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見学と題にはあるが、本質は、アメリカ、ショッピングセンターの現状と、日本への課題の提起である。
アメリカに見学にいくなら、事前に課題をちゃんと理解してからいかないとムダになる。というメッセージである。
本書は大きく3つの内容からなっている
その1 チェーンストアの原理
その2 ショッピングセンター(SC)の種類と、その中に出店しているフォーマット(スーパ、デパート、専門店等)の解説
その3 日米の状況を比較しながら、アメリカに学ぶべき点は何か、どうしてそれを学ぶ必要があるのかの解説
冒頭にある言葉、「日本人は品質について条件がうるさく、『安いだけでは買わない』、ことが特性だと、言われてつづけているが、それはアメリカ人だって同じである。商品の価値と品質と、二つの要素の組み合わせで決まる。購買に至らないのはそのどちらか、または、二つのバランスが悪くて、客が買う気になれないためである」が印象的でした。
気になったことばは以下です。
その1 チェーンストアの原理
・本部と店舗との関係は、従来の本社と支店の関係とは大きくことなる。
①店で提供する商品と販売方法とのすべてについて店に代わって調査研究し一番よい方法でキマリをつくり、全店舗に普及する
②各店舗で共通に発生するさまざまな作業を店舗に代わって集約しておこなう
本格的なチェーンとして効率が期待できるのは、100店をこえてからになる。
・チェーンストア・システム基盤の基礎は、インダストリアリズムである。小売業の経営に工場経営方式を導入しているということ。
・ディストリビューションセンターなどで納品物のまとめ、受け入れを行えば、全体的な配送コストが大幅に削減できる。商品を一元管理できれば、商品の流通もしやすくなる。
・商品だけでなく、建設機材、陳列機材も一括調達すれば調達コストは低くなる。
・インダストリアリズム(工業化)のキーワードは、①エンジニアリング(数値化して合理化する)、②マス化(コスト低減)、③スタンダイゼーション(標準化、コスト低減)
・チェーンストアの商品は、売価は安く、品質は優れていなければならない
・日本への反例:素材が高いわけでもないのに、目が眩むほどの高いバッグをありがたがって買う気がしれない。高価なものを身に着けても生活が変わるわけではない。
その2 SCの種類と、フォーマット
・フォーマットとは、業態類型
①スーパーマーケット SM、②ディスカウント・ストア DS、③ドラッグ・ストア DgS などのこと
・フォーマットは、扱っている商品の価格帯、購買頻度、商圏の大きさなどで分類されている。
・おなじフォーマットで扱う商品は、価格帯や購買頻度がことなるものを同時にあつかってはならない。
・日本への反例:ホームセンターは、売れるものなら、なんでもで品そろえをふやしてきたが、購買頻度も客層もまちまちな組み合わせになってしまったため、凋落傾向にある。
・ショッピングセンターの種類
①ネバーフット・ショッピングセンター NSC 32003か所 70.1% 近所のSCという意味、日用品中心
②コミュニティ・ショッピングセンター CSC 9398か所 20.6% 中規模なSC
③パワーセンター 2023か所 4.4% 核店が、60%~80%を占める、大型SC
④リージョナル・ショッピングセンター RSC 816か所 1.8%
⑤スーパー・リージョナル・ショッピングセンター SRSC 689か所 1.5%
・ショッピングセンターに出店するフォーマットの種類
①スーパーマーケット SM
②ディスカウント・ストア DS
③ドラッグ・ストア DgS
④ゼネラル・マーチャンダイズ・スーパーマーケット GMS 総合スーパー、イオン、イトーヨーカ堂
⑤バラエティ・ショップ VS もっとも価格の低い実用品 ダイソー
⑥メンバーシップ・ホールセール・クラブ MWC コストコ
⑦コンビニエンス・ストア CvS
⑧ファースト・フード・サービス FFS
⑨スーパー・スーパーマーケット SSM
⑩スーパー・センター Suc SSM+DS
⑪デパートメント・ストア Dept・等
・SCの新傾向 ①働く女性の増加、②人口の高齢化⇒ ショート・タイム・ショッピングが主体に
・DSの特徴 ①値段が安い、②8割の人が必要とする品揃え、③購買頻度の高い必需品を主力、④ホットアイテム(定番、大人気)
・アメリカの専門店の特徴、①ターゲットは若者ではなく、中年、②客を吸引する魅力がある商品を扱っている。③トータルコーディネート(色、形)、④ファッション商品、⑤売れるものは、大量に陳列している、⑥セルフサービス
その3 学ぶべき点
フードサービス:マクドナルドから、多くの小売業者は学んだ。その本質は、コンシューマリズムであり、標準化である。
・ショップのクリンリネス(店の清潔性、衛生性)
・ショートタイムショッピング ①出かける距離が短くなり、②買物の時間が短くなる ③買物の回数がへる ネットショップにもつながっていく
・重点販売 ①プライス特売(通常の特売)、②コレクション特売(季節、テーマ別の特売)、③クリアランス(在庫処分)、④マス化セール(新商品のおためし販売)
・トータルコーディネーション
・人口の8割を占める多数派が好むものを大切にする ⇒ チェーンストアの品揃えの大原則
・店内作業 アメリカの1店あたりの従業員は、極端にすくない。①陳列、補充の頻度。②店内作業を難易度に応じて、時給のあった人間に振り分けている。③接客、
結論は、「人時生産性向上という至上命題の解決のためには、インダストリアリズムの導入が欠かせない。そのためにアメリカのチェーンストアの店内作業の実際を素直に見習わけばならない。これに学ばなければ現地に行ったかいがないのである。」
目次は、以下です。
シリーズ刊行のねらい
本書のまえがき
1 チェーンストアの原理
1 チェーンストア経営システム
2 「楽しい買物」を実現
2 チェーンストアのフォーマットの意味
1 フォーマットの本質
2 商品レベルの統一
3 フォーマットと商圏人口との関係
3 アメリカのショッピング・センター
1 SCの類型
2 NSCとCSC
3 パワーセンターの意味
4 アメリカのショッピング・センター新傾向
4 NSC出店のフォーマット
1 スーパーマーケット
2 スーパー・ドラッグ・ストア
3 コンビネーション・ストア
4 バラエティ・ストア
5 CSC出店のフォーマット
1 ディスカウント・ストア
2 スーパー・センター
3 メンバーシップ・ホールセール・クラブ
4 スーパー・ウェアハウス・ストア
5 ホーム・センター
6 スペシャルティ・スーパーストア
7 オフ・プライス・ブランデッド・ストア
8 セルフサービスの百貨店
6 RSC出店のフォーマット
1 ゼネラル・マーチャンダイズ・ストア
2 百貨店
3 RSC出店のスペシャルティ・ストア(専門店)
7 学ぶべき課題
1 クリンリネス
2 標準化
3 ショートタイム・ショッピング
4 ベスト・サービス
5 重点販売
6 特売
7 トータル・コーディネーション
8 ホーム・ファッション
9 フード・サービス業
10 最重要課題 店内作業
用語索引