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民事訴訟法判例百選 第4版 みんなのレビュー
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紙の本
ちょっとよくなった
2010/11/02 02:48
16人中、13人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:佐伯洋一 - この投稿者のレビュー一覧を見る
2003年の第3版から7年を経てようやく民訴の第4版がでた。購入を迷う人や、買い替えを検討する人に有益となるような情報を提供したいと思う。
3版は絶対に現代民事訴訟では使えないような古い判例が大手を振って掲載されていた。4版ではそこが改められている。ただし、二重起訴と相殺の抗弁などの重要論点については4ページを費やし、解説も洗練されている。つまり、メリハリが付いた配列に改められている。
次に、解説の充実度が全般的に上がった。昔は、事例に関係のない意味不明な学説史と果てはドイツ法学を並べ立てるどうしようもない解説が散見されたが、今回はそういうことはほぼなくなった。とはいえ、中にはまだ判例の射程を書かない解説も多い。学生が判例から学ぶ一番重要なことは、その判例がどういう意義を持つのか、いかなる事例に適用されるのかという射程である。にもかかわらず、判例から離れている解説は褒められたものではあるまい。
ただ、解説が不十分だった最高裁昭和48年6月21日判決の解説などはさすが山本克己教授だけあって、理論的にも実践的にも優れた解説がなされている。口頭弁論終結後の承継人の話である。これについて、要件事実・訴訟物論が良く分かっていない解説者は、どうして実質説は採用しがたいのかよく意味がわかっていない解説をしていることが多い。実務が当然の前提とする旧訴訟物理論からすれば、後訴で承継人が固有の抗弁を主張できないなどという事例は想像しがたい。しかも、もし固有の抗弁があるだけで後訴に前訴既判力が及ばないとしたら、そもそも固有の抗弁を後訴で主張することは理論的に難しい。これについては、ここで述べることではないので、解説を参照してほしい。
4版はその意味でチューンアップされている。しかし、よく言われるように、百選は解説まで読む必要はないことが多い。とはいえ、判例自体はいいものが多くなったので、買い替えるのもありだろう。
なお、代表編集者畑瑞穂教授は女ではなく、男である。経歴は確か灘高校という男子校を出ておられるからである。ちなみに、会社法起草者の葉玉匡美教授も男である。
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