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サブプライムローンは破綻すべくして破綻したといわれるが
2012/01/26 21:34
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投稿者:tadano - この投稿者のレビュー一覧を見る
サブプライムローンは破綻すべくして破綻したといわれるが、破綻した理由はなんだったのか?
そして、そのような破綻すべきものが何故それまで破綻せずにいるということが有り得たのか?
サブプライムの問題に気づき、サブプライムが破綻するほうに賭けた3組の投資家、それぞれが別のアプローチからその問題点に気づき、その解釈が少しずつ一点に収束していく様や、
また投資家が、こんな無謀な賭けに乗るその相手は一体何なのか?自分たちが見落としていることはないのか?疑心暗鬼になりながら、
進むストーリーにははっとさせ、非常にドキドキさせるものがあった。金融商品に対する彼ら投資家の捉え方もためになる内容だった。
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テーマとなっている「空売り」は、金融の専門用語で、下げ相場に
賭けることを言いますが、本書の主役たちは、まさにこの「空売り」
で財を成した人物。
あのサブプライムローン問題のさなかに、暴落で儲けたスティーヴ・
アイズマン、マイケル・バーリ、そしてコーンウォール・キャピタ
ルの若者たち。
困難に直面してもなお、信念を貫き通した彼らの姿を見ていると、
知性とは肩書ではなく、「知を愛し、そのために事物を疑うこと」
であると確信させられます。
また、そのためにどんな組織を作るべきか、という点についても考
えさせられるものがありました。
サブプライムローン問題自体が大きくクローズアップされ、かつ関
連書も数多く出ていることから、本書の内容も既知のものが多いの
が残念ですが、裏舞台を知る上では、刺激的な書物だと思います。
「オッペンハイマーのアナリストとして給料をもらうには、とにか
くまっとうに働くことと、周りに気づかれる程度の波風を立てるこ
とです。オッペンハイマーには、反体制の気風があります。これが
大企業になると、社員はみんな、総意に従うことで給料をもらうん
です」(アリス・シュローダー)
アイズマンはやがて、波風を立てること、総意に歯向かうことに特
別の才能を発揮するようになる
(アイズマンの)妻が言う。「駆け引きとして、無礼にふるまって
るわけじゃないんですよ。裏表がないから、無礼になってしまうん
です。みんなに変人と思われてることは知ってますけど、本人はそ
んなふうには思ってません。自分の頭の中で暮らしてる人ですから」
ダニエルの頭に、ふと皮肉な問答が浮かんだ。収入増の望めない貧
者に、金持ち気分を味わわせる妙策は? 金利の低いローンを与えること
「持ち分のない住宅は借金付きの借家にすぎない」
オッペンハイマーのセールスマンだったモーゼズの脳裡には、その
時代のアイズマンが、売りサイドのアナリストにあるまじきありと
あらゆる言動を見せた姿が焼きついている。例えば、トレーディン
グが行なわれている真っ最中に、トレーディング・フロアの中央に
ある演壇に上がって全員の注意を促し、「これから挙げる八社の株
券は、ただの紙切れになる」と宣言したうえで、八つの社名を口に
すると、事実、その全部がやがて倒産した
「借り手ではなく、貸し手のほうに目を光らせるべきですね。借り
る側は、自分にとって都合のいい条件なら、いつだって大歓迎です。
節度を保てるかどうかは、貸し手しだいで、貸し手が節度を失った
ときは、気をつけないといけません」(バーリ)
投資は一個の定石に煎じ詰められるものではないし、ひとつのロー
ルモデルから習得できるものでもない、というのがバーリの考えだった
信じがたい話だ。あの保険会社は、年間数百万ドルの保険料と引き
換えに、二百億ドルが一瞬にして消えかねないゆゆしいリスクを引
き受けている
AIG・FPという会社には、ゴールドマン・サックスのトレーダ
ーと互角に渡り合えるごく有能な人材を集めるだけの魅力が、ちゃ
んと備わっていた。ところが、その有能な人物の頭を、商売の機微
もろくに心得ない鈍感で癇癪持ちの社長が押さえつけていたのだ
ウォール街がいちばん起こりそうにないと思っていることを探し出
して、それが起こるほうに賭けるのが、ウォール街で稼ぐ最善の方法
バーリの顧客、つまり、預けた金をバーリに倍以上にしてもらった
人々は、ほとんど何も言わなかった。謝罪も、感謝の言葉もなかった
賢い決断を下す必要がないとしたら、つまり、お粗末な決断をして
も金持ちになれるとしたら、どれくらいの数の人間が賢い決断を下
そうとするだろう? ウォール街の報奨制度は、全面的に間違って
いた。今でも、間違っている
◆目次◆
序章 カジノを倒産させる
第一章 そもそもの始まり
第二章 隻眼の相場師
第三章 トリプルBをトリプルAに変える魔術
第四章 格付け機関は張り子の虎である
第五章 ブラック=ショールズ方程式の盲点
第六章 遭遇のラスヴェガス
第七章 偉大なる宝探し
第八章 長い静寂
第九章 沈没する投資銀行
第十章 ノアの方舟から洪水を観る
終章 すべては相関する
