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「わたくし率 イン 歯ー、または世界」読了。雑感 → 言葉(関西弁)のリズム、間、句読点の斬新な使い方にだんだんハマってしまった。ちょっと町田康を思い出す感じ。「雪国」の書き出しの文には主語が無いという話が興味深かった。とりあえず言葉のポテンシャルを感じた良作。 #dokusho
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歯科医院で働くための面談から噛み合わない会話に始まる違和は、そのまま私のわたくしは奥歯に在るとはばかりなく言い放つ女の内なる世界と彼女の身体が関わるべく外なる世界の差異を示すが、その差異を埋めるべく女は私が私であるための唯一「私のわたくし」が、この先に在ることになるだろう我が子に向け自分をお母さんと呼び手紙をしたためる行為をもって内なる世界へ自我を開き、主語のない内なる世に主語を持たせるという総和で和解を果たす。物語りの終わり近く、青木を追いかけ歯科医院のドアを開け飛び出す女の姿は、まさに内のみに開かれていた自我を外なる世界へ開いた瞬間であり、わたくしの私が生きるために育んだ内なる世界を飛び出し、外なる世界との和解を果たした瞬間だったように思う。どんなに苦しくても何処かに拠りどころはあるよというメッセージとともに「生きる」ことを説く、優しさにあふれた作品でした。
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芥川賞をとった『乳と卵』に比べると、青い果実のようだ。それでも、女性性と哲学的な実存をテーマに、ユニークな切り口で自身の価値観を反映させている。
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めんどくさい派
まず文体がめんどくさい。
構成がめんどくさい。
主人公がめんどくさい。
こんなん書く人はきっとめんどくさい。
こんなんありがたがる読者もみなすべからくめんどくさいに違いない
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上品、女性、母性、それらすべてを含んだアウラがかろうじて活字としての体裁をなしている
楽譜の音符のように単語が並べられているから、目で読んでいることに違和感をおぼえる
そこで声に出して読んでみる
テンポがいい
振動は私の耳の穴から口から体内に入りようやく言葉として機能する
この言葉は、私がこの本の存在を忘れても、私と思ってる私と思ってる私と思ってる私と思ってる私(以下略)の一部にきっとなるのだ
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川上作品らしく、主人公が他の登場人物に辛辣な言葉を浴びせられる。
この作品は特にそれがトゲトゲしく感じて、ずっしりした読後感だった。
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中二病くさい、浸ってる文体。うああ、って思った。
結構前に読んだ、初めての川上未映子。
でも半分いくくらいからぐああっとくる。
テンポ。読点と句読点の絶妙なテンポと関西弁。
息を、吸って、吸って、吸って、吸っっって、…吐きどころない。
よくわからないけど、すきなテンポでした。
でもやっぱりぶっとびすぎてて哲学的過ぎて内容はよくわからないので
わたしは「乳と卵」あたりがすき。
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予想以上に重くて悲しかった。
読みながら何度も悲しい方向に裏切られていく感覚。
文体は先に読んだ「乳と卵」同様引きこまれたし、好み。
「わたし」がまだお腹の中にさえ居もしない将来のわが子に綴る日記に「おまえのような状態になりたいという気持ちを持った人は少なからずいますよ。それはね、死にたいとかそういうことではなくて、生まれてこなかったことにしたいなあ、できたら……だから、生まれてしまって今ここに在ってしまった自分……それなりに考えていたりしなければばらばらになってしまいそうになって……それもしんどいものなのですよ」と記した文章は何度も読んだ。
悲しすぎて封じ込めている自分、を持っている人は少なからずいるのではないか。
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「他人から見た私」のような書き方がたくさんあって
哲学的な思考を余儀なくなくされる
自我が爆発している内容はある意味で面白い
暴れ馬に乗っている気分
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熱くて、どろどろしていて、しんとしていて、果てしない。
めちゃくちゃです。狂気じみていて、ストーリーとして捉えるならばどう表現したらいいかわからないし、風景を切り取るならばあくまでありふれた日常なわけであって
それでも頭の中が、見えないところが物凄い勢いで動いている、加速していく。熱を放って。
哲学的で、なんとはなしに見過ごしていた見えにくい部分の蓋を開けたような
さらにその先に手を伸ばそうとしてかきまぜたような
そんな混沌とした、だけど明確な何かが満ちています。
うまく言葉で表現できないけど、文章は芸術になりうるんだと、そう思った。
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芥川賞候補の作品だとかで・・わたしには少し難しかったかな…スペースとか改行がほぼ無い文章が独特。何度も戻って読む・・
でももう一回読み返してみたいと思った。
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「乳と卵」はすらすらと頭に入ってきたのだけど、これは前半は読むのがしんどくて、文章を読み返したりした。だけど終わりに近づくにつれぐんぐんとスピードがつき、女のやり返しには笑った。女最強。うすうす分かってはいたけれど、やはり"わたし"の妄想で、青木はへたれ気味で、哲学的?で自分にはよく分からない部分もあったけれど、雪国のくだりは好き。もうひとつの短編は完全なる流し読み
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実はどうして読んでみようと思ったのか謎です(ぇ…
川上先生の文章・作品性は合わなそうと思えますから…
てか読んでみたら凄く合わなかったですやっぱり。
しかも後味も凄く悪いですし。
どうにも「歯」で思考していると決めた<わたし>が
思いっきり歯切れが悪いねとねとした独白・台詞が多いです。
全体的にねとねとした女性ばかり出てくるので感情移入も出来ないし。
(ただ、完全否定できない鋭さが芥川賞候補らしいと思います)
薄い本で字も大きいので、そういう意味では読みやすかったですが…
実際評価もまっぷたつですね。
好き嫌いがはっきり分かれると思います。
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あたしはある人とある人を間違えることはありますが、
自分と誰かを間違えることはありません。
そこにあるあたしという感覚。
この話でそれは奥歯なものの、あたしの場合は胸の奥のほうに台風の目みたいなのがある。
あたしは結局あたしの範囲からは出られないということ。
あの人の感覚はどうやっても共有できないこと。
その事実が驚異!
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ここ描かれている物語は、理性というものの実存の姿であると思った。彼女は恐らく直感的に、そういうものを表現できる稀有な作家なのだろう。でも、方向は、正統な純文学の流れに呑みこまれていってしまった。みやすけ的にはもったいないことのように感じた。彼女の描く世界は決して純文学的なものではない。それはいってみれば、シュールレアリズム的な実存の世界だ。でも、そういう自分の表現に、自覚的ではなかったのが、結果的に、大きく転換していくに至ってしまった。じつに残念だ。でも、才能は確かです。これからに期待します。