちょっとドキドキした。
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初めて読む作家で、本屋の平置きで手が伸びました。内容的にはアラフォー女性の願望とも、妄想とも取れる作品が多く、女性読者は共感するのかな?と思いながら読みました。
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全てハッピーな話ではないし、どちらかといえば暗いものが多いのだけれど、どこか希望というか明るさが感じられるのが不思議。人はみんな弱いのだけれど、その中でも希望があり、希望というのはすべて生きている上で幸福な結果となるわけでもない。でも、どこかで希望の光が射す時に、人は生きていく勇気が出てくるのかもしれない。
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全7編の短編集。全編女性が主人公で女性の願望、妄想、嫉妬、空想に共感ポイントが見つかってドキッとさせられるかも。
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*オトコのために、突然悪夢のような負債を背負った41歳の女の家に、15歳の少年が転がり込んできた。二人とも現状の生活が袋小路に入った状況は似ており、出会いは奇異でも、すぐに心が寄り添っていく。非難の声。二人の行く先に未来はなく……表題作など、女性心理を見事に掬いとった傑作短編集*
女性ならではの寂しさや歪み、どろりとした濃い情念…そんな一筋縄ではいかない情景がとても巧みに描かれています。一見救いがないように思えますが、どこか清々しく潔いのは、止む無く手放したものに安堵しているからでしょうか。決して心地よい読後感ではありませんが、不思議とあとを引く、大人にお勧めしたい作品。