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「サプブライム問題とは何か」この問に金融の取引現場から捉えた一冊。これまで、「資本主義は嫌いですか―それでもマネーは世界を動かす」竹森俊平http://amzn.to/bdtFrx や「波乱の時代」グリーンスパンhttp://amzn.to/baddAZ などで門外漢の自分でもある程度サブプライム問題の発生原因を腹に落としてきたつもりだったが、本著はトレードの現場から”変人”達を主役に、当時の状況の”変”っぷりを語らせる。そのぶん、他2著とくらべてお行儀はあまりよくないし、俯瞰性は低いがその分本質をえぐりだしているように感じた。
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マイケル・ルイス著、東江一紀訳『世紀の空売り—世界経済の破綻に賭けた男たち』(文藝春秋)読了。サブプライムローンに端を発する債券バブルとその崩壊(2008年ベアー・スターンズ、リーマン・ブラザーズが破綻)の過程で、一貫して「下落」するほうに賭け続けた3組のアウトサイダーの物語。
釣り金利で2年間の時限爆弾が仕掛けられたサブプライム・モーゲージ債。それを再証券化したCDO。リスクは完全に見えなくなり、格付け会社がトリプルA、ダブルAを乱発する。金融市場の中心が株式から債券へと移り、猛烈な勢いで膨らんだ。
一方、市場の「下げ」に賭けた一部のアウトサイダーの武器はCDS。モーゲージ債やCDOに対する一種の保険だ。市場が上昇局面にあるかぎりプレミアム(保険料のようなもの)を払い続けなければならないが、下降局面では株の空売り(ショート)と同じ効果をもつ。
ウソにウソを塗り固めてつくられたバブル。でも、その根っこを丹念にたどれば、全米でいっせいに住宅ローンのデフォルトが起きるはずがない(だって、今までそんなことは起きたことがないから)というきわめて脆弱な「神話」に行きあたる。
そりゃ、そうだ。今までは借りても返せる収入がある人にしか貸し出さなかったのだから。ところがサブプライムは違う。不動産価格が上がり続けないかぎり、絶対に返せないような人たちにローンを売ったところに、そもそもムリがある。
彼らは住宅価格が下げに転じると、ローンの借り換えができなくなる。2年間限定の低金利(釣り金利)が解除され、金利が上昇したとたん、支払いが滞って焦げつく。当たり前の話だ。ところが、金融のマジックにかかると、その当たり前のことが見えなくなる。
投資銀行を壊滅させ世界的な信用収縮を引き起こした金融危機で、勝者となったのが市場の周辺にいたアウトサイダーだった、というのがこの話の妙味。一風変わった人物として描かれる彼らの行動は、実は一貫して合理的。ちゃんとリスクを見きわめれば、当然出てくる結論にしたがったにすぎない。
バブルは人を熱狂させる。渦中にいると、常識が見えなくなる。自分の頭で考えることの大切さをあらためて教えてくれた本である。読み物としても十分楽しめる。さて、次のバブルは株?債券?不動産?それとも商品?
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リーマン・ショックに至るまでの現場の人々を、主に予測していた人側から描いた話。描かれる人物たちがユニークだし、やはり実話なのでパワーがあって引き込まれて面白い。
しかし、若干取材対象が少ないし、描き方が若干一方的な印象を受けるし(そういう本なのだけれども)、CEO他の責任者ある立場の人々等の描き方(特にリーマン・ショック後の処理)についてはイマイチ好きになれない。
でも、難しい。Wikibediaとかも調べてみたのだけれど、CDOとかよく意味がわからない。
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サブプライム証券の欺瞞を見抜き、売り向かった人たちの話。
ノンフィクション小説としてよく出来ていて凄い読ませる話だった。
サブプライム証券のCDSをショートすることによって売り向かうのだが、
CDSを作ったモルガンの人々の話、「愚者の黄金」と併せて読むと面白い。
最終的に政府がその投資銀行の証券を引き取っているのだが、
それは今どうなっているのだろうか。
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サブプライム絡みに限った狭い括りではなく、金融業界物として傑出したルポである。メジャーな投資銀行のデット部門、特に、ストラクチャードファイナンス、クレジットアナリスト、リスクコントロールに当時携わっていた人たちが読めば、相当耳が痛いことだろう。とはいえ、極東の日本にいた外資系証券マンには、ほとんどCDOの組成の本質については、部外者のようなものだったのだろう。当時はそれなりに訳知り顔でいたとしても。
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サブプライム/リーマンショックの根源となったCDOという金融商品の性質上、巨額の損失を出した投資銀行・保険会社に対して、この賭けに勝った投資家が存在する。 そんなCDOへのsellないし金融市場の破綻に早くから気づいた個性的な面々にまつわるノンフィクション作品。
作家自身がウォール街のモーゲージ債畑の出身だけあり、金融用語の記述も緻密かつ正確であり、かなり読み応えがある。
sellをしかけた面々が持つ真値からゆがんだ評価で取引される市場およびその関係者(投資銀行・格付け機関・政府)へのメッセージ色も強い。
初章にあるように初期の証券化商品の発想自体は早期償還を避け、安定したcash flowを提供すること等に力点があったりして、悪質なものではなかったし、証券化が端的に毛嫌いいされてしまう現状は残念ですね、、、、
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最高に面白かった。バリュー投資家や逆張り投資家の人は相当感情移入して読めると思う。発明、拡大、腐敗、そして崩壊。サブプライム危機は何故起きて、一体どういうものだったのか。本質を見抜き破綻する側に賭けた少数のヘッジファンドマネージャーの孤独な戦い。ドラマとしても圧倒的に面白く、アスペルガーで隻眼のバリュー投資家バーリの話が非常に印象に残った。
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サブプライムローンが破綻することを見抜き、市場の崩壊に賭けた人々を描いた経済ノンフィクション。市場なんて崩壊するはずがない、という市場の雰囲気の中、孤軍奮闘する姿が描かれる。個人に焦点が当てて構成しながら、市場全体の問題もしっかり扱っており、他のリーマン・ショック本と比較しても頭一つ飛び抜けている感じがする。「芸術的」かどうかはともかく、翻訳も読みやすい。経済モノというより、あの時代を駆け抜けた人々の物語として、非常に面白い。
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数あるリーマンショック・金融危機関連書籍の中でも、ずば抜けて面白い。やはりマイケル・ルイスはすごい。
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元ソロモンブラザーズのマイケル・ルイスの書籍。
これは久々に改心のヒット。けっこう重厚な本ではあるが、食い入るように読んでしまった。
舞台は、金融業界を揺るがしたリーマンショックの前段階のサブプライムローン。これをめぐるセルサイド・バイサイドのノンフィクションストーリー。
(リーマンはほとんど出てこない。ベア・スターンズがかなり出る)
メインのCDS、CDOなどの金融商品については、未だにざっくりとしか理解はできていない。そもそも、オプションのようなファイナンシャル・エンジニアリングの概念を知っていなければ、全くもってついてはいけないだろう。
ここは注意が必要であるだろう。
個人的には経済小説は好きなので、よく読む。
本書は同様のワクワク感を与えてくれた。
だが、唯一違う点は、すべて現実に起こったことであるということだ。
これは大きな違いだ。事実は小説よりも奇なりとは言いえて妙だ。
マイケル・ルイスの書籍は初めてだったが、すでに他の著書はWISHリストに入っているし、確実に読もう。ファンになったのだから。
The Big Shortの後に、Too Big Too Failを読める(のつもり)は順番的によかったかな。フレディマック・ファニーメイ・AIGを主役にどんな内容なのかとても楽しみだ。
超おススメの一冊である。☆5つ。
以下、目次
序章 カジノを倒産させる
第1章 そもそもの始まり
第2章 隻眼の相場師
第3章 トリプルBをトリプルAに変える魔術
第4章 格付け機関は張り子の虎である
第5章 ブラック=ショールズ方程式の盲点
第6章 遭遇のラスヴェガス
第7章 偉大なる宝探し
第8章 長い静寂
第9章 沈没する投資銀行
第10章 ノアの方舟から洪水を観る
終章 すべては相関する
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世界金融危機がいったい何だったのか、興味を持ちつつもいまいちイメージがわかない人は是非この本を読むべき。
サブプライムローン関連の市場がどんどん麻痺状態に陥って、やがて崩壊するまでの流れが、冷静にその市場を観察し疑問を持った少数のアウトサイダーの視点で、ある種謎解きのように描かれていて、驚くほど明快でかつ面白い。
そして、いかに世界がでたらめなもので形づくられているか、心の底から驚愕する。
# 特に客観的な評価をして保証を与える格付け機関まで腐敗してしまっているのだから、結局他人は頼りにならないということか。。
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サブプライム問題のショート側の事情を読めてよかった。サブプライムモーゲージ債やそれに対するさまざまなCDOが破綻すると読んだ3組の投資家がどのような形で破綻すると思ったか、それに重点をおいていてとても読みやすかった。
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かなり読ませる。
専門用語連発なので、多少の基礎知識は必要だが、明晰でユーモアのある文章のおかげで読み進めることができた。
3組のアウトサイダー達のドラマが面白い。とくに「隻眼の相場師」マイケル•
バーリが印象に残る。周囲の人々が全て間違っている状況で、一貫して自分の正しさを確信して、主張し続けることの困難。正しさが証明されても賞賛されず、むしろ憎まれるという不条理。
多分、また数十年経ったら、同様の悲喜劇が繰り返されるだろうな。